日本の隠れた長寿のヒケツ ―長生きするためにできること―

長寿の国として知られている日本。長生きをもたらすものは、いったい何なのか? 隠れた秘訣は、地域における住民同士のつながりにあった――。
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長寿の国として知られている日本。長生きをもたらすものは、いったい何なのか? 隠れた秘訣は、地域における住民同士のつながりにあった――。

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日本が世界的な長寿国であることは、皆さんご存知のことと思います。では、なぜこれほど長寿なのでしょうか?

日本人が長寿なのは、食生活が良いからといわれることがあります。確かに、ファストフードの消費が多い国と比較すると、健康的といえるでしょう。しかし、日本食は塩分が多く、主食(炭水化物)の割合も多すぎるといわれており、一概に「良い」とは言い切れない部分があるのです。

それでは、遺伝子が優れているのでしょうか? あるいは国民皆保険制度があるから? どちらも間違いではないかもしれませんが、他にも、日本が特別に優れているとされる長寿の秘訣があります。

ハーバード大学のカワチ教授は、「お互い様」や「持ちつ持たれつ」といった連帯意識、あるいは地域の絆を意味する「ソーシャル・キャピタル」にこそ長寿の秘訣があるのではと考えました。そこで、国別に、他人を信頼している人の割合と、各国の平均寿命との関係を調べたところ、見事に関連があることがわかりました。つまり、周りの人を信用できている人ほど、長生きすることが分かったのです。

他にも、ある町の65歳以上の住民にアンケートをとり、その4年後に彼らの健康状態を調査したところ、住民同士が信頼し合えていない地域の住民は、信頼し合っている地域の住民よりも1.6倍介護が必要な状態になりやすいということがわかっています。

人は、無意識のうちに周囲の人間から支えられたり、生活や行動への影響を受けたりしています。一見健康とは関係のなさそうな人と人との関係や地域の良さが、長寿をもたらすと考えられているのです。

日本は島国で、地域の連帯が必要な稲作を行ってきたこともあって、日本の「ソーシャル・キャピタル」は世界的に優れているとされています。ところが、近年の近所付き合いの減少や地域の過疎化、地域文化の衰退、個人情報の問題などにより、住民同士のつながりが薄れているといわれています。

若い世代では、地域の催事が面倒に感じている方も少なくないでしょう。しかし実は、かねてより日本で培ってきた「お互い様」が生きる"顔の見える生活"こそ、長寿の秘訣の一つなのです。

ただし、強制力や経済的負担が伴うようなつながりは、逆に健康に良くないということもわかっています。日本全体が、無理なく手を取り合い、互いに気遣えるような社会を目指して、まずはあなたが自分の"付き合い"を考え直してみるときなのかもしれません。

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プロフィール

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井階 友貴 

福井大学医学部地域プライマリケア講座/高浜町国民健康保険和田診療所講師

ハーバード公衆衛生大学院 客員研究員

滋賀医科大学医学部卒、済生会滋賀県病院、「県立柏原病院の小児科を守る会」の活動で有名な兵庫県立柏原病院を経て、高浜町国民健康保険和田診療所に勤務。2009年からは高浜町の寄附講座「地域プライマリケア講座」助教 兼 同診療所長として勤務、「たかはま地域医療サポーターの会」の立ち上げにかかわる。2012年より同講師。2014年よりハーバード公衆衛生大学院にて地域の絆と健康を醸成する活動を研究。住民、行政、医療者が三位一体となった理想の地域医療を追求し、医学教育、住民啓発に奮闘し、研修生や住民の地域医療に対する意識の変化を促している。