安倍晋三首相が国会質疑で自衛隊を「我が軍」と述べたことに対し、野党が批判するなど波紋が広がっている。そもそも何が問題なのか。
発端は、3月20日の参院予算委員会。安倍首相は、維新の党の真山勇一氏から自衛隊の訓練の目的を尋ねられたのに対し、「我が軍の透明性を上げていく、ということにおいては、大きな成果を上げているんだろうと思います」と語った。さらに「自衛隊は規律がしっかりしている。しっかりとした責任感と規律の下に、平和に貢献しようとしていることが多くの国々によく理解されているのではないかと思います」と続けた。
憲法九条は「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と定める。さらに自衛隊について、2006年の安倍第一次内閣の答弁書は「通常の観念で考えられる軍隊とは異なる」との次のような見解を示している。
軍隊については、その定義が一義的に定まっているわけではないと承知しているが、自衛隊は、外国による侵略に対し、我が国を防衛する任務を有するものの、憲法上自衛のための必要最小限度を超える実力を保持し得ない等の制約を課せられており、通常の観念で考えられる軍隊とは異なるものと考えている。
憲法第九条第二項は「陸海空軍その他の戦力」の保持を禁止しているが、これは、自衛のための必要最小限度を超える実力を保持することを禁止する趣旨のものであると解している。自衛隊は、我が国を防衛するための必要最小限度の実力組織であるから、同項で保持することが禁止されている「陸海空軍その他の戦力」には当たらない。
(防衛省・自衛隊:軍隊、戦力等の定義に関する質問に対する答弁書 2006/12/01)
一方、自民党が2012年に発表した憲法改正草案には「国防軍」の創設が盛り込まれている。
この安倍首相の「我が軍」発言に対し、野党からは批判が相次いでいる。
民主党の細野豪志政調会長は24日の会見で「これまで自衛隊という形で、憲法の枠組みの中で積み上げた議論を全部ひっくり返すような話だ。非常に理解に苦しむ」「(首相は安全保障法制の)与党合意ができて、前のめりになっているのかもしれない」などと批判。さらにこの問題について国会で追及する考えを示している。
また、維新の党の松野頼久幹事長も記者団に「あくまで我が国は自衛隊だ。不安をあおるような言い回しは、気をつけるべきだ」と指摘した。
ちなみに、自衛隊の公式な英訳名称は「Japan Self-Defense Forces」で直訳すれば「日本国の自衛軍」とも受け取られ、日本国の実質的な国軍であるととらえる見方は少なくない。
この問題について、Twitterでは次のような声が出ている。
次世代の党の和田政宗・参院議員は次の通り記している。
参院予算員会では16日、三原じゅん子議員が質問のなかで、「八紘一宇(はっこういちう)は大切にしてきた価値観」と発言、これも問題視された。
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