ソフトバンクが連続して大型買収に踏み切ったのは、前回の買収を成功させるため?
ソフトバンクが米携帯電話4位のTモバイルUSを約2兆円で買収すると報道されている。今のところ同社は正式にコメントしていないが、以前から主力銀行と資金調達の交渉に入っているといわれており、買収を前提に交渉が進んでいることはほぼ間違いない。
ソフトバンクは2013年7月、216億ドル(約2兆2500億円)を投じて、米国第3位の携帯電話会社スプリントを買収している。大型買収から半年も経たない間の買収であることや、資金負担が総額で4兆円を超えることなどから、同社の先行きを懸念する声も聞かれる。
だが今回の買収は、前回のスプリント買収を成功させるためには必要なツールであり、むしろ両社をセットにして買収することに意味がある。同社の財務体質が悪化するのは事実だが、今回の買収がうまくいけば、スプリント買収のリスクを低下させる可能性もある。
米国は世界有数の携帯電話市場となっており、AT&T、ベライゾン、スプリント、TモバイルUSの4社で激しいシェア争いが行われている。特にAT&Tとベライゾンは2強となっており、両社はそれぞれ1億人の顧客を抱えている。ソフトバンクは、5500万人の顧客を持つスプリントを買収したので、4500万人の顧客を持つTモバイルUSの買収によって、トップ2社とほぼ同列に並ぶことが可能となる。
スプリントは以前から業績低迷が続いており、今期は2500億円程度の赤字が見込まれている。業績が悪化していたからこそ、ソフトバンクは同社を買収することができたわけだが、この買収劇を成功させるためには、何としても赤字続きのスプリントの業績を立て直す必要がある。
ソフトバンクがスプリント買収を発表した当初は、スプリントの立て直しをどのように進めていくのか疑問視する声も聞かれた。同社の孫社長も具体的な再建策については明言を避けていたが、実はこのTモバイルUSの買収がスプリントの再建策そのものだったのである。
かねてからスプリントはトップ2社との差があまりに大きくなりすぎ、単独での経営再建は困難といわれていた。だが今回、ほぼ同じ規模のTモバイルUSの顧客基盤を合わせることで、AT&Tやベライゾンと互角に戦う土壌が出来上がったことになる。ソフトバンクにとっては、買収した1社について厳しい状況下で再建を進めていくよりも、2社の人材をうまく活用し、規模のメリットを追求する形で再建策を考える方がより有利といえる。
ソフトバンクの2013年9月時点の資産総額は約15兆円であり、このうち自己資本は約2兆5000億円である。確かに2兆の有利子負債が加わることは財務体質の悪化につながる。だがスプリントとTモバイルUSの業績が回復すれば、容易に年間1兆円規模の利益を上乗せすることができる。
現在ソフトバンク国内の収益は堅調であり、2014年3月期には1兆円程度の営業利益を実現できる見込みとなっている。米国2社の利益と合わせれば、財務体質は短期間で改善させることが可能だ。