多くのパブリッシャーは、ソーシャルメディア・プラットフォームに自身のコンテンツを直接配信しなくてはいけないというプレッシャーを感じつつも、この行為が自社ブランドにどんな影響をもたらしているのかという疑問が頭から離れずにいる。指先で画面をフリックしながらフィードを読んでいる読者たちは、ぼんやりと眺めるヘッドラインの本来のホスト・パブリッシャーがどこか、知っているのだろうか?
一流パブリッシャーによる業界団体「デジタル・コンテンツ・ネクスト(Digital Content Next:DCN)」がこのほど発表した調査結果によれば、ソーシャルメディアでコンテンツを読むとき、自分がどのサイトの記事をクリックしているかを意識しているユーザーは57%だという。だがこれは裏を返せば、背後にいるパブリッシャーをまったく意識せずにストーリーを読んでいる人が43%もいるということになる(なお、このデータでは、FacebookやTwitterなどのプラットフォーム別の内訳は示されていない)。
この調査結果は、すでに確固たる地位を確立しているパブリッシャーはソーシャルメディアでも優位に立っていることを示唆している。DCNのジェイソン・ケント最高経営責任者(CEO)は、この結果は、DCNのメンバーにとっては、良い知らせだと言った。
「ユーザーは、少なくとも半分以上の時間は、名前を知っていて信頼しているブランドを探している。ブランドに対する信頼感は、コンテンツをクリックするかどうかを決めるうえで極めて重要だ」と、ケントCEOは語る。
厳しいのはライフスタイル系
新しい体験を配信する新しいブランドもまた、素早く信頼を築き上げることができると、ケントCEOは指摘する。「読者からの支持を得られないのは、エバーグリーンコンテンツ(いつでも読める内容のコンテンツ)や、コンテンツファーム(訪問者を増やして広告収益を得るために、品質の高くないコンテンツを大量に作成・配信するサービス)、クリックベイター(タイトルは目立つが不正確な記事を配信するサイト)だ」。
小さなパブリッシャーも苦労している。彼らは、人々がフィード内で見るものを決めるうえで大きな役割を果たしているFacebook上で実験できるリソースが少ない。たとえば、いまの主流は動画だが、規模が大きく潤沢な資金を持つパブリッシャーにとってさえ、動画制作には費用がかかるし、上手く使うのは難しい。
ブランド認知もまた、主題カテゴリによってばらつきがある。ブランド認知が高いのは、全国ニュースやスポーツで、回答者の61%が「自分が読んでいるブランドを認識している」と答えている。ブランド認知が低いのはライフスタイルの52%で、その理由はおそらく、こうしたコンテンツの多くがエバーグリーンコンテンツだからだろう。それぞれのカテゴリには、さまざまなパブリッシャーが含まれており、そのブランド認知は個々で大きな差があると見られる。
さらに判明した意外な結果
「馴染みのないサイトのコンテンツでもクリックする」と回答した人は、全体の40%にのぼる。このデータは、人々がパブリッシャーを発見するのにソーシャルメディアが一役買っていることを示している。ただし、12~19歳の年齢層では、馴染みのないコンテンツをクリックするのは19%に過ぎない。一般的なイメージと反して、若者は意外と保守的なのだろう。
人々がソーシャルメディアで過ごす時間が増えるにつれ、パブリッシャーたちは、自社サイトを人々が訪問することが減るのではないかと懸念してきた。自社サイトは、ユーザー・エクスペリエンスをコントールし、読者のデータを集め、収益につなげることが可能な場所だ。
DCNの調査結果によれば、人々がオンラインでメディアのコンテンツに触れるのは、パブリッシャーのサイトやアプリ(35%)、検索エンジン(31%)、ソーシャルメディア(34%)と、それぞれがほとんど同率となっている。しかしソーシャルメディアには、パブリッシャーの「発見」を促すチャンスが潜んでいるようだ。ソーシャルメディアで記事を読んだ後、パブリッシャーサイトを訪問している人が69%もいるのである。
Snapchatはやはり有望株
この調査からはさらに、Snapchat(スナップチャット)のパブリッシャー向けセクション「ディスカバー(Discover)」についての興味深い結果も明らかになった。ディスカバーは2015年にローンチされて以来、このアプリが若年層の読者の間で人気になっていることにあやかって、収益増加につなげたいと望むパブリッシャーたちの関心を惹いているのだ。
DCNの調査結果からも、Facebookの「インスタント記事」やTwitterの「モーメンツ」と比べて、スナップチャットのディスカバーに載っているコンテンツの方がよく読まれる傾向があることがわかる。20分以上記事を読んで過ごすと答えた人の割合が、スナップチャットのディスカバーを利用している場合は32%だったのに対し、Facebookのインスタント記事では28%だった。
DCNは、マギッド・リサーチ(Magid Research)とともに大規模調査を行い、ソーシャルメディア経由の配信がパブリッシャーのブランドに与える影響に加え、多様なソーシャルメディア・サイト上におけるパブリッシャー・コンテンツに対する消費者需要について調べた。DCNとマギッド・リサーチは2016年3月、自宅にインターネット接続を持つ米国内在住の12~54歳の回答者1000人を対象にオンライン調査を実施。「2016 DCN Content Distribution Impact Research」と名付けられた調査報告書は、DCNメンバーに限定公開されている。
Lucia Moses(原文 / 訳:ガリレオ)
(2016年5月26日「DIGIDAY[日本版]」より転載)