黒煙5度目、ついに負傷者 新日鉄住金の名古屋製鉄所
今年に入り4回、黒煙噴出のトラブルを起こしていた愛知県東海市の新日鉄住金名古屋製鉄所で3日、またしても黒煙が舞い上がった。今回は「トラブル」ではなく「火災」。重傷5人を含む15人が負傷した。安全管理に批判が高まる中、会社側は「原因は分からない」と繰り返すばかり。地域住民からは怒りの声が上がっている。
「地域のみなさまにご心配をおかけして申し訳ありません。多数の社員が被災されたことについても合わせておわび申し上げます」
新日鉄住金名古屋製鉄所は3日午後5時過ぎから同社施設で会見した。酒本義嗣所長は冒頭、50人を超える報道陣を前に深々と頭を下げ、謝罪の言葉を繰り返した。
同社や愛知県警によると、火災は、第1コークス炉で起きた。コークス炉は石炭を蒸し焼きにするもので、ここで生産されたコークスは高炉に運ばれ、鉄鉱石と混ぜて鉄分を取り出す「還元剤」や熱源として使用される。作業員が午前10時半ごろ、コークス炉内にある石炭の一時貯蔵施設「石炭塔」の上部から白煙が上がっているのを確認。通報を受けた東海市消防本部がまもなく駆けつけたが、炎が出ていないため消火活動はせず、煙もほぼ収まったとして正午ごろには撤収した。
ところが午後0時35分ごろ、再び同じ石炭塔で異常燃焼が発生。最初の発煙の原因などを調査するために石炭塔の近くにいたとされる同社と関連会社の社員計15人が顔などにやけどを負った。異常燃焼の際に爆発音を聞いたという負傷者もおり、5人は重傷で入院した。
その後も火災は収まらず、午後1時25分ごろには、第1コークス炉と第3コークス炉をつなぐベルトコンベヤーに延焼。消火活動は夜まで続いた。
会見では火災の原因や当時の詳しい状況についての質問が相次いだ。酒本所長は考えられる原因として、石炭塔の設備の異常や石炭の自然発熱による温度上昇を挙げたが、「原因は分からない。継続して調査をしたい」と明言を避けた。
名古屋製鉄所では今年1月以降、停電で黒煙が噴出するトラブルが4度起きている。会見では報道陣からこの点についても質問が集中した。酒本所長は「製鉄所を挙げて原因究明、再発防止対策をやってきたがトラブルが続いている。外部の有識者らの客観的な評価を受けたい」と述べるにとどまった。