私は仕事柄、若い人たちの前で話をする機会がときどきあるのですが、特に最近は、「はたして自分はこの人たちにどういう日本を引き継いでいけるのだろうか?」と思うことがしきりです。
米国の神学者ラインホールド・ニーバーは、「神よ、変えることのできるものを変える勇気と、変えることのできないものを受け入れる冷静さと、そして両者を識別する知恵をわれらに与えたまえ」という至言をのこしています。
私は、戦後七十年の歴史を振り返り、そして今目の前にある大きな論争をみるとき、このニーバーの祈りの「両者を識別する知恵」がいかに大事なものであるかを痛感します。
オイルショックで税収構造が一変して以降も四十年余り積み上げ続けてきた財政赤字は既に一千兆円を突破し、なおも増え続けています。
このツケを負わされるのは、今の若者たち・子供たちであり、またこれから生まれてくる未来の世代です。本来変えるべきであった支出構造の問題を先送りし続けてきたからです。
その一方で私たちは変えてはならないものを変えてしまおうとしているのではないでしょうか。
長期雇用で仕事に打ち込み、将来展望のある生活設計を持つ生き方。
あるいは、歴史的経過を踏まえた平和憲法を基本とする安全保障政策...。
将来世代への責任は重大です。
【こちらの記事は7月3日に東京新聞・中日新聞にて掲載された神津事務局長のコラムをご紹介しております。】