外国人技能実習生という名の奴隷市場

最初から企業が安価な労働力を確保するという意図が見え見えで、搾取、強制労働などの人権侵害の温床になっています。
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アメリカやイギリスなどの子供は、奴隷制について小さい頃から学びます。自国が犯した人道に対する犯罪を教科書から排除しようと躍起になっているどこぞの国と大違いで、奴隷制がいかに非人間的で許すまじきことだったかを、時間をかけて学習します。

その歴史の教科書によく出てくるのが、「奴隷市場」の絵です。アフリカで捉えた黒人を奴隷商人が船から下ろして見世物としてさらけ出し、競りにかける「市場」です。鎖で繋がれている黒人の腕を上げ、「旦那、この黒ん坊の逞しい腕はどうだい、農場でしっかり働いてくれまっせ」と通りすがる紳士などに声をかけるような光景です。黒人奴隷を人間として扱わず、完全に労働のための機械、モノです。

それに限りなく近い光景が演じられているのが、日本の外国人技能実習生制度です。外国人労働者を受け入れるための制度ですが、厳密には労働者ではなく「実習生」で、日本の「進んだ技術」を数年間途上国の実習生に学んでもらい、それを自国に持って帰ってもらって発展に役立ってもらうというものです。

すなわち途上国援助の一環という触れ込みで、制度の紹介には綺麗事ばかりが並べてあるのですが、実際には最初から企業が安価な労働力を確保するという意図が見え見えで、搾取、強制労働などの人権侵害の温床になっています。

日弁連や国内外の人権団体国連の人権機関、そしてアメリカの国務省までもが人身取引につながっているとして、こっぴどく批判しています。

数多くの人権侵害の報告に真摯に対応するどころか、この制度を拡大するという法案が国会に採択されたばかりで、今後は介護職にも「実習生」の受け入れが可能になります。

さて、その拡大を見越して、国際事業研究協同組合という団体が最近「国別の介護実習生のポテンシャル」なる一覧表をサイトに掲載しました。その団体は実習生の受け入れ皿のような団体の一つで、来日した実習生を企業に割り当てるのですが、その企業向けに、ご丁寧に実習生をさまざまなカテゴリーで国別でランキングして、採点しています。

例えば「心から弱者をいたわる奉仕の気持ちがあるかどうか」が評価の対象になっています。ビルマ人やインドネシア人は高得点ですが、ベトナム人は点数が低い状態となっています。どうも、ベトナム人というのは、弱者をいたわる気持ちがないけしからん連中のようですね。

「学習能力」のカテゴリーではカンボジア人は抜きん出て得点が低く、20点満点でたったの4点。「旦那、こっちは頭がちょっと弱いもんだから、力仕事だけで頼んまっせ」という奴隷商人の声が聞こえてきます。「真面目で純粋で高徳な人材」が多いかも評価の対象になっており、どの国も軒並み低い得点となっています。

やはり、美しい国で育った日本人のように「純粋で高徳な人間」は、東南アジアにはあまりいないようです。

このように数え切れないほど問題があるその一覧表はサイトに掲載されると非難が湧き上がり、その団体はすぐに削除したようですが、背景には技能実習制度全体が体のいい奴隷制度として運用されてきた事実があります。拡大どころか抜本的な改革(というより廃止)が求められているところです。

さて、このように東南アジアのそれぞれの国民性を大上段に評価して採点する立場にいる、アジアに冠たる「純粋で高徳」さを誇る我が国日本。「心から弱者をいたわる気持ち」が強い日本人(もちろん生活保護受給者などは例外)は、「年長者を尊重」するはずですが、混んでいる電車で年配者が乗り込んでも優先席に座っている紳士や若者などは軒並み目をそらします。

珍しく誰かが立って席を譲ったかと思うと、それが東南アジアの人だったということは一度や二度ではありませんね...