イラストレーターで制服研究者の森伸之さんが、「令和」の時代の制服を予想するイラストを描いた。AbemaTVの依頼で描いたもので、自身のTwitterでも公表している。
森さんが描いたのは、架空の学校の制服だ。緑がかった灰色のジャケットと靴下が印象的なシックなデザインだ。
モチーフにしたのはスコットランドの民族衣装。それには理由がある。
「昨年頃から性別に関係なくスラックスやスカートを選べる制服についての報道が増えた。しかし、女子がスラックスをはいている写真があっても、男子がスカートをはく写真は見かけない。そこに疑問を持った」「性別違和を感じている人に限らず、スカートをはきたい男の子もいるはず」
男子も「スカート」をはきやすく
しかし、「男子がスカートをはくのに垣根が高いのも分かる」。そこで、垣根を「下げる」デザインのモチーフとして「キルト」を選んだ。
キルトとはスコットランドの民族衣装で、男性が着る膝丈のタータン地の巻きスカート状の衣服だ。
「『男性用の物だから、男の子が着てもおかしくない』という、心理的垣根を下げる『理屈』です」
イラストの制服もタータン地のキルトにし、民族衣装を思わせるリボン付きの靴下どめで固定したハイソックス姿にした。
ジャケットと同色のスラックスも準備し、男女ともにキルトとスラックスの両方から選べるようにと考えた。
「制服を大事にしている学校も多く、令和の時代も制服はなくならないと思う。制服があることを前提に、色んな人にとって学校生活が少しでも楽に、楽しくなることが求められているんじゃないか。制服メーカーや学校も模索している中、外野から一つの思考実験として提案してみました」
膝丈スカートにリュック・・・。「らしさ」から自由になった女の子たち
イラストの高校生は、大きめのリュックを背負っており、キルトは膝丈だ。近年の女子高校生のトレンドを反映している。
「リュックは体への負担が少なく、私学を中心に学校指定のリュックも増えている。合理的な選択として定番化していくと思います」
最近の女子高校生には、短めの靴下、スニーカーといったカジュアルな装いが流行している。
森さんは「『女子高校生はこういうスタイルでなければいけない』という女子高校生の中にあったドレスコードが緩くなった」と説明する。
1994年ごろに起きた「コギャルブーム」によって、女子高校生といえば「肩掛けのスクールバッグ」「短めのスカート」「足元はローファー」といった「ドレスコード」が定番化したという。
だが、森さんによると東京で黒タイツが流行した2009年ごろから「女子高校生が無理をしなくなった」と感じるようになったという。
「コギャルブームのころの『見られている』という自意識が薄くなってきたことと、『“らしさ”を他人に過剰に求めるのはどうなの?』という考えが広まっていったことが関係していると思う」
それが、近年のスニーカーや長めスカートの普及にもつながっているのではないかとみている。
平成の制服を振り返る
森さんが監修を務める「ニッポン制服百年史 女学生服がポップカルチャーになった!」が6月30日まで東京都文京区の弥生美術館で開催されている。大正、昭和、平成の様々な制服デザインや着こなしを振り返る展示だ。
平成の女子校制服の変遷と女子文化をイラストでたどる森さんの著書「平成女子高制服クロニクル」(河出書房新社)も発売中だ。