「お酒飲まないの?なんで?」
社交の場でお酒を断ると、決まってこう質問をされるんだよねーー。
そう話すのは、お酒に弱めの同僚。彼女は飲めないわけではないが、あまり飲まない。しかし、いちいち説明するのにはうんざりしているという。
しかし、こういった質問をされることは今後は減っていくかもしれないーー。
「飲まないのがクール」「健康のために飲まない」という価値観が、若者を中心に広がってきているのだ。
ソバーキュリアスとは?
欧米のミレニアル世代を中心に数年前から広がりを見せている「ソバーキュリアス」ムーブメントが、ここ最近日本でも広がりを見せている。
「ソバーキュリアス」とは、お酒は飲めるがあえて飲まない、もしくは少量しか飲まない選択的ライフスタイルのこと。
「Sober」とは日本語でしらふ、「Curious」は好奇心という意味で、この2つの単語を合わせて「Sober Curious(ソバーキュリアス)」。直訳すれば「しらふが気になる」といったところか。
心身の健康などのため、アルコールと自分の関係や「飲まない生活」に好奇心を持ち、答えを知るため「飲まない」生活をする。
アルコールに関する問題を抱えていて禁酒などを治療として必要としている人に向けたライフスタイルではない点は注意しておきたい。
気になるその効果は?
実際、ソバーキュリアスという言葉の発案者で『飲まない生き方 ソバーキュリアス』の著者であるルビー・ウォリントン氏は、実践することによる効果として、睡眠の質の改善や肌トラブルの解消、不安の軽減や貯金の増加などをあげている。
海外では以前から、1カ月間の禁酒を推奨するDry JanuaryやSober Octoberなるキャンペーンが存在していた。年始の1月を禁酒月間とするDry Januaryはイギリスで2013年から始まっており、2022年には世界中から過去最高の13万1266人が参加したという。同キャンペーンを主催する慈善団体Alcohol Change UKの調査によると、参加者の70%が睡眠が改善したといい、86%が出費の削減、65%が全体的に健康が改善したと答えている。
また、2018年に発表されたRoyal Free Hospitalの研究によると、1カ月の断酒は血圧やコレステロール値の降下、糖尿病リスクの低下などの効果があるという。
更に、サセックス大学の調べでは、参加者の70%以上がキャンペーンの半年後も健康的な飲酒習慣をキープしているといい、長期的にも影響が見られた。
ソバーキュリアスのライフスタイルを提唱するウォリントン氏はVogue誌で、「アルコールは次なるタバコになると思います。健康への悪影響に気づいている人にとって、アルコールはどんどん魅力を無くしていっています」と話している。
コロナ禍で健康を意識する人が増える中、「アルコールは時代遅れ」となる日が来るのかもしれない。
日本でも広がるソバーキュリアス・ムーブメント
近年、Z世代やミレニアル世代を中心にお酒離れが進んでいる。
調査会社ニールセンの2019年の調べによると、アメリカのミレニアル世代の6割以上がお酒の消費量を減らそうとしている、と答えている。
また、2022年にはお酒を飲まない「ドライ・デート」の流行が予測されている。オンラインのマッチングアプリBumbleが発表した2022年のデート・トレンド調査では、パンデミックで人々のお酒との付き合い方が変化し、アプリユーザーの34%が、パンデミック前よりも今はお酒なしの「ドライ・デート」に行くだろう、と述べているという。
今や欧米では「お酒を飲まない」ことはライフスタイルの一部として受け入れられているようだ。
日本でも、2019年の厚生労働省の国民健康・栄養調査によると、20代の29.4%が「飲まない・飲めない」、26.5%が「ほとんど飲まない」と回答している。
同時に、ノンアル市場は拡大しており、サントリーのノンアルコール飲料レポートによると、ノンアル飲料市場は2015年以降6年連続で成長しており、2020年のノンアル市場は過去最大規模になったと推定されている。
ノンアルドリンクの選択肢も、ビールや酎ハイだけでなく、日本酒やワイン、蒸留酒まで登場しており、近年はアルコールを置かない「ノンアルバー」なるものもオープンし、話題となっている。
ソバキュリに興味が出てきたら?
アサヒ飲料の2021年の調査によると、日本での「ソバーキュリアス」の認知度はまだ3.6%と低いが、そのライフスタイルに賛同する割合は80.6%と高い。いずれも20代の数値が最も高かった。
では、このムーブメントにキュリアス(興味がある)なら、どこから始めればいいのか?
イギリスでDry Januaryキャンペーンを行なっているAlcohol Change UKのウェブサイトに、いくつかのアドバイス*が載っているので紹介しよう。
・飲酒量を意識する
・ゆっくりペースで飲もう
・飲酒日記をつけて、自分の飲酒習慣を知ろう。(日本では、「節度ある適度な飲酒」の量は、1日平均2ドリンク=20グラム以下、女性や高齢者などはそれより少なくすべきであると推奨されている)
・代わりに微アルやノンアルのドリンクを試そう。今はビールや酎ハイだけでな く、ワインなど様々なノンアルの選択肢が市場に出ており、味も改善されている。
・お酒を断るのに遠慮はいらない
・毎週数日の休肝日を作ろう
・飲酒前や飲酒中には食べよう。血中にアルコールが吸収されるのを穏やかにしてくれる
もうすぐビールが美味しい夏がやってくる。今年はあえて、ノンアルビールで過ごしてみるのもクールかもしれない。
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*これらはあくまで、アルコールの問題を抱えていない人へのアドバイスです。Alocohol Change UKは、アルコールに依存している人が急に飲酒を止めると様々な症状が出てくる可能性があるため、まず主治医と相談することを勧めています。
【もし自分の飲酒習慣が手におえなくなってしまっていると感じたり、飲酒による依存症や体調不良がある場合は、医師の診察や治療を受けてください】