【渋谷区長選】同性パートナーシップ条例・ホームレス・待機児童......気になる問題に立候補者は何と答えた?

4月26日に投開票が行われる東京・渋谷区長選。渋谷区では3月、全国で初めて、同性カップルに対して結婚に準じる関係と認める「パートナーシップ証明」を発行する条例が可決したばかり。条例を成立させた桑原敏武区長が引退することから、新人4人が立候補し、注目を集めている。立候補しているのは新人4氏。投票日直前、気になる争点を整理、その主張に耳を傾けてみよう。
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猪谷千香

4月26日に投開票が行われる東京・渋谷区長選。渋谷区では3月、全国で初めて、同性カップルに対して結婚に準じる関係と認める「パートナーシップ証明」を発行する条例が可決したばかり。条例を成立させた桑原敏武区長が引退することから、新人4人が立候補し、注目を集めている。

立候補しているのは、桑原区長が自らの後継者として指名する元区議の長谷部健氏(43)、民主・維新・社民・生活の野党から推薦、共産党からの支援を受けている元都議の矢部一氏(64)、無所属で寺社管長の今城睦人氏(67)、前区長の小倉基氏の娘で、自民・公明の推薦を受けている元都議の村上英子氏(59)の4氏(届け出順)。投票日直前、4月18日に開かれた区長選の公開討論会での発言などを参考にしながら争点を整理、4氏に主張に耳を傾けてみよう。

■同性パートナーシップ条例の「発案者」「賛同者」「慎重派」「反対派」

まず、同性パートナーシップ条例についてだが、区議会で発案したのは長谷部氏(当時区議)だった。これを受けて、桑原区長が推し進めた政策となる。この条例はLGBT当事者の人たちを中心に区内外から多くの支持を得た。4月23日にも、東京レインボープライド2015 共同代表の杉山文野さんとLGBTアクティビストで元タカラジェンヌの東小雪さんが東京の外国特派員協会で会見。区長選について語り、「日本が多様性を認める社会になれるかの分かれ目」とその重要性を訴えている。

長谷部氏も発案者として、「世界の先進都市では普通に理解されることだが、日本では5%、700万人がこのことで悩んでいる。渋谷がこの後、国際社会の都市としてリードしていくためには必要な要素のひとつだと思っている」と話している(公開討論会)。

条例に賛同しつつも、慎重な姿勢を見せるのが、矢部氏と村上氏だ。矢部氏は、「議会で決まったことであり、提案は素晴らしいと思いますが、これから研究しなければならないことがいっぱいある。ただ、多様性社会の中で、そういう方たちにどう対応すれば住み心地がよいと思ってもらえるのかは考えていかなければならない」とする(公開討論会)。

この条例については、自民党の「家族の絆を守る特命委員会」内で異論が相次いでいた。自民党の推薦を受ける村上氏は、公開討論会で「条例に賛成か反対か」と司会者に問われ、「◯」を上げつつも、「質問の趣旨がおかしい。多様性社会推進条例(同性パートナーシップ条例)は、先の定例会で条例の決定がされているので、マルバツで答えを求めるのはおかしい。私は議会制民主主義は守ると約束しましたので、議会に決定したものに対して、あえて◯を上げた」とまず、クレームをつけた。

さらに、「3月31日の議会最終日、自民党区議8人が反対、無所属区議7人の皆さんが反対したが、賛成多数で可決した。外からいろんな話を伺っていると、大変、拙速に条例を制定したなという印象は否めない」「条例の細部はまったく決まっていませんから、そこはこれからしっかり対応していかないといけない」「LGBTという言葉は、区民の皆さん含めてご理解いただけていない。そうは言いながら、日本全国から渋谷区は大変、注目を浴びました。新聞、テレビ、マスコミを通じて、大半の同性愛の皆さんに結婚相当の認定をするのがこの条例だと思われています。しかし、性同一性障害も含まれてますから、障害と性的少数派は明らかに違うことを明確しなければならない」などと発言。慎重な姿勢を崩さなかった。

また、今城氏は立候補の理由に、この条例の廃止を挙げた。公開討論会では、その理由に「同性愛は親から子ども時にしっかりした教育をしないから生まれる。自然の獣でも、オス同士メス同士が交尾はしません。同性愛は人間が作った個性の問題で、条例で決めるものではありません。条例を作れば、さらなる差別が必ず生まれてきます」と独自の意見を展開した。

■渋谷のホームレス問題は「積極的取り組み」「アメリカに先進例」「言及せず

また、メディアで取り沙汰されている宮下公園などのホームレス問題について、長谷部氏や矢部氏は、公開討論会で積極的な問題解決を目標に掲げた。

長谷部氏は、「ネットなどで、ホームレスを排除を推進している議員だと言われていますが、まったくそんなことはない。宮下公園にスポーツの公園作ったほうがいいという企業の提案を、後押しをしながら進めた。それでホームレスを排除したと言われた」とまず弁明。その上で、「ホームレスの方々については、実は渋谷区もサポートしている。しかし、今の(路上)生活がいいという方もいる。でも、個人として思っているのは、ずっと公園にいつづけることはホームレスの方のゴールではない。生活保護やメンタルヘルスのサポートをもっとしていくことを考えています。たとえば、ホームレスから社会復帰した方を区役所に取り入れてこの問題にあたっていくなど、積極的に取り組みたい」と話した。

同様に矢部氏は、「ホームレス問題については、アメリカが先進的かもしれません。ニューヨーク市ではビルの空いているフロアにシェルターを作り、入ってもらうという仕組みがあって、空きビル対策をかねた面白いアイデアだと思った。そこに仕事の指導や食事サービスをする組織があったり、市がバックアップして就職の斡旋をする。それを渋谷区でも取り入れていかなければいけない。それをしつつ、公園の改造をしなければならないと思います」と述べた。

また、渋谷の公園でホームレス支援を行っている団体「渋谷・野宿者の生存と生活をかちとる自由連合」(のじれん)が4月19日、立候補者に対して、渋谷の公園利用について公開質問状を送った。これに対して、長谷部氏、矢部氏、今城氏は以下のように回答している。

なお、村上氏はのじれんの公開質問状に対して回答していない(4月24日現在)。

■子育て支援は「3歳まで家庭で育てる」「放課後クラブの時間延長」「空き教室を保育施設に」

待機児童問題の解消や学童保育の問題など、渋谷区でも子育てに関する課題は少なくない。公開討論会でも活発な意見が述べられた。

待機児童問題について村上氏は、「待機児童ゼロを目指すのは皆さん、おっしゃること。しかし、渋谷区の場合は新しい保育所を作っても、いつまでたってもゼロにならない。渋谷の保育事情が恵まれていて、区外から住居を移される方が多いのが理由」と分析。解決策として、「まず、優先順位として、渋谷区の方ができるだけご家庭で子育てができるような環境を整えていくことが必要。3歳まで子どもを育てた後、幼稚園に入れるという道もあるということで、選択の幅を広げていくということ。ともすれば、キャリアウーマンだけに光が当たると錯覚をされる方もいらっしゃいますが、ご家庭で子供を育てていらっしゃる方にも光を当てていかなければいけないと思います」と家庭での保育を強調した。

長谷部氏は、幼稚園や保育園、小学校などに「地域コーディネーター」の導入を提案。「退職された人が、仕事が忙しくて、なり手のいないPTAの活動をサポート」するなどのアイデアを述べた。また、「親の仕事が忙しくて、鍵っ子になっている現状は変わらない。地域コーディネーターを活用して、放課後クラブの時間延長や、塾とか勉強する機能などを放課後クラブにつけて、遅くまで働いている人に対応したい」とした。

矢部氏は、「私のところは孫が生まれたのですが、渋谷区の保育園に入れず、新宿区の保育園にお世話になっています」と自身の経験を披露。「新宿区では大きなビルの一階がそっくり保育室になってます。そういう中で、大変助かってます。渋谷もおおいにやるべきだと思っています。渋谷の中で、緊急避難的に公園をつぶして保育園を建てています。公園が必要な人には公園がなくなってしまう。よく調べると、隣の小学校は空き教室がある。そういう有効活用できるのではないか」と提案した。

■今後の財政は「都や国の予算を活用」「民間企業と連携」「交際費を透明化」

公開討論会において、それぞれの立場の違いが明確になったのが財政についての考え方だ。

都議という経験を背景に、都とのパイプを主張するのが村上氏。「今回の選挙の争点に取り上げてほしいのは、限られた財源をどこまで活用できるのかを判断にしてほしいということ。国や都から予算をひっぱる。ひとつの例として、今、地方創生と言われていますが、プレミアム付き商品券が、使われることになったが、渋谷区だけは手を挙げずに使われなかった。1万円のものが1万2000円になれば、区民の皆さんが喜ばれる」と財政面で国や都の施策を活用することをアピールした。

一方、税金よりも民間の資金を活用する必要を訴えるのが、長谷部氏。「渋谷だからできることがある。たとえば、30階の建物ができるのであれば、3階分の容積を増して保育施設や特養施設にする。これを20年、30年の定借で区が借り受ける。30年たてば民間が好きに使っていい。民間も得をしますし、区も建設費用が浮く」と公民連携を提案した。

矢部氏は「無駄をなくすこと。それから、情報をオープンにすること。特に区長の交際費はオープンにしたい。小倉前区長の時から、保存期間が5年間から1年間に縮まっている。交際費の金額は少ないかもしれないが、情報公開の一歩になっていく」と財政面でもガラス張りの区政を目指す考えを示した。

なお、現在進んでいる区庁舎の建て替え計画については、老朽化が激しいことや耐震性への懸念から、候補者全員が賛成をしている。しかし、その推進については、計画通り進める考えの長谷部氏と村上氏に対し、矢部氏は「一級建築士という立場から区民の皆さんの意見をもっと取り入れたい」としている。

■ネット選挙活動については、活用派と消極派にまっぷたつ

ネット選挙活動では、長谷部氏が自身の公式サイトの他、Facebookを活用、政策やその日の予定などを更新している他、矢部氏も同様に公式サイトで政策や日々の情報発信を行っている。

村上氏は公式サイトを開設しているが告示後の更新は1回のみで、ソーシャルメディアの利用はない。今城氏はネットでの選挙活動はしていない。

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