アスリートの大麻使用禁止は妥当なのか、それとも時代遅れなのか。
東京オリンピック陸上女子100メートルへの出場が決まっていたアメリカのシャカリ・リチャードソン選手が、大麻陽性で同種目への出場が禁止になった。
このことを巡り、アメリカではスポーツ選手の大麻使用禁止ルールに対する議論が起きている。
母の死に対処するために大麻が必要だった
リチャードソン選手は6月に開かれた選考大会を10秒86の記録で制し、東京オリンピック陸上女子100メートル代表に選ばれた。
しかしアメリカアンチドーピング機関は7月2日、リチャードソン選手が大麻陽性で30日間の競技大会出場停止を受け入れたと発表した。
リチャードソン選手は、大麻の使用を認めており、2日に出演したNBCの番組で「自分の行動の責任を取りたいと思っています」「自分がやったこと、やらなければいけなかったこと、やってはいけなかったこともわかっています。それでも私は使うことを決めました」と語った。
リチャードソン選手によると、大麻は精神的につらい時期を乗り切るために使用した。
同選手は番組で、6月の選考大会の1週間前に産みの母親が亡くなったことを明かした。そしてそのショックで感情的なパニック状態になり、対処するために使用禁止と知りつつも大麻を使ったと述べた。
リチャードソン選手は7月1日に「私は人間です」とツイートしており、番組でも「私を批判しないで下さい。私だって人間なんです。あなたと同じです。たまたま少し足が速いだけです」と語った。
ルールは「時代遅れ」という意見も
アメリカでは現在、18の州とワシントンD.C.で嗜好用マリファナの使用が認められている。リチャードソン選手が大麻を使ったオレゴン州では、2015年に認められた。
一方、世界アンチドーピング機関やアメリカ陸上競技連盟は、大麻を使用禁止物質にしている。
リチャードソン選手の東京オリンピック100メートル出場禁止が報じられた後、アスリートや政治家、俳優など様々な人たちがルールへの異議を唱え、リチャードソン選手をサポートした。
平昌オリンピックのフィギュアスケート団体銅メダリストのアダム・リッポン氏は「大麻を使用禁止物質にするのは時代遅れで不公平に思える」とツイート。
さらに大麻愛好家として知られる俳優のセス・ローゲン氏は、「大麻が問題のある“ドラッグ”だという考えは、人種差別に根ざしている」「もし大麻で足が速くなるのなら、私は今頃フローレンス・ジョイナー(女子陸上100メートルと200メートルの世界記録保持者)になっているだろう」とコメントした。
また、リチャードソン選手のスポンサーであるナイキは「私たちは正直さと責任を受け入れるシャカリの姿勢を称賛します。引き続き彼女をサポートします」という声明を出している。
バイデン大統領も「ルールはルールである」としつつも、責任を受け入れるリチャードソン選手の態度を高く評価した。
リチャードソン氏の30日間の出場停止がスタートしたのは6月28日。女子陸上100メートルでの出場は難しいと見られているが、400メートルリレーの代表に選ばれた場合、出場の可能性は残っている。