米東部にある世界最大級の新型天然ガス「シェールガス」の採掘施設周辺で井戸水を調査した結果、8割以上の井戸の飲み水からガス成分のメタンを検出したと、米デューク大の研究チームが米科学アカデミー紀要電子版に24日発表した。共同通信では、次のように伝えている。
チームは、米東部ペンシルベニア州を中心とする世界最大級のガス田「マーセラス・シェール」周辺の141カ所で井戸水を採取。分析すると115カ所で天然ガスの主成分のメタンを検出した。(47NEWS 2013/6/25 4:00)
シェールガスとは、地下数百~数千メートルの頁岩(けつがん)層(シェール層)に含まれているガス。主成分はメタンで、LNG(液化天然ガス)と変わらないが、従来のガス田とは異なる場所にあるため、砂岩層に含まれるタイトサンドガス、石炭層に含まれるコールベッドメタン(CBM)と共に、「非在来型天然ガス」と呼ばれる。(コトバンク「知恵蔵2013」より)
シェールガスの採掘が急速に進んだ背景のひとつとして、「水圧破砕法」(フラッキング)の技術が進歩したことがある。頁岩層は固い岩盤で、従来の垂直に掘った井戸(垂直井)で採掘すると生産効率が非常に悪くコストがかさむ。しかし、水平に掘り進める水平井の技術が進んだことにより、高圧の水や化学薬品を注入し、人工的につくった割れ目からガスを取り出す水圧破砕法が容易になり、生産コストを大幅に下げることが可能になった。
しかし、この破砕で使用する大量の水や化学薬品、地中に漏出したメタンなどが水源や土壌を汚染する危険性も指摘されていた。共同通信は次のように伝えている。
チームは「化学物質を含む水を高圧で地中に送り込む採掘法に問題があり、地中の岩盤を伝って逃げ出したガスが飲み水を汚染している可能性がある」と指摘している。(47NEWS 2013/6/25 4:00)
これまで石油に依存していた米国が、自国内で世界2位の埋蔵量をもつシェールガスによってエネルギーの確保と大量の雇用を可能にしたことから「シェールガス革命」という言葉まで生まれている。しかし、生産の拡大で天然ガスの価格が下落したことにより、シェールガス開発会社が破綻に追い込まれるなど、シェールガスの行方に暗雲が立ち込めている。今回指摘された飲み水の汚染問題も、シェールガスの是非を問う論議に一石を投じそうだ。