新型コロナ禍だからこそ、米フード・スタートアップが行う取り組みとは?

「恐怖に屈し、パニックやヒステリーを起こすのではなく、クリエイティビティや思いやりを大事にすべきです」
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サステナブル・ブランド ジャパン
Akua

必要は発明の母。これこそが多くの起業家が製品やサービスにおけるイノベーションを生み出したそもそもの理由だ。この格言は、新型コロナウイルスが世界中に広がり、小さな企業も大きな企業も日々決断と変化が迫られる状況にも当てはまるだろう。(翻訳=梅原洋陽)

資金に限りのある多くのサステナブル・スタートアップ企業はあらゆるリソースをかき集めて、認知度を高めるためにナチュラル・プロダクツ・エキスポ・ウエストのような展示会に参加する。2020年3月に開催される予定だった同展示会は新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために中止となったが、出展を予定していた企業はどのように現在の状況に対処しているのだろうか。サステナブル・フード界のイノベーターたちは製品を実質的に無料で提供するなどさまざまな取り組みを行う。いくつかの企業を紹介してみたい。

ReGrained (カリフォルニア・バークレー)

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Regrained

リグレインド(ReGrained)は醸造で使われた麦をアップサイクルし、栄養価の高いスナックに作り替えている。他の数百社と同じく、ReGrainedもエキスポ・ウエストで新商品を発表する予定だった。現在の状況下でも、同社は新たなReGrained Puffsをオンラインで販売し、小売業者とのミーティングもオンラインで行っている。さらに、先行予約特典として、送料を無料にし、消費者が手軽に購入できるようにしている。

ReGrainedのカリカリした食感でおいしい新パフチップスは「二軸押し出し」製法により、SuperGrain+という麦と、オーガニックで遺伝子組み換えではないコーンを揚げずに、膨張、乾燥させて作っている。同社は送料無料の特典に加えて、パフ製品とReGrainedバーの詰め合わせセットを25%オフで提供している。パントリーにストックしておくのに最適だろう。ReGrainedの共同創設者であり、麦部門チーフのダン・カーズロック氏はサステナブル・ブランドの取材に対してこう語った。

「起業家にとって重要な仕事は、解決策を探すことに注力し、急な事態でもすぐに方向転換できることです。2020年の計画を立てた時には、このようなことが起きるとは全く考えていませんでした。この状況にどのように対処するかが私たちのこの一年を決める重要な決断となるでしょう。このような危機をチャンスだとは思っていません。そのような側面もあるかもしれませんが。状況に適応し、できることに全力で取り組み、前に進んでいくだけです。このレベルの惨事は小さなブランドを簡単に消し去ります。私たちの重要なミッションは簡単に消える訳にはいきません」

Akua (ニューヨーク)

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ニューヨークに拠点を置くアクア(Akua)は海で養殖された昆布を使った栄養価の高いスナックを販売している。サステナブルな食べものを提供しながら、気候変動を元に戻し、世界の海の健康を復元している企業だ。エキスポ・ウエストに初めての出店する予定だった、この創業2年のスタートアップは、新しい二種類の味のケルプ(昆布)・ジャーキー(スパイシーチリ・ライム味、火鉢テリヤキ味)とBiohm Health社と共同で製作した、新製品のケルプ・バイト(少し甘みがある、カカオ、ひまわりのバター、なつめやし、昆布、ラスベリーで作られたプロバイオティックのスナック)を発表することとなっていた。

Akuaの共同創設者であり、CEOのコートニー・ボイド・マイヤーズ氏は、新しい味のパッケージングの最終段階に入り、他の新製品の立ち上げの資金調達をオンラインで行いながら、両方の新製品の発表は延期することにしたと話す。

外出せずに家にいることがより強く求められる中で、人々の食料ニーズに応えるために、Akuaは現在大量のケルプジャーキーとケルプ・パスタの梱包を自分たちで行い始めた。きちんとしたパッケージで出荷するには6週間がかかり、ほとんどの工場は今のところ閉まっている。同社はサンプルを提供しながら、ジャーキーの新フレーバーを数週間以内にアマゾンで展開する準備をしている。

Brainiac Kids (カリフォルニア・サンフランシスコ)

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Brainiac Kids

サンフランシスコを拠点とする、ブレイニアック・キッズ(Brainiac® Kids)は、脳の発達をサポートすることを目的とした初めての子ども向け食品企業だ。エキスポ・ウエストで新たなリンゴ味のドリンクを発表する代わりに、新しいものを求める小売店に無料で配布することを決めた。そして、エキスポ・ウェストの参加者9万人に配布する予定だったサンプルは地域のフードバンクに提供する。

「Bコーポレーション認証を受けている企業として、コミュニティに利益を生み出すことを目指しています。無料で提供するより良い方法はないでしょう。この困難な時期に、保護者が保存可能なBrainiac Kidsの製品を無料でストックでき、小売業者は無料で製品を試し、そして私たちはエキスポで得られたであろう良いビジネスの流れを保つ方法を探しています」と創設者であり、米バイオテクノロジー企業Solazyme (現在はTerraVia)の元CEOだった、Brainiac Kidsのジョナサン・ウォルフソン氏は語った。

Brainiac® Kidsは現在ヨーグルトを販売しており、新たにオリジナルのBrainPack®が入ったアップル味のドリンク「アップルソース」を売り出す。BrainPack®は、DHAの含まれたオメガ3や、脳の発達に欠かせないコリンがブレンドされている。

「新商品のアップルソースの発表は、私たちのコンセプトはジャンルを超えてさまざまな子ども向け食品を作っていることを示す大切な機会です。私たちは今まで多くの専門家から、十分な量のオメガ3、特にDHAをアップルソースのような保存可能な製品に配合するのは不可能だと言われてきました。この製品を全米の家庭に届けられることを嬉しく思っています」と社長であり、共同創設者のマーク・ブルックス氏は言う。

Back to the Roots (カリフォルニア・オークランド)

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Back to the Roots

そして、エキスポ・ウエストの常連であるバックトゥザルーツ(Back to the Roots)も先行きが見えないこの時期に、製品を必要とする人たちに無料で届けている。

カリフォルニア州オークランドに拠点を置き、オーガニックの野菜やハーブを育てるキッチン製品を販売するBack to the Rootsは4月末までの学校が休みの時期に教育的な楽しみを提供するため、教育者そして保護者に500以上のガーデニングキットを提供する。

「多くの人にとって今のこの状況は未知のものです。しかし、力を合わせ、お互いを助け合い、大きくても小さくてもそれぞれがコミュニティにとってできることをすれば、コミュニティはより強くなり、ビジネスのあり方も大きく変わる機会となるでしょう。私たちにとってそれは、サステナブルな製品を提供することです。ビジネスの異なる側面を世界に示すチャンスかもしれません。恐怖に屈し、パニックやヒステリーを起こすのではなく、クリエイティビティや思いやりを大事にすべきです」と共同創設者のニキル・アローラ氏はそうは話した。

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