ワリエワ選手の出場継続は“ダブスタ”。大麻で東京五輪参加を禁じられた選手が批判「肌の色次第」

大麻陽性で、東京オリンピックに参加できなかったシャカリ・リチャードソン選手。異なる扱いは人種差別ではないかと訴えています
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(左から)シャカリ・リチャードソン選手とカミラ・ワリエワ選手
Getty

ドーピング検査で陽性が出たフィギュアスケートのカミラ・ワリエワ選手について、スポーツ仲裁裁判所(CAS)は2月14日、北京五輪での出場継続を認める判断を示した

この判断を、大麻使用で2021年の東京オリンピック出場が禁止になったアメリカのシャカリ・リチャードソン選手が、ダブルスタンダードだと指摘している。

リチャードソン選手は、CASの判決後に投稿したツイートで、「彼女と私の違いについて、説明があるのか」と「なぜ12月の検査が今公表されたのか」と疑問を投げかけると同時に、人種差別だと批判した。

リチャードソン選手のツイート:「彼女と私の状況の違いについて、何か説明があるのでしょうか。私は母が亡くなって走れなくなり、そして3位以内になるだろうと言われていた。違いは、私が黒人の若い女性だということだけだと思う」

「すべては肌の色次第」

「ちなみにTHC(編注:大麻に含まれるテトラヒドロカンナビノール)でパフォーマンスは向上しません!!!!」

「12月に検査して、それが知らされたのは今。私の結果は1週間以内に公表され、私の名前と才能はめちゃくちゃにされた」

リチャードソン選手は、陸上女子100メートルで東京オリンピックへの出場が決まっていた。

しかし2021年7月に大麻陽性で30日間の競技大会出場停止になり、東京五輪に参加できなくなった

リチャードソン選手は大麻使用を認め、「選考会の1週間前に産みの母親が亡くなってショックを受け、精神的につらい時期を乗り切るために大麻を使った」と服用理由を説明した。

元フィギュアスケーターたちからも疑問の声

ワリエワ選手がドーピング検査で陽性だったことが明らかになったのは、北京オリンピック期間中だった。

ITA(国際テスト機関)によると、検査は2021年12月に実施されたもので、結果が2月8日に検査機関から届いた。陽性反応が出たのは、WADA(世界アンチドーピング機構)が禁止薬物としている「トリメタジジン」だったという。

この結果を受けてRUSADA(ロシアアンチドーピング機構)はワリエワ選手を一時的に資格停止処分としたものの、ワリエワ選手側からの抗議が認められて処分を解除。IOCなどがこの決定を不服として、CASに申し立てをしていた。

CASは、ワリエワ選手の出場継続を認めた理由について、世界アンチ・ドーピング規程で16歳に達していない者は「要保護者」にあたることなどを挙げ、「競技者の出場を阻止することは、彼女に回復不能な損害を与えるであろうことを考慮した」と述べた。

しかしこの決定を、複数の現役や元フィギュアスケート選手が「他の選手たちに不公平だ」と声を上げている。

元カナダ代表のメーガン・デュハメル氏は、「こんな決定で、誰が女子競技を真剣に捉えることができるだろう。違法な薬と不正使用は問題ないと言われたのです。それがスポーツだというのなら、私は関わりを持ちたくない。2022年2月14日。オリンピック精神が死んだ日」とツイートしている。

また、アメリカのアシュリー・ワグナー選手は「ショックで、がっかりしていて、恥ずかしく、そして怒ってます。これでは形ばかりのクリーンな競争になる。そして18歳以下なら、クリーンは意味が異なるということを強調している。このオリンピックや競技に参加しているクリーンなアスリートにとって、とても不公平だ」と述べている

CASの判決を受け、IOCは参加継続を認めたものの、ROCが1位になったフィギュアスケート団体戦のメダル授与式は五輪期間中は開催せず、女子シングルでワリエワ選手が上位3位になった場合もメダル授与式を行わない方針を示した。

デュハメル氏は、2位と3位だったアメリカと日本の選手のためにも、団体戦のメダル授与式を開いて欲しいと訴えている。