SDGsという言葉は聞いたことがあるし、その大切さも頭では理解している。でも、自分の生活の中で具体的なアクションには結びついていない……。そんな人も多いのではないだろうか。
9月25日はSDGsが採択された記念すべき日。改めてSDGsについて「自分ゴト」として考えるきっかけになればと、9月18日より湘南 蔦屋書店にてイベントが開催されている(協賛:日本コカ・コーラ株式会社。会期は10月17日まで)。
「格好いい」というイメージからでもOK
環境に優しいペットボトルの開発や意欲的なリサイクル施策に取り組んでいる日本コカ・コーラ株式会社の協賛により、館内には「わたしが選ぶ、未来のためのチョイス」と題したイベントスペースが登場。気候変動、ジェンダー平等、貧困問題などの観点から、SDGsについて考えることができる様々な本が揃った。
中には、ポール・マッカートニーの自伝『告白』や、『カニエ・ウェスト論』も。なぜ? と疑問が湧くが、ポールが提唱する「ミート・フリー・マンデー(週に一日だけ菜食を実践するアクションのこと)」や、ブラック・ライブズ・マターの抗議活動に身を投じるカニエ・ウェストの姿を通じて、SDGsの目標のうちのいくつかに触れることができる。
「SDGsについての教科書的な本だけでなく、意外な切り口や、著名人の『格好いい』というイメージからSDGsについて関心を持ってもらうことも大事だと考えました」
と、湘南 蔦屋書店の薄井美咲さんは語る。
日本コカ・コーラが2030年までに目指しているのは…
9月25日には、日本コカ・コーラ株式会社の田口美穂さん、World Road Inc.の共同代表である平原依文さん、市川太一さんが登壇してトークイベントも開催された。
私たちの生活には欠かせないペットボトル飲料。日本コカ・コーラは、「廃棄物ゼロ社会」を達成するために、「容器の2030年ビジョン」というロードマップを策定して「設計」「回収」「パートナー」の3つを柱とした取り組みを推進しているという。
2030年までに、段階的に「ボトルtoボトル(※)」を推進し、2030年までにすべてのPETボトルを100%サスティナブル素材に切り替える、という意欲的な目標を掲げている。
田口さんによると、特にここ2、3年、消費者の意識が大きく変わってきたという。
「お客様の環境課題への意識の高さ、企業への期待値の高さを実感するようになり、それに応える必要性を感じています。企業として成長していく上でも、環境課題へのアプローチが不可欠です」
自販機横のボックスは「ゴミ箱」ではない?
リサイクルに関して、意外と知られていない事実がある。
ペットボトルは各自治体で回収されたのち、リサイクル業者に届いてから洗浄される。その後、細かく砕かれてから、新たなペットボトルに生まれ変わる。そもそも回収の段階で、飲み残しもなく、ラベルもキャップも取り除かれた綺麗な状態でないとリサイクルの循環の輪から外されてしまうのだという。
田口さんは、リサイクルを取り巻く状況について次のように語った。
「皆さんのリサイクル活動なくしては、循環の仕組みは成り立ちません。自販機横には『回収ボックス』が置かれているのですが、あれを『ゴミ箱』だと思っていらっしゃる方がかなり多いのでは、という印象です。蓋を開けてみると、タバコの吸い殻やお弁当の容器、コーヒーカップなどが捨てられているということもあるんです」
平原さんはそれを受けて、「日本はテロ対策の影響もあって、ゴミ箱が少なくなっていますよね。それで、つい捨ててしまう、という方も多いかもしれないですね」とコメント。
「それもあると思います。特にタバコなど、害のある物質だと判断されると真っ先に『ゴミ』になってしまいます。ペットボトルは『ゴミ』ではなく『資源』。日本コカ・コーラの製品だけでなく他社さんのメーカーでも、適切に回収ができれば、環境負荷の低いサスティナブルな素材を生み出すことができます。(田口さん)」
「人間、好きなことじゃないと取り組めない」
トークイベントを聞いていた人の中からは、「ペットボトルを買うのは罪深いことだと思っていて、でも自分は炭酸水が好きなので苦しい時期がありました。なので、今日お話を聞いて、色んな製品が100%リサイクルペットボトルになっていくことはありがたいことだと思いました」という意見も。
日本コカ・コーラでは、2021年5月から「コカ・コーラ」の主要製品で100%リサイクルPETボトルを導入。新たな石油由来原料からつくられるPETボトルと比較して1本あたり約60%のC02削減に貢献している。
「環境問題」と聞くと、自分1人の力では何も解決できないと無力感に苛まれることもしばしば。しかしこのペットボトルの事例のように、日々の購買活動の中の選択を少し変えるだけで課題解決につながることもあるのだ。
平原さんは、「自分で目標を作って、自分のやりやすい方法で達成してみることを意識するといいかもしれません」と提案。
市川太一さんは、自身も関わった本『WE HAVE A DREAM 201か国2020人の夢 × SDGs』で世界中の若者の話を聞いてきた。その中で、目の前で差別される人を目撃した経験から「自分の目の前の景色を変えたい」と強い熱意を持ったというインドの少女のエピソードが印象的だったそう。
SDGs達成への思いについて、次のように教えてくれた。
「僕がSDGsについて皆さんにお話しするとき、『環境問題が~』などと大きな枠組みから入るのではなく、自分が気になること、好きなことをまずは知ってみよう、というスタンスを心がけています。人間、好きなことじゃないと取り組めないですよね。自分の共感した部分を掘り下げていくことで、SDGsの目標達成にもつながっていくと思います」
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社会で起きている問題を「自分ゴト」化して考えるのは難しい。でも、2030年、目の前の景色が、どう変わっていると心地良いだろう? 自分自身にそう投げかけてみることから、初めてみてもいいかもしれない。
<取材&文:清藤千秋>