イギリスのメイ首相、EU離脱中にスコットランド独立の住民投票を警戒

メイ氏の選択肢は住民投票を拒否して憲法上の危機を犯すか、住民投票を受け入れてイギリスの将来を危機にさらすかだ。
Open Image Modal

イギリスのテリーザ・メイ首相は、欧州連合(EU)離脱の交渉手続きを定めたリスボン条約第50条に基づき、3月から正式なEU離脱プロセスを進める。しかしメイ氏は、スコットランド自治政府のニコラ・スタージョン首相が、独立を問う2回目の住民投票を行うことを恐れていると報じられている。

■ スコットランド独立問題とは

スコットランドでは1989年、高度な自治を求めて市民団体や政党が結集しスコットランド憲政協議会(SCC)が結成された。SCCは95年に自治案を発表し、97年に誕生した労働党のトニー・ブレア政権が承認した。97年、住民投票でスコットランド議会の復活が決まり、99年の議会選挙で、労働党のドナルド・デュワー氏が初代自治政府首相に選出された。

2011年、独立推進派のスコットランド国民党(SNP)が議会の過半数を占めると、12年に自治政府のアレックス・サモンド首相がイギリスからの独立を問う住民投票を14年9月に実施すると発表し、イギリスのデービッド・キャメロン首相も同意した。

2014年9月18日に実施された住民投票は登録有権者数428万3392万人で、うち投票率は84.6%に達した。中央選管の発表で賛成161万7989票(44.65%)、反対200万1926票(55.25%)で、反対票が賛成票を約38万票上回った。

■ メイ氏のハードブレグジット(強硬的なEU離脱)に反発するスコットランド

サンデー・タイムズによると、メイ氏はスタージョン氏がEU離脱を開始するタイミングを利用し、2回目の住民投票を行う事態に備えているという。

メイ氏の選択肢は住民投票を拒否して憲法上の危機を犯すか、住民投票を受け入れてイギリスの将来を危機にさらすかだ。

Open Image Modal

メイ氏は住民投票を拒否することもできる。これまでにメイ氏はスタージョン氏と何度も会見している。POOL NEW / REUTERS

メイ氏は4月までにリスボン条約第50条を発動すると約束している。イギリスの上院議会は3月1日、EUに離脱通告する権限を首相に与える法案を一部修正の上可決した。修正の結果、首相が離脱交渉を開始するためには、イギリス在住のEU市民の権利保護を保証することが義務付けられる。

法案が修正されたため、離脱通告の時期が遅れる懸念もあるが、メイ氏はスケジュールを変更しない意向だ。

メイ氏はスコットランドの有権者に対し、スコットランド議会の選挙を利用し、スタージョン氏に再び独立を問う住民投票を望まない意思表示をしてほしいと促した。

イギリスが2016年6月23日の国民投票でEU離脱を決めて以来、EU残留を主張していたスコットランドは、再び住民投票に踏み切るのではないかと推測されている。

スタージョン氏は、メイ氏が単一市場から離脱する強硬な離脱(ハードブレグジット)を選択したことで、再びスコットランド独立を問う住民投票を行う可能性は「間違いなく高まった」と警告している。

しかしメイ氏は、スコットランドの雑誌「ホーリールード」で「スコットランドの有権者がスコットランド保守党やユニオニスト(英国連邦の維持を望む人々)に投票し、スコットランド国民党(SNP)に対して明確に2回目の住民投票は不要だと意思表示する、5月の地方選挙を楽しみにしている」と語った。

労働党は専用のウェブサイト「TogetherStronger.scot」を立ち上げ、2回目の独立住民投票に反対する意見を登録できるようにした。

PA通信によると、ケズィア・ダグデール党首は「わが国は既に十分に分離していると信じている」人々に登録を呼び掛けていくという。

ダグデール氏は、スタージョン首相は「2回目の住民投票の計画を見送る」べきだと付け加えた。

スコットランド国民党のスポークスマンは、「2016年の選挙で有権者の意志が示されたように、住民投票は民主主義にとって普遍の義務だ。ところがトーリー(保守党)の多くは、それを否定しようとしている」と語った。

「スコットランドでは、EU離脱の国民投票で24ポイント差をつけてEU残留派が勝った。この経緯を見ても、スコットランド独立を問う住民投票を実施する義務がある。テリーザ・メイ首相が、無謀にも経済を壊滅させるハードブレグジットを追求すれば、スコットランドのEU離脱への反対意見は強まるばかりだ」

「メイ首相が、EU離脱に関して英国政府とスコットランド政府の間に共通点を見出せると思うのは大きな間違いだ。彼女の政党は世界最大の単一市場から抜けるという甚大な経済的ダメージを伴う危険を冒している。私たちは、極めて重要なスコットランドの国益を守ろうとしている」

ハフィントンポストUK版より翻訳・加筆しました。

▼画像集が開きます

(スライドショーが見られない方はこちらへ)

Open Image Modal

Open Image Modal