地球は再び「小氷期」(Little Ice Age)に入る可能性があると、一部の科学者が発言している。これは、太陽がこの数年間不気味なほど静かな状態にあるためだ。
たとえば、イギリスのレディング大学で宇宙環境物理学教授を務めるマイク・ロックウッド博士は、今から40年の間に小氷期に入る確率は最大で20%だと試算している。
まず、話の背景を少しご説明しよう。太陽活動には約11年の周期があり、太陽表面の黒点はこの周期で増えたり減ったりする。黒点活動がピークになる、いわゆる太陽極大期には、多くの黒点が現れ、太陽フレアとコロナ質量放出(CME)が絶え間なく発生する。
だが、現在の「第24太陽周期」が2008年に始まって以降、観測される黒点の数は、科学者が予測した数の半分にとどまっている。
「このような状況は見たことがない」と、イギリスのラザフォード・アップルトン研究所で宇宙物理学部門の責任者を務めるリチャード・ハリソン博士は、BBCの取材に対して語っている。「活動が最も弱まった時期から現在のピーク時までを通じて、太陽がこれほど不活発になった時期を振り返るとするなら、約100年前にまでさかのぼらなければならない」
活動が不活発だといっても、時おり大きな太陽フレアの爆発はある。「太陽は絶対に眠らない」と、太陽天体物理学者であり、アメリカ航空宇宙局(NASA)の太陽系物理科学部門で科学担当副責任者を務めるC. アレックス・ヤング博士は、米ハフィントン・ポスト宛の電子メールで述べる。実際、2014年1月7日にNASAは、「地球の直径の約7倍」あるとされる黒点群で巨大な太陽フレアの爆発が起こったことを観測した。
だが、太陽の活動が比較的不活発なために、さまざまな問題が引き起こされる可能性はある。一部の科学者は、太陽の活動が弱まっている今の時期が、1645年~1715年に発生したいわゆるマウンダー極小期の前に起こった現象によく似ていると指摘する科学者もいる。
マウンダー極小期という名前は、黒点を研究し、17世紀後半における太陽活動の異変を特定することに貢献したエドワード・マウンダー博士とその妻アニーにちなんで付けられたものだ。この時期には、通常であれば4万から5万が予想されるはずの黒点が、わずか30個しか現れなかった(1000分の1以下だ)。ちょうどこの時期、欧州は「小氷期」のさなかにあり、イギリスのテムズ川やバルト海が凍ったという。
科学者らは、黒点の活動が不活発になることが「小氷期」の直接的な原因だとは証明されておらず、当時の欧州が非常に寒くなった原因は他にあった可能性を指摘している。だが同時に、黒点の数が減れば、地球に届く太陽エネルギーの量が少なくなると彼らは考えている。そのために、地球全体が冷やされていたのかもしれない。
「新たな極小期が、17世紀のときと同じような影響を地球に与えるとは必ずしも言えない」と、アメリカ大気研究センター(NCAR)の高高度観測所に務めるギリアナ・デ・トマ博士は、米ハフィントン・ポスト宛の電子メールで指摘した。「17世紀に観測された寒波の1つの要因としては、火山の噴火があった。これは短期的に冷却効果をもたらすものだ。さらに、われわれが生きる現代は、地球が温暖化を開始した状態から始まっている」
太陽活動による冷却作用が、地球の熱を下げることに実際に役立つ可能性はあるのだろうか。
科学者らは、その可能性はあるが、大きな効果はなく、それほど長くも続かないだろうと予測している。NCARの研究チームは、コンピューター・モデルを使って、将来起こりうる「大規模な太陽活動極小期」が2020年~2070年までの地球の気候に与える影響を予測した。
このモデルによると、大規模な太陽活動極小期になれば、温暖化のスピードが一時的に20~30%遅くなる可能性があるという。ただし数十年後には、気温の変化はすぐに元通りのスピードに戻ると予測されている。
※小氷期は14世紀半ばから19世紀半ばにかけて続き、マウンダー極小期はその中頃の1645年から1715年に観測された。1780年の冬にはニューヨーク湾が凍結し、アイスランドでは海氷が島を取り囲んで長期間に渡って港湾を封鎖し、漁業や交易に打撃を与え、各地で飢饉や疾病も多かった。ただし、マウンダー極小期や小氷期で低下した温度は実際にはそれほど大きくない。マウンダー極小期には、北半球の平均気温は極小期の前後と比べて0.1~0.2度低下したと推定されており、小氷期の気温低下も1度未満とされているが、「IPCC第4次評価報告書」は、地球温暖化による平均気温上昇は2~3度を超える可能性が高いと予想している。
[Macrina Cooper-White(English) 日本語版:佐藤卓、合原弘子/ガリレオ]
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