先生たちが、現金にダッシュ――。教師が現金をかき集めるイベントが、アメリカ・サウスダコタ州で開催された。
イベントは、授業に必要な資金を援助する目的だったが、先生たちがお金を奪い合うという内容に、SNSには驚きの声や「イカゲームのよう」などの批判が起きた。
その名もキャッシュにダッシュ
イベントは12月11日、ジュニアアイスホッケーチーム「スーフォールズ・スタンピード」の試合の合間に開催された。
イベント名は「キャッシュにダッシュ」。地元メディア・アーガスリーダーによると、住宅ローン会社がスポンサーになってアイススケートリンク上に計5000ドル(約56万8000円)の1ドル札が用意された。
そのお札を、地元の学校の教師10人が5分の制限時間内に洋服や帽子の中に詰め込んだ。
教師たちは集めたお金で、スタンディングデスクや椅子、オンライン授業用のカメラなど、教室の必需品を購入するという。
教師の1人は、必需品購入のための費用は提供されているものの、ホリデーシーズンのデコレーションなど、ちょっとしたものの支出が後を絶たないと話している。
「教育のために、地域がこのような機会を作ってくれるのは素晴らしいことです。ほとんどの場合、自分のポケットマネーで支払っています」
ディストピア…批判を受けて謝罪
自身も教師だという投稿者は、「地面に這って1ドル札を競い合うなんて屈辱的です。ファンのための馬鹿馬鹿しいエンターテイメントにするのではなく、心からの寄付で先生に敬意を表したらどうでしょう」とコメントしている。
また、アメリカ教員連盟会長のランディ・ワインガーテン氏は、「品位を傷つけると感じます。学校の必需品のために、教師が1ドル札に突進するべきではありません…。楽しむためのイベントだと思うけれど。外から見るとひどい」と投稿した。
批判を受け、スーフォールズ・スタンピードと住宅ローン会社は13日に合同声明を発表して謝罪。
声明で「イベントは地元の先生と彼らの生徒たちの資金を集めるのを助けるものだった」「先生たちに前向きで楽しいことを経験する場を提供するというのが私たちの意図でしたが、参加した先生の皆さんや教師という職業の品位を傷つけ、無礼になってしまったことをお詫びします」と述べている。
イベントには31人の教師が応募して、その中から無作為に10人が選ばれた。チームと住宅ローン会社は、イベントで用意した5000ドルとは別に、応募した31人全員にそれぞれ500ドル(5万6000円)を提供するとしている。
アメリカ教育協会によると、サウスダコタ州は教師の給与平均がアメリカの州の中で50番目で、生徒1人の支出は38番目と低い。キャッシュにダッシュイベントは、州の教育資金の不十分さを際立たせることになった。