ハローキティがYouTubeでSDGsの伝道師に。その理由をサンリオに聞いた

SDGsを伝えるためとはいえ、キティは空を飛んだり海に潜ったり。そこまでするのは、キティとサンリオが持ち続けているある想いがあった
|

猫も杓子もSDGs。

そんな中で、ハローキティもSDGsに取り組んでいる。

SDGsは、世界が抱える課題解消を目指すために国連が2015年に採択した目標。環境保全からジェンダー平等、働きがいや経済成長まで17の目標がある。

 キティが目標ごとに興味がある場所へ赴き、「自撮り」で撮影し、自作の歌で締める、という動画をYouTubeへ投稿している。

視聴者と一緒にキティもSDGsを勉強するという内容で、視聴者からは「素直に学ぶ姿勢に感動」「まじキティさん卍(まんじ)」といった声があがっている。

Open Image Modal
YouTubeに投稿した動画内でSDGsについて紹介するキティ
ⓒ1976,2019 SANRIO CO., LTD. 著作(株)サンリオ

現在YouTubeの「ハローキティチャンネル」では、SDGs関連の動画は11本投稿されている。

最新の動画は7月末に投稿された、SDGsの目標の2番「飢餓をゼロに」にまつわるもの。

キティがフードバンクの「セカンドハーベスト・ジャパン」を訪問し、活動の様子や同団体代表へのインタビューを撮影している。 

他にも、渡良瀬遊水池でスカイダイビングをしたり、兵庫県神戸市の舞子浜で、ダイバーらによる海の清掃活動に参加したりしている。 

それぞれ、9番の「産業と技術革新の基盤をつくろう」、14番の「海の豊かさを守ろう」を伝えるため、キティが文字どおり体を張って動画を撮影している。

 キティがSDGsに取り組む理由

なぜキティはそこまでしてSDGsに取り組むのか。

サンリオのマーケティング担当者に聞いた。

 「YouTubeに投稿されている全てキティが興味のあるもの・ことを自分で撮影しているので、なぜ、という部分はキティにしか分かりません。ですがサンリオの企業理念として人は一人では生きていけない、仲間たちと信じ合い、仲良く生きる、というものがあります。SDGsとつながるものがあり、キティとしてもSDGsが大事だと思ってやっているのだと思います」

 どこかから頼まれたわけではなく、キティが独自に行っている活動だという。

ハローキティチャンネルにはSDGs以外にも多数の動画が投稿されているが、「ロケ」に出たのはSDGsの動画が初めてだというのだから、気合の入りようが伝わってくる。

 そもそも「ハローキティチャンネル」は2018年8月30日にYouTubeで配信を開始。

キティが「世界中の人たちにも、自分らしく生きてほしい」という想いを届けるために、自分の趣味や仕事の紹介、また視聴者からのコメントへの返答などを行ってきた。

Open Image Modal
YouTubeに開設したハローキティチャンネルのロゴマーク
ⓒ1976,2019 SANRIO CO., LTD. 著作(株)サンリオ

SDGs動画は、2018年9月20日に第1弾を公開。

その後は月に1回のペースで動画を公開し続けている。

再生回数は他の動画に比べて多いわけではないが、コメントはよく書き込まれている。

「学校でSDGsを習ったけど、キティちゃんの動画のおかげでよく分かった」「大学で教材として使われました」といった報告もあるという。

「キティだからこそ、世代にとらわれずにスッと伝えることが出来るのだと思います」とマーケティング担当者は話す。

 

キティの行動がサンリオ社員にも波及 

Open Image Modal
今年3月に行われた新商品の展示会場に設けられたSDGsコーナー
ⓒ1976,2019 SANRIO CO., LTD. 著作(株)サンリオ

 キティの取り組みを受けて、サンリオも今年3月に行われた新商品説明会の際にSDGsについて知らせる展示を行った。メイン会場の入り口すぐの場所に、目標ごとに色分けされたキティの置物17体を飾り、SDGsをアピールしたところ、来場した取引先からも大きな反響があったという。

また7月には紙ストローも販売を開始。 

Open Image Modal
30本入りで216円(税込)。サンリオオンラインショップでも通販可能。
ⓒ1976,2019 SANRIO CO., LTD. 著作(株)サンリオ

 東京都多摩市のサンリオピューロランドや、大分県速見郡日出町のハーモニーランド内にある一部のレストランでも導入し、年間40万本のプラスチックスとローの削減を見込んでいる。

 「キティが率先して取り組んでいくので、サンリオも会社としてもっともっと、という気持ちになっている」という。

 

国連や外務省へも

SDGs動画では、キティの人脈に驚かさせる。

河野太郎外務大臣や、国連広報センターの根本かおる所長も登場するのだ。

ついにはニューヨークにある国際連合本部に招かれることに。

キティのSDGs動画がきっかけで、日本の外務省が主催するSDGs関連のレセプションパーティに招待されたというのだ。

 レセプションで披露されたキティの英文スピーチは以下の通り。

Hi! I’m Hello Kitty!

(皆さん、こんばんは。キティです!)                        

Thank you very much for coming to our reception. I’m very happy to be here with you today. It’s such a treat!

(本日はレセプションにご来場いただき、ありがとうございます。皆さんにお会いできるのをとっても楽しみにしていました!お会いできて、うれしいです!)

 I’ve been promoting SDGs in Japan since last year. I met with Foreign Minister Taro Kono and had a lovely conversation about SDGs. Now he calls himself Taro Kitty! We even sang a song about Goal 14 together!

(キティは、昨年から、日本でSDGs(持続可能な開発目標)を応援していますが、その活動を通じて河野外務大臣ともSDGsについて素敵なお話をさせていただき、ゴール14番の歌も一緒に歌いました。大臣は自分のことを「タローキティ」って呼んでくれています!)

 I dream of a world where everybody lives happily in harmony. I’d love to see everybody all over the world saying ‘Hello’ to each other with kindness and compassion. 

(キティの夢は…世界中の人たちが平和で仲良くできることです。この地球のどこでも、やさしさと思いやりの気持ちを持って、お互いに『ハロー』と仲良くあいさつできる世界を実現したいです。)

 Let’s make our world brighter, happier and more sustainable together!

(一緒に、世界をもっと明るく、幸せに、サステイナブル(持続可能)にしていきましょう。)

 Please enjoy your evening, everyone! 

(最後になりますが、今夜のレセプション、ぜひ楽しんでくださいね。)

 Thank you!

(ありがとうございました!)

キティの姿勢に学ぶこと

電通が2019年2月に行った調査によると、日本でのSDGsの認知度は全体で16%。

電通が行った別の調査では、世界の20カ国・地域の平均は6割を超えており、日本におけるSDGs認知度の低さは際立っている。

自らユーザー側の視点に立って、SDGsを自分事化し、体験しながら発信しているキティ。 

その姿勢に、私たちも学ぶべき事がたくさんある。

YouTubeのハローキティチャンネルはこちら

健康な地球で、みんなが平等に平和に生きる。

2030年に、それを実現するための目標がSDGs(持続可能な開発目標)です。
ハフポスト「はじめてのSDGs 」では、日本をはじめ世界中の問題や取り組みを紹介。

私たちに何ができるんだろう... みんなで一緒に考えてみませんか?