太陽光発電の高値が終わる「2019年問題」/買い取り価格が下がった後も増加策を

日本で太陽光発電の高値買い取り制度が始まったのは2009年11月。期間は10年間なので、その後をどうするのか、という問題である。
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森林文化協会の発行する月刊『グリーン・パワー』は、森林を軸に自然環境や生活文化、エネルギーなどの話題を幅広く発信しています。10月号の「環境ウォッチ」では、環境ジャーナリストの竹内敬二さんが、太陽光発電の「2019年問題」を解説しています。

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すぐそこに近づいているが、何も決まっていない。「太陽光発電の2019年問題」だ。日本で太陽光発電の高値買い取り制度が始まったのは2009年11月のこと。期間は10年間なので、2019年から「年季明け」の施設が出てくる。では、その後をどうするのか、という問題である。

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●早い時期に設置した住宅用の太陽光発電設備。高値買い取り期間の終わりが近づいている=竹内敬二さん撮影

住宅用の太陽光発電については、1992年、家庭で使った余りの電気を電力会社が買い上げる制度(余剰電力買い取り制度)が始まった。この制度と政府の設置補助金によって、日本の太陽光発電導入量とパネル生産量は2000年初頭まで、ぶっちぎりで世界一を走っていた。

ただ買い取り価格は「家庭の電気代と同じ」(1kW時当たり20数円)だったため、導入量を大きく伸ばす力はなかった。

世界的な太陽光発電の急伸は、日本を追っていたドイツが起こした。2004年、ドイツは固定価格買い取り制度(FIT)の買い取り価格を、大きく引き上げたのだ。当初の買い取り価格は1kW時当たり80円ほどの高値だった。まだ発電パネルが高い時代だったが、投資が確実に回収されるため、導入量が急伸し、日本を抜いた。

FITはその後、欧州を中心に広がり、自然エネルギー(再生可能エネルギー)を増やす標準的な政策になった。

期限切れでFIT費用は減る

太陽光や風力など5種類の自然エネ発電を対象にした日本のFIT制度は、2012年にスタートした。ただ太陽光については、前倒しする形で2009年11月から買い取り価格が引き上げられた。それまでの約2倍の48円で、すでにあった施設がこの恩恵を受けた。ただ、設備の導入コストの低減に沿って、買い取り価格も下がっていく。2011年度には42円に、そしてFIT初年度の2012年度も42円、2013年度は38円になった。

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FITによって太陽光は住宅用も、大規模なメガソーラーも増えた。住宅用の導入量は今年4月末段階で約870万kW。買い取り期間は10 年(大型施設は20年)なので、2019年11月以降に、期限終了が続々と生まれる。

その量は最初の2019年11月だけで35万件、130万kWといわれる。その後も毎年10万~20万件程度が続く。

これがどうなるか、あるいはどうするかが「2019年問題」である。

日本の屋根に広がった発電パネルは大きな社会資産だ。これまで通り、電力会社への売電ができるようにして、混乱なく発電が継続されなければならない。

買い取り価格がカギになる。10年間は高かったので下がるのは当然だが、いくらにするか。10年では投資がすべて回収されたとはいえない。「電気の平均的な発電コストで買い取るのがいい」という意見もある。電力の卸し市場の価格をみると10円ほどになる。ともあれ、発電を継続する気持ちにさせる価格が必要だ。

太陽光を高値で買い取る費用は電気料金全体に上乗せされている。大量の設備が「年季明け」になれば、買い取り費用もそれだけ減り、電気代への負担も減る。社会全体で見て朗報だ。

近づく「太陽光+蓄電池」の時代

実は「売る」以外の道もある。最近家庭用の蓄電池が普及しつつある。これで電気をため、売電せずに自分で使うことだ。10年の期限切れの後は、「買う電気」の方が「売る電気」より高くなるのは確実なので、自分で使った方が得になる。蓄電池が安ければペイする。値段やリース料を見定めて考えればいい。

蓄電池があればいろんなことができる。夜間の安い電気を蓄電池にためる。昼間は、まず太陽光発電の電気を使い、次に蓄電した電気を使い、それでもなくなったら電力会社から買う(送電線から受ける)という形をとれば電気代は安くなる。日本ですでにそういう生活をしている人もいる。

電気自動車を蓄電池として使ってもいい。「日産リーフ」の蓄電池は24kW時、一般家庭が消費する2日分の電気をためることができる。早晩、こうした電気自動車の中古の蓄電池が、家庭用蓄電池として出回るだろう。

とにかく近い将来、日本など先進国では、大発電所でつくった電気を送電線で家庭に送って家庭が1㌔㍗時当たり20数円で買うよりも、各家庭で発電した電気を自分で使う方が安い時代がくる。

「太陽光だけ」のゆがみを直す

重要なのは、2019年が来ても、太陽光発電の伸びを止めないことだ。日本の大手電力会社はFITで太陽光が大きく増えたことを迷惑がっており、「太陽光を含む自然エネ全体を抑制したい」との思惑を持つ。

とんでもないことだ。日本の自然エネの発電割合(水力を除く)は、3.2%(2014年度)しかない。政府のエネルギー基本計画では、2030年の自然エネルギーの発電割合を13~15%(水力を除く)と考えている。まだ、全く足りない。

「増えている自然エネは太陽光だけ」という日本のゆがんだ状況も忘れてはならない。今年4月末時点の導入状況(FITの対象になっているもの)は、住宅用と非住宅用(大規模)を合わせて太陽光発電が3300万kW以上だが、風力発電は約300万kW、中小水力は38万kW、地熱は1万kW、バイオマスは166万kWだ。

世界では風力と太陽光の導入量の比は約2対1だが、日本は約1対11と、コストが高い太陽光が圧倒的に大きい。FIT法では自然エネ各種の導入コストの変化を参考に買い取り価格を決める仕組みだが、太陽光以外は参考事例となる新規導入があまりに少なく、価格の見直しもできていない(表、参考)。

「2019年問題」は、日本の自然エネ政策の一つの節目になる。せっかく増えた太陽光発電を着実に伸ばすこと、そして太陽光以外の自然エネを大きく増やすきっかけにすることが大切だ。