脅迫被害を受けたSEALDs奥田愛基くんへ、20代政治家志望者からの手紙

「政治の世界で生きていく」ことは非常に難しい世界ですが、政治への参加意識が高い学生が、政治の世界から離れていかないことを祈っています。
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安保法案が可決されたと思ったところ、SEALDsの奥田愛基くんへ脅迫状が届いたようです。

安保法案が落ち着いたところ、というタイミングから見て、奥田愛基くん個人を潰そうとしているのだな、と思いました。

安保法案が可決される前に脅迫状が出されますと、

賛成派は、「やり過ぎ!」

反対派は、「激おこ!」

となって、賛成派を失い、反対派を盛り上げてしまう燃料になりかねないからです。

一段落した段階では、もう安保法案への直接的な影響は少ないので、個人攻撃するのでしょう。

どのように対応していくのか、そして、今後も同じような脅迫が続くのか...

僕は、今後の奥田愛基くんの身の振り方が気になって仕方ありません。

というのも、いま27歳で、国会議員になることを目指している僕も、奥田くんと同じく、大学4年生のときにデモを主催したことが、政治の道を具体的に目指すきっかけになったからです。

僕が大学4年生のときは、2011年。

リーマン・ショックの影響で学生の就職率が急激に悪化したときでした。

内定が出ないために留年する「就職留年」という言葉や、就活が原因でうつ病になる「就活鬱」といった言葉が使われ始めた時期です。

代々木公園の野外ステージを貸しきって、「フェス」のようなデモを行なったり、道路申請も取り、スクランブル交差点近くでパレードも行いました。

そして、最初は素朴に「就活ってなんでこんなに学生にとって苦しいんだろう」という疑問からはじまった活動でしたが、

【企業】...就活の長期化、早期化で疲弊

【大学】...学生を就活に奪われ、ゼミが運営できない

など、実は、就活に関わるプレイヤー全員にとってデメリットがあることも分かり、改めてシステムの重要性や、一方的に反対するのではなく代案を出すことの重要性も学ぶことができました。

デモをしていて、一番つらかったのは、「そんなに問題だっていうなら、政治家になって変えればいいじゃん」と言われることです。

これは、デモをしているときから、自分自身でも気付いていることでした。

いくら周りで盛り上げたところで、その影響力は間接的ですし、限定的です。

それに、盛り上げるだけ盛り上げておいて、自分が行動主体にならないことは、一種の「無責任」だと、僕は感じ続けてきました。

奥田くんも、同じ思いを抱えているんじゃないかな、と思っています。

僕はデモを行なったことで、ものすごく、「もどかしさ」を感じはじめたことを覚えています。

その後、IT企業に入り、就労系の問題からは離れましたが、政治活動は行なってきました。

メインは企業での仕事でしたが、休日にネット選挙解禁に向けたキャンペーンを行なったり、Yahoo!やGoogleなどと一緒にネットを使った啓蒙活動を行なってきました。

当事者になれないとしても、多くの人に関心を持ってもらえる啓蒙活動を続けることには、価値があると思っていからです。

しかしそれでも、もどかしさは緩和されるどころか、つのる一方でした。

活動に集中するに従って、最も影響力があり、覚悟も責任もある政治家になりたい!と思いつつも、

・簡単には政治家になれない

・なるためのキャリアパスが見えない

という点をずっと抱えていたからでした。

被選挙権は衆議院では25歳、参議院では30歳。

まず、大学卒業、被選挙権を得る年齢まで何をすればいいのか、どんな仕事をしていくとキャリアアップにつながるのかが全く分かりません。

お金もものすごくかかります。参院比例は供託金だけでも600万円。

事務所代や人件費、ポスターなどの広告費を考えると、6,000万円以上必要だと言われています。

むりむり。(がんばって貯金しています)

それに当選するために10万票が必要で、本気で活動し、街頭演説で思いを多くの人に伝えなければなりません。

企業に勤めながら、空いている時間だけでは絶対にできません。

それに、特定の政党に所属しない限り、全て手探り状態ですので、活動がまともに行えないでしょう。

改めて、日本の選挙制度は新規参入の壁が非常に高いように思えます。

それでも、僕はまだ、政治家になりたいと思いながら試行錯誤し、いまはなんとか政治のはじっこで、片足を入れながら、生活できるようになりました。

大学のとき、具体的に政治家を目指し始めてから、5年目のことです。

SEALDsも、今後は来年の参院選に向けて候補者への応援や落選運動などを行う予定だそうです。

きっとその中でも、「だったらお前が選挙出ろよ!」と言われ続け、その中で「もどかしさ」ももっと強く、感じていくことでしょう。

「政治の世界で生きていく」ことは非常に難しい世界ですが、政治への参加意識が高い学生が、政治の世界から離れていかないことを祈っています。

<増沢諒:食べる政治代表>

1988年長野市出身。早稲田大学卒業後、ITベンチャーでの勤務を経て、現在、東工大大学院修士課程。研究テーマは「ネットと政治」。ネット選挙解禁を目指す活動「One Voice Campaign」をはじめとし、様々な啓蒙活動を展開。2014年マニフェスト大賞受賞。