「国境を越えるなら『レイプ税』を払え」戦争犯罪で危機に陥る南スーダン

「戦争犯罪から利益を得ている」と、ジョージ・クルーニーは批判している。
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猛威を振るう内戦の下、南スーダンでは数万人が餓死している。しかし、政府は紛争の炎をあおっておきながら、鎮火させる素振りを見せようとしない。

建国して5年の南スーダン政府は2月20日、南スーダンの一部で飢饉が発生したことを公式に宣言した。世界で6年ぶりとなる飢饉宣言だ。その翌日、サルバ・キール大統領は、人道支援組織に「妨害のないアクセス」を与えることを明言した。

ユージン・オウス国連人道調整官は、キール大統領の約束を評価し、困窮する数100万人を支援する迅速な行動を促した。「時間が極めて重要だ。人命は予断を許さない状況であり、大統領の約束が直ちに具体的な行動ににつなげることが重要です」 

しかし、そのわずか1週間後、南スーダン政府は支援労働者許可証の費用を100倍の100ドル(約1万1000円)から1万ドル(約110万円)に値上げした。マイケル・マクエイ情報相はAP通信に、今回の変更は政府の収入増を意図したものだと語った。

致命的なタイミングだ。少なくとも南スーダン国民のうち10万人が死に直面し、100万人超が飢餓に瀕している。人口1300万人の国で610万人に人道的支援が必要になっている。

ハフィントンポストUS版は、現地活動をしている様々な国際人権団体の代表に連絡を取ったが、進行中の状況については不透明であるため、コメントには消極的であった。

政府の許可証値上げは、2013年末に内戦が勃発して以来繰り返され、救済活動を妨害してきた。政府は支援団体が南スーダン人と接する援助を妨害し続けており、オウス調整官曰く、「計り知れないほどの損害」を受けている。

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病院のベッドで、母親の隣に横たわる生後2か月の女児。深刻な栄養失調に陥っている。2月、南スーダンは世界で6年ぶりとなる飢饉を宣言した。ALBERT GONZALEZ FARRAN VIA GETTY IMAGES

南スーダンの悲劇は、この危機が人為的にもたらされた点にある。

2011年にスーダンから独立してわずか2年後、キール大統領とリエック・マチャル前副大統領との間で生じた政治的対立が、誕生したばかりの国家を破壊する暴力に拡大した。南スーダンは今、悲惨な自己破壊のスパイラルに突入している。

この混乱は交戦中の政府と反乱勢力から部族集団間の争いに拡大し、終わりが見えなくなった。何度も停戦協定が結ばれても履行されない状態が長く続き、腐敗も絶えない。

南スーダン国民の恐怖と不安が大量移住の引き金となり、収穫を維持する農民もいなくなっている。こうして、南スーダンの農業は大打撃を受け、深刻な干ばつにより広範囲の飢饉が発生するきっかけとなった。その後、2016年6月に始まったコレラの大流行で数千人が感染し、国内第二の都市マラカルにまで拡大している。

2013年の紛争開始以来、人口の4分の1以上が故郷から離れることを余儀なくされている。そのうち、少なくとも150万人が難民として国を離れた。2017年末には、550万人の食料入手が著しく困難になるだろうと人道支援関係者は予想している。

「この危機の根本的な原因は、軍事衝突にあります」と、南スーダンを訪問したステファン・オブライエン国連人道問題担当事務次長は語った。「人々は強制移住させられ、過酷な扱いを受け、そしてレイプされています。彼らは、支援を求めると攻撃されるのです」

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ウガンダの難民キャンプで食料配給を待つ南スーダンの子供たち。これまで数10万人が暴力と虐待から逃れるため国境を越えてウガンダ入りした。DAN KITWOOD VIA GETTY IMAGES

国際難民支援会が3月8日に発表した報告書によると、少なくとも70万人が国境を越え、1日約3000人というかつてないペースで隣国ウガンダに入国している。多くは性暴力から逃れるためだという。脱出するには兵士に「レイプ税」を払う必要があると言った女性もいた。

「オラバの国境検問所に行くために運転手を雇いました」と、報告書の中で匿名の南スーダン人女性は証言した。「キンバに到着時には、兵士が2人いました。兵士は、女は外に出て、服を脱ぎ、横になれと命令しました。子供たちは母親がレイプされるのを見たのです」

そして政府は一貫して人道支援団体の職員の活動を妨害し、そして追放している。

また、政府は、広範囲の場所で支援物資を盗んでいると非難されている。2016年6月には首都ジュバにある世界食糧計画(WFP)の倉庫から4500トン以上の食料が盗まれた。貧困地域の22万人に1か月間配給することができる量だ。

ワシントンを拠点とする人権擁護団体「セントリー」が南スーダンで2年間にわたって調査した報告書から、なぜ崩壊している国家が外部からの支援を妨害し、自国の危機を悪化させようとしているのか、その理由が伺える。セントリーは、政府高官が国から数10億ドルを略奪して大量に蓄財するため、南スーダンの混乱を意図的に画策し、維持し、利用していると断じている。

「戦争で裕福な者はさらに裕福になる」と、セントリーの共同創設者で俳優のジョージ・クルーニーは「PBSニュースアワー」のインタビューで語った。

「大統領や他の政府首脳が、すでに告発されているこのような罪を犯しているだけでなく、戦争犯罪から利益を得ている」と、クルーニーは言った。

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南スーダンでは少なくとも10万人以上が死に直面し、100万人超が飢餓に瀕している。ANADOLU AGENCY VIA GETTY IMAGES

国連人権理事会は南スーダンで7か月間にわたる調査の報告書を発表した。報告書によると、 政府軍と民兵組織は、戦争犯罪となる民間人への虐待を隠蔽するため、武力衝突を隠れ蓑にしていると非難している。

また報告書によると、戦争で疲弊した国内で計画的な飢餓、市民への爆撃、強制移動、村の落焼き討ちといった大量虐殺と民族浄化を意図しているという。

レイプ生存者は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に対して南スーダン軍の兵士が戦争の武器としてレイプを利用していると語った。2016年6月、肛門レイプで失禁の後遺症に苦しむある女性は「生意気だ」という理由で再度レイプされ、女性器を切断されたと証言した。彼女は、加害者に殺してくれと懇願したが、死んだものとして放置された。

兵士は支援団体の職員も標的にすることで非難されている。国連は、2016年6月ジュバの私有居住地区で国連職員が武装兵に殴打され、集団レイプされたと非難した。国連によると、助けの求めに誰も応じなかったという。

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反政府軍戦士の死体の上で祝福を上げる南スーダン政府軍の兵士。戦争犯罪になる可能性がある虐待事件で告発されている。ALBERT GONZALEZ FARRAN VIA GETTY IMAGES

現地メディアによると、南スーダン政府のマクエイ情報相は、政府による残虐行為の記事を「フェイクニュースだ」と退けたという。

「南スーダンには大量殺戮など存在しない。それにもかかわらず、メディアやレポーターが相変わらず同じことを切り貼りして繰り返しているだけだ。切り貼りしたら新しい記事のように見えてくる」と、マクエイ情報相は首都ジュバで3月9日に開かれた記者会見で繰り返し主張した。

マクエイ情報相はまた、「NGOや人権団体は、支援活動が妨害されていると言うが、妨害などない」と否定した。「彼らは規制されている。規制されたくなければ制度の外だ。我が国の法律で規制されなければならない」

南スーダン政府は、増え続ける戦争犯罪の証拠を否定し続けている。人権団体は、日々増え続ける援助を必要とする人たちに手を差し伸べられるよう、政府が突きつける試練に立ち向かっている。そしてやせこけた多くの老若男女が苦しみ、活気を失っている。

ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。

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