送迎バイクで登校?スラム街に住む少女の通学手段とは。

驚きの光景を目の当たりにした。
Open Image Modal
リンクルージョン

今回は、ミャンマーの最大都市ヤンゴンの郊外にあるスラム街を訪れた。

訪問先のご家庭で話を聞いていたとき、驚きの光景を目の当たりにした。

バイクのエンジン音が家に近づいてきて、それを聞いた少女は言った。

「学校いってきます。」

少女は家の前に到着したバイクの、運転手の後ろに座った。

私「え!?バイクで登校するの?」

お父さん「そうだよ。運転手を雇ってて送迎してもらってるんだ。」

日本人にとって、贅沢なイメージの送迎。

スラム街の小さな家に住むこの家庭は、実は裕福なのだろうか。

その真相に迫りたい。

訪問したお宅の家族構成と両親の職業

Open Image Modal
リンクルージョン

今回訪問させていただいた家庭は、お父さん、お母さん、13歳の長女と2歳の次女の4人家族である。

お父さんは、客の依頼に応じて、自転車で物を運ぶという個人の運送業を仕事にしている。

市場で仕入れを終えた、大きな荷物を持つ人たちによく利用されるサービスだ。

深夜2時から朝8時にかけて働き、家に帰って、家畜の世話をした後、初めて布団に入ることができるという。

「朝食は午前3時、昼食午前9時、夕食は深夜12時」と笑いながら言うお父さん。

家族を支えるため、忙しい毎日を送っている。

お母さんは、自宅の玄関先で野菜を販売している。

2歳の次女の世話もするため、簡単に家から離れることができない。

そこで家にいながら商売ができる八百屋を始めたそうだ。

長女は公立中学校に通う13歳。送迎を利用しているのが彼女だ。

英語を学ぶことが好きで、将来は医者になることが夢である。

(ミャンマーでは、将来の夢は医者という子どもが多い。)

次女は2歳。

5歳から、小学校と同じ敷地にある幼稚園に通い、同じような送迎を利用する予定だそうだ。

(ミャンマーでは、5歳から就学前教育として1年間、幼稚園に通う。それは0年生という扱いで、小学校と同じ敷地にあることが多い。)

余裕のない家計と高い送迎費

Open Image Modal
リンクルージョン

お母さんが家の軒先で開いている八百屋

この家庭は決して裕福なわけではない。

「貯金をする余裕はない」「生計を立てるのでやっと」とお父さん。

自転車での運送業は一般的に高収入な仕事ではなく、季節や気候によって利用数が変動することもあり、特に雨季には収入が減ってしまうためだ。

また、お母さんは亡くなった元夫との間に、成人した5人の子どもを持つ。

彼らは親元を離れて暮らしているが、金銭的な援助を必要とする時もよくあるそうだ。

「少し無理してでも、余裕がある月は援助してあげたい。」とお母さんは言う。

しかし、登校の送迎費用は決して安くはなく、月額35,000チャット(約3,500円)。

これは、日本の公立高校に通う生徒の通学費と大差はない。(1)

生計を立てるのがやっとで貯金をする余裕がないなら、送迎をやめればいいのにと思うかもしれない。

しかし、送迎を利用しなければならない理由がそこにはあった。

送迎を利用する理由とは。

Open Image Modal
リンクルージョン

その理由は、大きく3つある。

① 最寄りの中学校が遠い

彼女は、徒歩で約40分の距離(約3.5km)にある学校に通っている。

毎日の徒歩での通学は難しい。

そして、通学路にバスなどの公共交通機関は走っていない。

② 通学路の治安が良くない

自転車通学はだめなの?と聞いてみたが、通学路は日雇い労働者の多い地域で治安があまり良くないらしい。

両親は、娘がその地域を通ることをとても心配していた。

③ 両親に時間の余裕がない

「送迎を使わず、自転車でいっしょに登校できれば一番いいのだけど」と両親。

しかし両親ともに働いているため、毎日送り迎えするのは難しい。

貧しくても、送迎を利用せざるを得ない状況がそこにはあった。

まとめ

Open Image Modal
リンクルージョン

両親は「学校が近くにあったら、娘も楽に通学できるし、私たちの生活も楽になるのに...」と言っていた。

だが、送迎費を払ってでも子どもに教育を受けさせたいと思う両親に、とても感銘を受けた。

その支出は、彼らの明るい未来への投資となるにちがいない。

<参考文献>

(1)総務省統計局 学校種別の学習費

日本の公立高校に通う生徒の、月額の平均通学費は4,525円ほど。計算方法は以下。

   4,525円(月額の平均通学費)=45,253円(年間の平均通学費)÷10ヶ月(登校日数)

Ambassadorのプロフィール

Open Image Modal
リンクルージョン

リンクルージョン

私たちはミャンマーでマイクロファイナンスによる貧困削減をITで支援しています。農村やスラムに暮らす人々が、どのような生活をおくり、何を感じているのか。どのようなビジネスをしているのか。ニュースや統計データからは感じることができない、ミャンマーに生きる人々のリアルな姿をお届けします。