一般医薬品のインターネット販売は、何故成長戦略に盛り込まれたのか

政府が6日にまとめた「骨太の方針」について、内閣府などが7日に開かれた自民党の政務調査会と党日本経済再生本部の合同会議で説明を行ったが、安倍首相自らが進めている一般用医薬品(市販薬)のインターネット販売解禁について、批判が集中した…
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Hiroshi Mikitani, chairman and chief executive officer of Rakuten Inc., speaks at the New Economy Summit 2013 hosted by the Japan Association of New Economy (JANE) in Tokyo, Japan, on Tuesday, April 16, 2013. Mikitani set up the JANE in June after quitting the main business lobby Nippon Keidanren in protest over the group's support for nuclear power. Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg via Getty Images
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政府が6日にまとめた「骨太の方針」について、内閣府などが7日に開かれた自民党の政務調査会と党日本経済再生本部の合同会議で説明を行った。党所属のすべての国会議員が参加できる会合であり、安倍首相が推進している成長戦略や規制改革などが、午前7時から11時頃まで議論された。

規制改革などについては、健康・医療、エネルギー、新規ビジネスの創出などの分野を中心に、約130項目が提示された。この中で、安倍首相自らが進めている一般用医薬品(市販薬)のインターネット販売解禁について、批判が集中した。産経ニュースは以下のように報じている。

橋本岳衆院議員は「衆院選の総合政策集で一般薬の安易な解禁は行わないと記述したのを覆すのか。自民党はいつから(産業競争力会議メンバーの)三木谷浩史楽天会長のポチになったのか」と痛烈に批判した。

(産経ニュース「自民でアベノミクスに批判 薬のネット販売反対「いつから三木谷のポチになったか」」より。 2013/6/7 21:07)

また、朝日新聞デジタルも、下記のように報じている。

 自民党の有力支持団体である日本薬剤師会が解禁に慎重なことから、自民党離れへの懸念も背景にあるようだ。秋元司氏は「そもそも解禁で需要が増えるのか。成長戦略に入ることすらおかしい」と訴えた。

朝日デジタル「骨太の骨抜く?声次々 「薬ネット販売慎重に」「財政出動足りぬ」 自民会合」より。 2013年6月8日)

確かに自民党が昨年の衆議院選挙の際に使ったマニフェスト「J-ファイル2012 自民党総合政策集」には、薬のネット販売については下記のように安易な規制緩和は行わないと書かれている。

安全優先の観点から医薬品のネット販売の安易な規制緩和は行わず、スイッチ OTCの推進など、一般用医薬品の拡充を図ります。

(自民党「J-ファイル2012 自民党総合政策集」より。)

しかし、安倍総理は、6月5日に行われた成長戦略第3弾スピーチにて、インターネットでの一般用医薬品の販売解禁を明言した。

「インターネットによる、一般医薬品の販売を解禁します。

ネットでの取引がこれだけ定着した現代で、対面でもネットでも、とにかく消費者の安全性と利便性を高める、というアプローチが筋です。

消費者の安全性を確保しつつ、しっかりしたルールの下で、すべての一般医薬品の販売を解禁いたします。」

(安倍首相「成長戦略第3弾スピーチ」より。2013/6/5)

楽天の三木谷氏は、安倍首相が議長を務め「成長戦略」について議論している産業競争力会議の民間議員の一人だ。三木谷氏はこの会議で、規制緩和や、グローバル人材育成、競争力アップに向けた指標(Key Performance Indicator)の設定の必要性などを訴えていた。

薬のネット販売に関するルールについては、厚生労働省の「一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する検討会」において議論が進められてきた。三木谷氏が代表理事を務める新経済連盟(新経連)は薬のネット販売全面解禁を求めており、この検討会には新経連顧問の國重惇史氏(楽天代表取締役副社長)が参加してきた。

一般医薬品は副作用の内容によって第1類〜第3類まで分かれるが、リスクの高い薬のネット販売反対を主張する薬害被害者や医療界に対し、ネット業界側は全面解禁を主張。全11回の会議が行われたが歩み寄りは見られず、双方の意見を両論併記する形で報告書にまとめ、終了となった。

三木谷氏は、一向に進まない薬のネット販売解禁について、「こんな規制緩和も出来ないようなら辞任する」と厚生労働省の職員に漏らしたとの報道もある。三木谷氏が辞任するということになると、海外から「日本は規制緩和に否定的だ」と見られかねないということもあり、薬のネット販売を盛り込むことになったという政府関係者の声もあったようだ。

新経連は4月16日にTwitterやSkypeの創業者やGoogle・Androidの生みの親らが集った「新経済サミット2013」を開催。その前日に開かれたウェルカムパーティーに招かれた安倍首相は下記のように語っている。

「アメリカから来た皆様には日本をエンジョイしていただいて、日本にどんどん投資をしていただきたいと思うわけでありますし、皆様が必要とする人材を我々は必ず育成していきますので、しっかりと腰を日本に据えて、ビジネスを展開していただきたい。」

(安倍首相「新経済サミット2013 ウエルカム・パーティ」より。 2013/4/15)

日本には「岩盤規制」といわれるほどの関係各省だけでなく業界団体が強く反対し、長年解決がつかない既得権益分野もある。その岩盤規制を崩す第一歩として、「国家戦略特区」が成長戦略に盛り込まれる予定だ。特区は様々な規制について、特定の地域だけに限定して開放するという試みだ。

構造改革の楔(クサビ)として特区は国際社会に向けてアピールできる内容となるのか。それとも骨抜きにされた内容で終わるのか。14日の閣僚決定まで、政府と与党内での調整は続く。

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