石破茂です。
予算審議も地方公聴会が行われるなど、衆議院通過の目途が立ちつつあります。暫定予算不可避とも言われておりますが、衆議院における残りの審議ならびに参議院審議においても、誠実かつ丁寧に対応して参りたいと思います。
補助金を受けた企業からの献金が問題となっていますが、「補助金を受けたことを知っていた、知らなかった」という議論が繰り返されるのはあまり意味が無いように思います。
かつて政治改革の議論が活発であった頃、「民主主義のコストとは何か、それを誰が負担すべきなのか」という議論を盛んにしたものでした。
「もっと議員を減らせ、もっと報酬を下げろ」という論は一般受けするかもしれませんが、この行きつく果ては「議員は無報酬でいい」、さらには「議会は要らない」という、特定の者しか政治に携われないような結論、あるいは民主主義の否定にもつながりかねません。
個人的には、議員の数を減らしてでも、一人一人の議員が何をしているのかをもっと有権者に分かるようにすべきだし、資金集めのような活動からもなるべく解放されるべきと考えています。
政策研究や現場の実態把握、有権者との意見交換など、本当に議員活動に必要なお金については、厳正なチェックを前提として公費負担の割合を増やすべきではないかと思います。
毎日メールやお手紙を沢山頂き、書籍、雑誌の類もそれこそ山のように送られてくるのですが、正直とても対応できていません。「せっかく書いたのに」「すぐに読んで欲しいのに」という思いがおありだろう、といつも申し訳なく思うのですが、これが現実です。
米国議会のように、多くのスタッフがそれらを読み、分析し、議員に提案・意見し、返答するようなシステムを可能とするべきですし、それなくして立法が行政に対等に対峙することは困難ではないかと思います。
国会議員であれ、地方議員であれ、その人が日頃何をしているのか、有権者にはまずわかりません。ホームページは今やほとんどの議員が持っていますが、長期間更新していないものも散見されます。
国会議員は選挙の時だけ「候補者の横顔」「候補者の抱負」「当選者は語る」などの記事が載りますが、これとて選挙妨害になってはいけないので一律の羅列記事的になりがちですし、地方議員の場合には候補者が多いこともあってそれすら無いのが現実です。
統一地方選挙が間近ですが、無投票選挙区や候補者が定数に足りない選挙区が増えつつある現実は極めて憂慮すべき事態です。「民主主義の学校」と言われる地方自治の世界で起こっていることは、即ち政治の劣化そのものではないでしょうか。
「大切なものはタダではないし、誰かがそれを負担しなくてはならない」という、実に当たり前のことが忘れられようとしていることに、政治はもちろんのこと、国民ももっと危機感を持たねばならないのではないかと焦燥感に駆られます。
あくまで報道ベースでしか情報を知らないのですが、川崎市の極めて痛ましい事件を受けて、いかなる対策が可能なのか、少年法改正の議論のみならず、具体策の早急な制定が必要です。
このテーマは何も今日只今、急に生起したものではなく、刑法や少年法、犯罪学の古典的な論点であり、三島由紀夫の「午後の曳航」(昭和38年)のテーマのひとつでもあります。
選挙権年齢の引き下げと併せ、適用年齢を引き下げることにより、成人に対するものと同様の犯罪抑止効果がどこまで期待できるのか、「少年であることによる更生の期待性」はどの程度のものなのか。
我々は「牧野刑法」や「フェリーの社会防衛論」、「ロンブローゾの生来的犯罪者論」などを否定的に習った世代ですが、もう一度きちんと学習しなくてはなりません。
先週訪問した宇都宮市の「お猿さんがもてなしてくれる居酒屋さん」は映像向きのテーマであったようで、いくつかのテレビでも取り上げられました。
食品衛生法や動物愛護条例など、多くの社会的規制をクリアし、猿へのあふれる愛情をもって芸を仕込む努力を積み重ねて今日があるのであって、お世辞抜きに立派な取り組みだと思いました。
「やねだん」も「中村ブレイス」も「ななつ星in九州」もそうなのですが、実際に行ってみてその素晴らしさがわかるという体験が続いています。映像や字面、伝聞推量や自分の勝手な思い込みだけで判断や批評してはいけないことをつくづくと思い知らされる日々です。
週末七日土曜日は天神川河川防災ステーション竣工式(鳥取県倉吉市)、自民党大会政策シンポジウム「地方創生」で講演とパネルディスカッション(党本部)、自民党大会での鳥取県表彰者との懇談会。
八日日曜日は自民党長崎県連演説会(長崎市)、自民党上五島支部「地方創生推進上五島集会」(長崎県新上五島町)、自民党五島支部「地方創生推進五島大会」、市町村からの要望会(長崎県五島市)という日程です。
離島は本当は泊りがけで行きたいのですが、日程上どうにもならず残念です。
日一日と春めいてまいりました。お元気でお過ごしくださいませ。
(15年3月6日「石破茂ブログ」より転載)