SDGsという言葉を耳にする機会が増えた今。あなたの暮らしに変化はあっただろうか? ハフポスト日本版では、Twitterアンケートを実施。「現在、サステイナブルな暮らしをできていると思いますか?」という質問に対して、「とてもそう思う」と答えた人は、わずか4.8%だった。
一方、「あまりそう思わない」(46.8%)「全くそう思わない」(34.6%)と答えた人は、81.4%に。やはり、サステイナブルな暮らしの実践は容易ではないようだ。
「無理せず、暮らしの中でサステイナブルな取り組みができたら…」筆者は、そんな思いを抱く30代女性。ヒントを求めてやってきたのが、生協の1つ「生活クラブ」が運営するスーパーマーケット「デポー」だ。
SDGsという言葉が生まれる、はるか前からサステイナブルな取り組みを実践してきた。2015年からは「サステイナブルなひと、生活クラブ」をスローガンに掲げ、いま注目を集めている。
その活動の数々や独自の運営スタイルを探るべく、神奈川県の「つなしまデポー」を訪ねた。
■90%がオリジナル品。生活クラブ「デポー」とは?
生活クラブの設立は、今から50年以上前となる1965年。当時、消費者を苦しめた牛乳の値上げに対抗し、びん牛乳を200人の母親たちが共同購入したことが始まりだ。
その後、組合員たちは食の安全や環境問題、サステイナビリティなどの勉強を開始。やがて「自分たちが本当に欲しいモノや仕組みを、組合員たち自身でつくる」という、独自の運営体制を築いていった。
結果、現在、約90%がオリジナル品に。サステイナブルな取り組み、そして味や素材へのこだわりが評判を呼び、生活クラブの組合員数は約42万人にまで増加した。生活クラブは宅配利用がメインだが、さらなるニーズに応えるべく、1982年から実店舗の「デポー」を展開してきた。
■家庭ごみの容積の約60%を占める、“あのごみ”を減らす
「つなしまデポー」の店舗でまず目についたのが、ずらりと揃った調味料の容器。よく見ると、調味料やジュースなど、種類に関わらず規格が統一されているものが多い。
実は、家庭ごみの容積の約60%が「容器や包材によるごみ」といわれている(*2)のをご存知だろうか。生活クラブでは、時代に先駆け90年代から、容器の規格統一を本格化。中身の違うものでも、できるだけ容器を揃えることで、リユース率のアップを図ってきた。
店舗の外には、リユース・リサイクル品の回収コーナーが。びん類のほか、紙製の卵ケースなども対象になっているのが印象的だ。この取り組みによって、2021年度には生活クラブ全体で2605トン(東京ドーム約1.1個分)のCO₂排出量の削減に成功した。
さらに、家庭で余っている食べ物を寄付できるフードドライブ、古着の回収・無料譲渡など、店舗を見渡せば、いたるところにサステイナブルな取り組みが。驚くことに、これらの多くは、店舗スタッフではなく、組合員たちの発案によるという。
■“雑談”から始まる、組合員発の改革
そんな組合員の想いを受けて2022年8月から始まったのが、ハンドソープ、ボディシャンプーなど液体せっけんの量り売りだ。実現に向けては、デポーの組合員が取り組みに向けた話し合いを重ねた。
提案者の1人、組合員の植木景子さんは、その理由をこう語る。「生活クラブの勉強会で、プラスチックごみによる海洋汚染を知ったんです。ショックを受けると同時に、私たち自身にできるアクションはなにか? 他の組合員と模索しました」。
例えば店頭の10kg規格のハンドソープ1つで元の包材の38袋分(58.2%)を削減する目安だ(*1)。支持が広がれば、大きな効果が期待できる。
組合員たちによる、ごみ削減のアイディアは尽きない。
「野菜はできるだけ新聞紙の袋に入れて販売」「鮮魚の購入用に、マイ容器の持参を推奨」など、次々と新たなアイデアが取り入れられている。
「こういった取り組みは、組合員同士の“たわいない雑談”から始まることが多いんです。みんなの発案や協力があってこそできること。デポーは私たちのアイデアを尊重してくれるから、もっとやってみようと思えるんです」と植木さんは教えてくれた。
■「余すことなく利用」にこだわりも。気になる人気の品物は?
さて、ここで気になるのが、実際の品物の味や質では? 店舗マネージャー・米倉美輝子さんによると、人気は設立時から続く「パスチャライズド牛乳」や平田牧場の「豚肉」、国産トマト100%の「トマトケチャップ」。
オリジナル品の「パスチャライズド牛乳」は、牛乳本来の風味やおいしさ・栄養を損なわないよう、72℃15秒間のパスチャライズド殺菌処理をされたもの。熱による成分の変性が少なく、さらっとしてほんのり甘みのあるのが特長だ。「味の違いは、子どもたちの飲み方でわかる。そんな声をよくいただきます」(米倉さん)。
平田牧場の豚肉は、独特の甘味やうま味のある脂身が特長だ。
飼料に工夫を重ねているのはもちろん、豚がストレスを抱えにくい環境づくりも大切にしている。豚や牛はヒレ、ロース、バラなど特定の部位に偏らず、一頭をまんべんなく食べきるという考え方をしているのも他店と異なる。
「一頭余すことなく利用して、フードロスの削減につなげています」(米倉さん)。
■共働き世帯に嬉しい、ミールキットや冷凍食品も拡充
生活クラブは、近年、共働きの世帯などに向けてミールキットや冷凍食品も拡充している。
ミールキットの「ビオサポ食材セット」は、食の安全を大切にしつつ、10分程度で本格的な料理ができるように開発された。
冷凍食品も、やさしい味わいとシンプルな素材にこだわりが。パッケージもとてもシンプル。「外見より“中身”に手間暇かける、生活クラブらしさが出ています」(米倉さん)。
■11月末まで、お肉や野菜をプレゼント
50年以上前から、サステイナブルな暮らしを目指してきた生活クラブ。筆者がデポーを訪れて、一番驚かされたのは、組合員、スタッフたちの熱意と提案力だ。「暮らしの中で、無理せずサステイナブルな工夫をしたい」。そんな人たちに向けた取り組みが、デポーにはあふれている。
デポー各店では、2022年11月末まで、デポーがはじめての人に、おすすめのお肉や野菜を無料でプレゼントするキャンペーンも実施。組合員でなくても対象なので、まずはお近くの店舗をのぞいてみてほしい。
生活クラブ デポー
生活クラブ連合会
*1:削減量は、それぞれの包材重量合計で換算
*2:環境省「容器包装廃棄物の使用・排出実態調査の概要(令和元年度)」
(撮影:西田香織 / 取材・文:磯村かおり)