国の安全保障に関する情報を漏らした公務員らの罰則強化を狙い、国会で審議が続く特定特定秘密保護法案。批判の声が日に日に高まっている。
米紙ニューヨーク・タイムズは10月29日付の社説で「日本の偏狭な秘密法」と題し、以下のように批判した。
日本政府は特定秘密保護法を成立させようとしているが、これは国民の知る権利を根底から覆すものだ。この法律はすべての閣僚に、国防や外交、スパイやテロ防止に関する情報を機密扱いにする権限を与える。しかし何をもって秘密とするかのガイドラインはない。この定義がないことで、政府は不都合な情報をすべて秘密に指定できる。
(中略)
安倍氏はこの法律を、米国流の安全保障会議を立ち上げるのに必要だからとしている。(中略)この動きは、安倍政権が中国に対してとってきた敵対的な態度や、タカ派的外交政策を反映している。それは市民の自由を制限し、北東アジアにおける日本政府への不信を招きかねない。
(NYTimes.com:Japan's Illiberal Secrecy Law より 2013/10/29)
ジャーナリストの田原総一朗さん、鳥越俊太郎さんらも11月11日「廃案にすべきだ」と声を上げた。
フリージャーナリストらでつくる「自由報道協会」も11月12日に反対声明を出している。
国会に提出されている法案では、行政府が勝手に秘密を特定し、司法からも立法からもチェックされない仕組みになっています。もちろんジャーナリズムが立ち入ることもできません。秘密とされる範囲も広く、何が秘密とされたかもわかりません。さらに、先進国ならどこでにでもある秘密解除規定が甘く、ひとたび秘密に指定されると永遠に開示されない恐れもあります。法案には「国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分配慮しなければならない」という規定もありますが、もともと憲法で保障されている権利を行政府が「配慮する」というところが、この法律の本質を表していると考えます。
健全な民主主義社会の形成には健全なジャーナリズムの存在が不可欠なことはいまさら言うまでもありません。そんな誰にでもわかる民主主義の基本の「キ」を否定する法律であることが明らかです。私たちは強く強く反対します。
(公益社団法人自由報道協会「【緊急声明】私たちは「特定秘密保護法」に強く強く反対します。」より 2013/11/12)
■コメント欄も懸念相次ぐ
ハフポスト日本版の関連記事にも懸念するコメントが増えている。
「特定秘密保護法」の制定理由を、
日米同盟の強化のためと言うのは詭弁。
「霞が関の失態」を隠すためだろう。
(taga-kyo)
「秘密保護法で『特定秘密』に指定されてしまうと、その情報は公開され」ないおそれがあることと、さらに、「その情報を知ろうとすること自体が処罰されるかもしれない、というプレッシャーを私たちの誰もが負う」ことになるという危険性はあると思う。
秘密保護規程に違反した方を裁く法律が必要であるのと同様に、秘密指定の誤用・乱用があった場合は、誤用・乱用を行った方やそれをチェックした機関にも、同程度の刑罰や罰則が必要ではないでしょうか。
こんな法律があろうがなかろうが、報道にさほど影響はないだろう。
それは「秘密」と指定されていない現在でさえ、報道機関が国民の知りたいことを正しく伝えているとは思えないからだ。
震災関連で言えば、復興を叫びながらも恐怖を煽る情報ばかりで被災者が安心できる情報はごく少ない。政治関連で言えば、誰と誰が食事をしたなどという政局ばかり追うのが政治記者で、政策の中身はほとんど伝えられず、国会で審議された法案の数ですら伝えられることが少ない。
■メディアにも批判
一方でネット上では、特定秘密保護法案の審議の動きを伝える大手メディアへの不信の声もある。
31日(木)、首相官邸前で、政府が22日(金)に閣議決定した特定秘密保護法案に反対する集会が行われた。市民らの抗議の声は政府だけでなく大手既存メディアにも向けられ、「報道機関は『知ってなんぼ、知らせてなんぼ』。閣議決定されてから反対するのはアリバイ作りだ」との声があがった。
(IWJ Independent Web Journal「秘密保護法 大手メディアの反対は「所詮アリバイ作り」より 2013/10/31)
【※特定秘密保護法は、民主主義や「知る権利」の根幹に関わると思いますか。あなたのご意見をコメント欄にお寄せ下さい。】
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