『週刊新潮』誌2015年2月12日号を読んで

事件記事と言うのは、同誌に限らず気分のいいものではない。私は資料を提供に協力した人たちは、どのような思いがあったのかが気になった。
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新潮社

私はコンビニで『週刊新潮』誌2015年2月12日号(第60巻第6号、通巻2976号。新潮社刊)を手に取った。予告通り、殺人容疑で逮捕された19歳女子大生の実名と顔写真を掲載していた。日頃、「少年法の廃止」を主張する者にとって、有名人を除く未成年犯罪者の実名と顔を知るのは初めて。そのせいか記事を拝見すると、戸惑いを覚えてしまった。"一読者の視点"で語らせていただきたい。

■インターネットで簡単にできる身元の特定

2015年に入ると、同じ19歳の"つまようじ少年"がYou Tubeに逃走動画をアップしていた。報道機関では映像と音声を加工していたが、当のYou Tubeはオリジナルなので、違和感を覚えた。少年法にかかわるので、加工するのはわかるが、You Tubeを運営する企業側が削除の措置をとらない限り、少年法を守れないのではないか(誤解のないよう補足すると、映像の加工は理解できる)。

一方、女子大生の場合、Twitterのユーザー名が実名なので、報道機関で加工しても、Twitterを運営する企業側が削除の措置をとらない限り、同じことが言える。

もっともフォロワーなどが「この事件の容疑者です」とユーザーのアカウント、もしくはURLをツイートした可能性もあり得る。

報道機関で疑問なのは、未成年犯罪者の顔写真を加工していることで、中途半端にボカすぐらいなら、最初から公開すべきではない。

■少年法の限界-未成年者は有名になった時点で大人扱い-

私が少年法に疑問を持つきっかけとなったのは、横山やすしの息子、木村一八が事件を起こして逮捕されたことだ。木村はすでに芸能界デビューしていたが、報道機関では「少年」と氏名を伏せた。しかし、芸能レポーターは横山やすしのもとへ駆けつけていたので、簡単にバレてしまった(当時はインターネットがない)。

2008年には大相撲の幕内力士、若ノ鵬(ロシア出身)が大麻所持で逮捕された。逮捕時の年齢は20歳だったが、事件を起こした年齢は19歳だったため、報道機関では四股名を伏せた。しかし、北の湖理事長が会見で臆することなく「若ノ鵬」を発したため、報道機関は一転して四股名や本名の公表に踏み切った。

日本相撲協会は若ノ鵬の逮捕を受け、急きょ検査を実施したところ、北の湖部屋所属力士に疑いが浮上。本人は潔白を主張したが、解雇処分を受けた。これに伴い、師匠北の湖は1度理事長を辞している。

いくら未成年者でも有名人になってしまえば、その時点で「大人」なのだ。例えば、芸能界ではちょうど10歳の女性タレントが人気を得ており、知らない人はほとんどいないと思う。彼女が6歳頃から頭角を現した時点で、関係者や視聴者が"「大人」として見ている"のではないだろうか。

■容疑者を知る人物は、どんな思いで資料を提供したのか

『週刊新潮』誌の記事では、容疑者の顔写真、小学校卒業時の文集、Twitterのスクリーンショット(加工あり)などが掲載されている。前二者は容疑者をよく知る人物に提供を依頼し、抵抗なく応じたのだろう。

事件記事と言うのは、同誌に限らず気分のいいものではない。私は資料の提供に協力した人たちは、どのような思いがあったのかが気になった。考えられるのは、「完全な決別」と「謝礼欲しさ」の2点。その人にとって「容疑者に裏切られたのか」「容疑者を裏切った」のかはわからない。ひとつだけ確信できるのは、"逮捕される前から記憶に残る容疑者"だと。

同誌の勇気ある行動に賛否があると思う。ただ、この号が絶版されても古本屋や国会図書館で入手できるため、容疑者や親族の傷は一生消えない。それはほかの事件で逮捕された成人の容疑者でも同じことだ。

蛇足ながら、数年前も「人殺しの経験がしたかった」という理由で少年が逮捕された。奇しくも今回と同じ高齢者が殺されてしまった。