シンガポールのシェアリングエコノミー ~自転車編~

世の中はシェアリングエコノミーブーム。期待と警戒が相まみえています。シンガポールは...

うにうに@シンガポールウォッチャーです。シンガポールでのシェアリングエコノミーの話を、最近話題の自転車を中心にします。

シェアリングエコノミーにシンガポールは全面歓迎ではない

世の中はシェアリングエコノミーブーム。期待と警戒が相まみえています。シンガポールは「規制がゆるゆか」と思われがちなのですが、是々非々なのが実情です。例えば、配車アプリのUberやGrabは推進されつつも、職業免許や健康診断などの環境整備が進行中ですがが、その一方で民泊は違法です。有名無実になっていた「賃貸契約は6カ月以上」という規制条項を強化し、民泊を取り締まっています。

Uber普及で不利益を受けるのは既存業界(タクシー)であって、民泊で不利益を受けるのは近隣住民という違いは大きいです。シンガポールは既得権保護が、日本よりはるかに弱い国です

隣家が民泊をはじめて、不特定多数が居住区に出入りするようになれば、それは特にセキュリティがあるようなマンション(コンドミニアム)では、近隣にストレスを与えることは間違いないです。それに加えて、都市国家のシンガポールで宿泊施設を利用するのは外国人であり、外国人の居所は管理しておきたいという政府事情もあると、私は見ています。

そうでありながら、エアビーアンドビー社のアジア地域本社がシンガポールにあるのが、シンガポール(とエアビーアンドビー社)の商魂たくましいところです。シンガポール経済開発庁(EDB)は「どうしてサービスを提供していない国に、エアビーアンドビー社はアジア本社を置いたのか?」というページすら作っています。低税率国というのが大きいのでしょうが、ビジネスの現場がある国と管理をする国は別でもいいわけです。多国籍の高品質な人材を採用できるシンガポールが有利だと延べられています。

レンタサイクル2.0?!

シンガポールでのシェアリングエコノミーの次なる波は自転車です。レンタサイクル扱いは本望ではないようです。私が使ったoBikeでのレンタサイクルとの違いです。

  1. そこらに駐輪されている自転車を、利用可能。
  2. 借りた所以外でも、公共駐輪場に駐輪して利用終了ができる。
  3. 自転車にGPSが装備されていて、利用可能な自転車が携帯アプリの地図で分かる
  4. 自転車を借りる時には、携帯アプリで自転車はQRコードをスキャンして、Bluetoothで鍵を解錠

自転車に慣れてないシンガポール

シンガポールに移ってきた日本人が移動で面食らうのは、「その距離だったら自転車で」と思ってしまうことです。そして「こっちの人は自転車に乗らないから」と言われるのです。シンガポールで自転車は普及率が低いです。私の観測では、自転車を持っていない家庭の方が多く、たまに自転車に乗れないシンガポール人にあうことがあるぐらいです。

シンガポールにおいて自転車とは、日本でのママチャリでの通勤・通学・買い物・駅への移動といった近所移動の足ではなく、娯楽やスポーツなのです。週末にイーストコーストでレンタサイクルか、高級自転車での趣味人です。こうなったのは、

  1. 突然のスコールがあること
  2. 自転車運転には暑すぎること
  3. バス網が発達していること

を私はあげます。

自転車ではない交通手段としてあるのが、国の津々浦々に停留所があるバスです。なので、例えば通勤だと、

  • 自宅→バス→MRT(鉄道)→バス→オフィス

という経路は一般的です。これはシンガポールでMRT・バス運賃が安く、しかも乗り継ぎ運賃があるのも助けになっています。シンガポール版スイカのEzLinkカードを使うと、初乗りは$0.77(約60円)です。通勤には、片道$2(160円)以内に収まる人が大半なはずです。都市国家のシンガポールでは、渋滞抑制のため車は総量規制がされています。車両所有権(COE)はオークションで価格が決まるため、カローラが約800万円しますが、公共交通機関は安価なのです。

oBikeに乗ってみた

というわけで、乗ってみましたシェア自転車です。シンガポールでは、他にofo社やmobike社と合計3社が運営しています。中国発のmobikeにはシンガポール政府系投資会社のテマセクが出資もしています。私が使ったのはoBike。黄色のカラーリングが印象的です。

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まずはアプリを携帯に導入します。クレジットカードを登録して、デポジットに$49を支払います。デポジットは請求すると返金されます。自転車を不正利用しないための保証金ですね。アプリでは、下記の画像のように、近くにある自転車が無数に表示されます。本来は、公共駐輪場にしかないはずですが、至る所に放置されているのがミソです。

この地図から都合の良い自転車を探して、自転車についているQRコードを携帯アプリでスキャンすると、解錠され乗れるようになります。自転車を見つけるまでに誰かに先に利用されないように、10分間の無料予約もアプリでできるのがウリになっています。

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お値段は15分$0.5と、バスと比べると安いとは言えないお値段。

これまで行くのが面倒だった自転車むきの所に、スイスイいけます。たまに自転車に乗ると楽しい。日本では高層ビルが立ち並ぶ金融国として知られているシンガポールですが、元は南の島。ジャングルの入り口あたりまでなら自転車でウロウロでき、おさるさんにも出会えます。

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乗り終わり自転車を施錠すると、そこで課金になります。今回は週末プロモーションで無料でした。走行距離と消費カロリーが表示されるのが、GPSの威力です。

シンガポールでシェア自転車が話題になっているのは、ここ数週間で街のあちこちで突如目にするようになったためです。oBike社の指示としては、この自転車は指定の公共駐輪場にしか駐輪できません。利用可能な駐輪場は、携帯アプリの地図にも表示されていますし、「公共駐輪場に戻すように」という内容も記載されています。oBike社は

  1. MRT駅の公共駐輪場
  2. 国民の8割が住む公団(HDB)1階にある、公共駐輪場
  3. ショッピングモールの公共駐輪場

に駐輪するようにサイトにも記載しています。「無料で誰もがアクセスできる公共の駐輪場に止めろ」ということです。

しかし、大半の利用者は守っていないのが現状です。今回のサイクリングでも、放置自転車が政府(LTA)に警告の張り紙を受けているのを見つけました。

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指定の駐輪場を利用しないことに加えて、悪質な利用者も話題になっています。壊れた自転車が放置されている写真が、写真投稿サイトに掲載されました。

oBikeでは「クレジットポイント」という、不適切な駐輪・施錠忘れ・盗難は減点され、不適切な駐輪通報・壊れた自転車通報・知人へのアプリ紹介は加点される制度を導入しました。100点から始まり、79点以下だと、本来は15分$0.5の価格が$5と十倍に跳ね上がり、60点未満だと百倍の$50になります。

Mobike社のシェア自転車では、公共駐輪場以外で駐輪しようとすると、携帯アプリに警告が出る機能が加わりました。

シェア自転車が先行している中国では、不適切駐輪の自転車を回収しているようです。シンガポールでも回収や、指定駐輪場以外では自転車をロックできないなどの対応が、今後は求められるのではないでしょうか。

シンガポール政府は自転車を推進しようとしています。渋滞に強く、燃料要らずでグリーンな印象が政府にはあるようです。

駅の駐輪場は無料です。ですが、既存の駅には40台から100台しか駐輪できる場所がありません。日本と比べるとゼロが一つ以上足りません。土地が日本より高額なシンガポールで駐輪場整備はかなり大変なはずです。

また、日本人は自転車の危険を前提に生活していますが、例えば東京都での交通事故比率の32.1%は自転車が関係しています。シンガポールでバスが起こす事故もありますが、人身事故の危険性は自転車が高いはずです。電動キックボードの事故が日本でも騒がれたのは、たとえ全体の事故数からしても微々たるものであっても、新しい危険で目を引いたからです。自転車が関係する事故が増えると、シンガポールは自転車という"新しい危険"を許容する必要があります。

日本での自転車の大変さを経験した私から見ると、せっかく構築したシンガポールでの安価で便利なバスが勿体無いです。シンガポールにはバス社会の方が向いているのでは、というのが私の印象です。

本記事は下記からの抜粋です。今後、追記・訂正が発生した際には、下記で対応します。