犠牲の陸曹長、別の隊員守り噴石直撃か 草津白根山
12人が死傷した草津白根山(群馬県草津町)の噴火で、訓練中に噴火に巻き込まれ軽傷を負った陸上自衛隊員の一人が「死亡した伊沢隆行陸曹長(3等陸尉に特別昇任)は、自分を守ろうとしてくれて背中に噴石が直撃した」と話していることが、陸自への取材でわかった。
陸自によると、伊沢さんが所属する陸自第12ヘリコプター隊の隊員30人は、23日午前8時半ごろから三つのグループに分かれて東側にある草津国際スキー場で滑り始めた。伊沢さんは上級者グループ(8人)の一人として訓練に参加していた。噴火後、山頂付近を滑っていた8人は近くの雑木林に避難したが、噴石は数分間降り続き、伊沢さん以外の7人も重軽傷を負った。
陸自の聞き取りに対し、軽傷を負った隊員の一人が「覆いかぶさってくれて、そこに噴石が背中に直撃したようだ」と話しているという。伊沢さんはスキー場の救護員に救助された際に「肺が痛い」と話していたが、救急搬送中に心肺停止になり、同日午後0時半ごろ、搬送先の病院で死亡が確認された。
◇
「すごく悔しい。うそであってほしい」。伊沢さんの知人で、群馬県安中市の整体師の河村哲也さん(36)は話した。 約5年前、仙台市の整体を学ぶ学校で知り合った。伊沢さんは熱心に技術を学び、後輩にも惜しまず練習法などを指導していたという。「いつも笑顔で冗談を言い、場を和ましてくれた存在だった」
伊沢さんは今年の正月、ブログに「世界の笑顔に貢献する」と目標を書いていた。噴火に遭遇した自衛隊員の一人が「伊沢さんが覆いかぶさってくれた」と証言していることについて、河村さんは「人への思いやりがあり、愛にあふれた伊沢さんらしい。彼にしかできない行動ではないか」と死を悼んだ。