安全保障についての質疑で高い評価を受ける

海外に派遣中の自衛隊がもし命令違反をしたり、勝手な行動をした場合はどのような処罰を受けるのかについて質疑しました。
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時事通信社

安全保障についての質疑で高い評価を受ける~政府も自衛隊法の不備を認める~

Q1 安全保障や防衛関係の法整備に焦点が当たっている中で水野さんの3月20日の予算委員会質疑が評価されていますね。どういったことを取り上げたのですか?

水野 安倍首相は海外でも自衛隊を積極的に活用していこうとする方針を打ち出していますが、海外に派遣中の自衛隊がもし命令違反をしたり、勝手な行動をした場合はどのような処罰を受けるのかについて質疑しました。日本国内でそうしたことをすれば当然、自衛隊法違反として処罰されるわけですが、日本の法律は原則として国内でしか適用されません。そこで海外派遣中の場合はどうなのかを質問したわけです。政府側の答弁は「海外にいる自衛隊がそうした違反行為をしても法律上は処罰されない」ということでした。そこで、そんなことで良いのかと追及したわけです。

・注)『サンデー毎日』4月19日号の「倉重篤郎のサンデー時評」では2ページにわたってこの質疑について取り上げている。

Q2 戦前の満州事変などでは関東軍と呼ばれた現地の日本陸軍が政府の命令に服さずに暴走をしましたよね。それによって戦争が拡大したわけですが、もしそうしたことを今、起こしたとしても法律上の罰則は何もかかってこないのですか?

水野 そういうことになります。もちろん戦前と今では状況は違いますが、本国の指揮から離れて勝手な行動をとることは絶対に許されません。そんなことを許したら文民統制(シビリアンコントロール)は崩壊してしまいます。まして今後の自衛隊派遣では人質の救出作戦なども念頭に置いているようです。従来のPKOのように道路修繕や給水活動などではなく、人命に関わる作戦を遂行するとなると「何千キロも離れている東京では現場のことは分からない」として現地部隊が独断で行動をする危険性が高まります。私は自衛隊の活用を広げることに必ずしも反対ではありませんが、一方で勝手な行動は許さないというメリハリをしっかりとつける必要があると思います。

注)関東軍

戦前、中国の満州地方に駐屯していた日本陸軍。関東軍の名称は日本の関東地方のことではなく当時の中国の関東州(旅順・大連などで現在は遼寧省)に由来する。張作霖爆殺事件、満州事変、ノモンハン事変などの時に当時の政府や陸軍中央の方針に必ずしも服さず、暴走したという批判を浴びる。

Q3 海外派遣中の自衛隊が仮に暴走・独走しても法律上何の処分も無いというのは驚きです。なぜそうした大切なことが議論されていなかったのですか?

水野 自衛隊法は60年以上前の1954年に出来た法律ですから当時は海外に派遣されることなど想定していなかったのでしょう。その後PKO活動などで1991年から海外に出るようになりましたが、その時も見落とされていた観点でした。今回私が取り上げたことによって、自衛隊法に国外犯規定を設ける方向になりました。最初は国会答弁でも「綱紀粛正に努めるから大丈夫です」と法改正に難色を示していましたが、追及していくと現行法の不備を認めざるをえなくなり、方針転換をしました。綱紀粛正と言っていてもそれを守らない人がいるからしっかりとした罰則を設ける必要があるのです。

注)国外犯

日本国内で日本の法律に違反すれば犯罪として処罰することが可能だが、海外で日本の法律に違反しても普通は日本で処罰されることはない。しかし特別に国外犯として法律に規定してある場合には、海外でそれを行った日本人が帰国後に日本で処罰することも可能になる。例えば殺人や傷害は刑法3条に国外犯の規定がある。有名な例では1980年代の「ロス疑惑」は米国ロサンゼルスでの銃撃・殴打事件だったが、国外犯規定に基づいて容疑者は日本で逮捕された(殴打事件は有罪、銃撃事件は無罪が確定)。しかし自衛隊法違反には国外犯規定はなかった。

Q4 安全保障政策が国会論戦の中心になっていますが、水野さんはどのように考えますか?

水野 「自衛隊の海外派遣は絶対反対」とか「平和憲法を掲げてさえいれば平和は守れる」という立場には立ちません。しかし武力の行使はできる限り抑制的であるべきで、行け行けドンドンにならないような歯止めの議論をしっかりと行う必要があります。政府が国会に提出した安全保障関連法案は11本の法律を改正して1本の新法を制定するという盛り沢山なものです。一つ一つについて丁寧な議論が必要であり強行採決などは避けるべきだと思います。

(2015年5月29日「けんいちブログ」より転載)