人に「生産性がない」というのは「政治ではなくヘイト」。自民党・武井俊輔議員に聞いた

杉田水脈議員の「LGBTの人たちは『生産性』がない」という寄稿が物議を醸している
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自民党宏池会の武井俊輔衆院議員(宮崎1区)が7月19日、自身のTwitterで「生産性のない人間などいません。劣情を煽るのは政治ではなくヘイト」と書いた投稿が、話題を呼んでいる。

武井議員はハフポストの取材に対し、特定の人に対し「生産性がない」とする考えについて「危機感を覚える。生産性のない人間だと人を断ずるのは、社会で生きている価値がないと言っているのと同じ。この考えは越えてはいけない一線を越え、相手を傷つけるもので、様々な立場の少数者の方々を差別・排除する構造と似ている」と語った。

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武井俊輔衆院議員(宮崎1区)
時事通信

また、投稿した経緯については「ネット上を見ていても、このような考えを少なからず称賛する意見があり、これは危ないと思った。自民党にも多様な意見があることを知ってもらいたかった。できるだけ大きな網を張って、そこから漏れる人がいないように政策を考えていくのが保守だと思う」と説明した。

そのうえで「個人攻撃になったり、ヘイトと同じような文脈になってしまっては本意ではないので、どの発言を念頭に置いて投稿したかは明言を避けたい。ただ多様性を認めない、重んじないのは私の考える保守のあり方とは違う」と話した。

「生産性がない」?

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新潮45に掲載された杉田水脈議員の寄稿文
HUFFPOST JAPAN

7月18日発売の「新潮45」2018年8月号への寄稿「『LGBT』支援の度が過ぎる」で、自民党の杉田水脈衆院議員(比例・中国ブロック)は「LGBTだからといって、実際そんなに差別されているものでしょうか」として、LGBTへの差別を解消する動きについて疑問を呈した。

また、「LGBTのカップルのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか。彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がないのです」「なぜ男と女、二つの性だけではいけないのでしょう」などと持論を展開した。

この寄稿へは批判が相次いだ。

LGBT関連の法整備を求める団体でつくる「LGBT法連合会」は、7月23日に抗議声明を発表。日本のLGBT当事者が、 学校や職場、医療面や地域など様々な場面で差別を受けていることは、同会の調査や内閣府の世論調査でも明らかだと指摘。自民党が2016年にまとめた「性的指向・性自認の多様なあり方を受容する社会を目指すためのわが党の基本的な考え方」でも、党の取り組みとして「当事者の方が抱える困難の解消をまず目指すべきである」とされていると反論した。

また、「生産性」を引き合いに出す主張については、人権の観点などから「問題」だと非難。そして、現実に存在する「性の多様性」を無視し、与野党、並びに行政や各種団体が進めている施策の実施に反するもので、「国会議員としての氏の資質に疑問を抱かざるを得ない」と批判した。

杉田議員は、寄稿後にネット上などで批判を受けた後も「 LGBTの理解促進を担当している先輩議員が『雑誌の記事を全部読んだら、きちんと理解しているし、党の立場も配慮して言葉も選んで書いている。言葉足らずで誤解される所はあるかもしれないけど問題ないから』と、仰ってくれました。自民党の懐の深さを感じます 」などとツイート。

さらに「自民党に入って良かったなぁと思うこと。『ネットで叩かれてるけど、大丈夫?』とか『間違ったこと言ってないんだから、胸張ってればいいよ』とか『杉田さんはそのままでいいからね』とか、大臣クラスの方を始め、先輩方が声をかけてくださること」とも投稿した。

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Twitterや寄稿した論文が物議を醸している杉田水脈衆院議員(比例・中国ブロック)
時事通信

ただし、自民党内には、まったく違う議論もある。

自民党の「基本的な考え方」では、「現状と課題」のなかで、性的指向・性自認の多様なあり方について、社会の理解が進んでいるとは必ずしも言えないとして、いまだにいじめや差別などの対象とされやすい現実があると指摘している。

また、杉田議員は寄稿で、「LGBは、性的嗜好の話です。以前にも書いたことがありますが、私は中高一貫の女子高で、まわりに男性がいませんでした。女子高では、同級生や先輩といった女性が疑似恋愛の対象になります。ただ、それは一過性のもので、成長するにつれ、みんな男性と恋愛して、普通に結婚していきました。マスメディアが『多様性の時代だから、女性(男性)が女性(男性)を好きになっても当然』と報道することがいいことなのかどうか」「『常識』や『普通であること』を見失っていく社会は、『秩序』がなくなり、いずれ崩壊していくことにもなりかねません。私は日本をそうした社会にしたくありません」などと主張していた。

しかし、自民党の「性的指向・性自認に関する特命委員会」は当事者たちへのヒアリングの結果、「さまざまな侮蔑的な表現や『~であることが普通』といった表現により人知れず傷つくことが多い」ことが明らかになったとしている。

このような中、杉田議員は7月23日、一転してこれらのツイートを削除。「殺人予告」が届いたため、「一連のLGBTに関連する投稿は全て削除いたしました」と説明した。

北海道に旅立つ前に赤坂警察署に来ました。先日、自分はゲイだと名乗る人間から事務所のメールに「お前を殺してやる!絶対に殺してやる!」と殺人予告が届きました。これに対して被害届を出しました。警察と相談の上、一連のLGBTに関連する投稿は全て削除いたしました。 pic.twitter.com/DJH7fzrrjc

— 杉田 水脈 (@miosugita) 2018年7月23日

杉田議員の事務所はハフポストの取材に対し、「警察に対応を任せているので、コメントできない」と述べた。