スコットランドの独立問う住民投票、育児や原発政策も焦点に 日本と比べるとどう違う?

イギリスからの独立の是非を問うスコットランドの住民投票で、育児政策や原発政策はどのように扱われているのか。
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GETTY / HuffPost

スコットランドが9月18日、イギリスからの独立の是非を問う住民投票を実施する。8月初頭に行われた世論調査では、独立反対派が賛成派に20ポイント以上の差をつけてリードしていたが、現在は双方が拮抗状態になっている。独立賛成派が増えたのは、女性や40歳以下の若手の賛成派が増えたことがポイントだ。

毎日新聞はスコットランドの現状について、イギリス中央政府とスコットランドが目指す社会が大きく異なっていると指摘する。スコットランド住民の多くが福祉社会、反核、再生可能エネルギーの導入といった北欧型社会を目指しているのに対し、中央政府は経済に競争原理を広く導入したり、軍事産業を育成したりするなどのアメリカ型社会を模索している状況があるという。

日本でも選挙の争点となる育児やエネルギー、安全保障の問題は、スコットランドではどのような扱いなのか。独立を主導するスコットランド国民党(SNP)や、イギリスのキャメロン首相が率いる保守党(と自由民主党との連立政権)、その対抗勢力で44歳のミリバンド氏が率いる労働党を比較してみよう。

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■子育て政策

日本では待機児童の問題クローズアップされ、施設の整備や保育士確保が課題になっているが、イギリスではその次のステップの「設備や人はいるが、利用料金が高くて預けることができない」ということが問題になっている。

イギリスの保育事情は地域によって異なり、それぞれの地域政府に児童福祉の権利が認められている。スコットランドでは2002年から、3〜4歳児は一律週12.5時間まで無料で保育サービスを受けることができるようになった。

さらに、スコットランド地方議会の第一党となったSNPは、2014年8月から無償で保育サービスを受けられる時間を週16時間(年間600時間)まで増加させ、対象となる児童の年齢も3〜5歳までに拡大。ただし、実施については設備の整備が間に合わないとして、10月までに対応を完了させるとした。

また、この無償提供の時間を超えると、利用者はサービス利用料を支払う必要があるが、イギリス政府は子供一人につき年間1200ポンド(約21万円)の補助金を給付している。

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SNPは、イギリスから独立を果たし予算が増えればという条件付きだが、無償保育を提供する児童の対象年齢を2歳まで、さらに将来的には1歳まで広げるとしている。

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イギリス政府は2015年秋の選挙で勝つことを条件に、子供一人あたり年間2000ポンド(約35万円)まで、育児補助金を増やすとしている。ただし、両親共に働かなければならなかったり、収入基準があったりなどの制限も設けられている。

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労働党も2015年秋の選挙で勝つことを条件に、3〜4歳児が受けられる無償保育の時間を、1時間あたり25時間まで拡大する。財源は銀行への課税でまかなうとしている。

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■環境・エネルギー政策

日本では原発再稼働が取り上げられるが、スコットランドでも同様だ。ただし、既にスコットランド地方政府は脱原発に方向転換しており、焦点は再生可能エネルギーへのシフトによって、経済活動にどの程度影響があるかという点になっている。

2012年のデータでは、スコットランドのエネルギー構成は、原子力発電が34.4%と最も多いが、再生可能エネルギーが29.8%、石炭が24.9%と続く。

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この状態を現在のスコットランド・サモンド政権(SNP)は、2030年までに洋上風力発電などの再生可能エネルギーだけで電力需要量の100%を生産できるようにすると明言した。

とはいえ、北海などで算出される石油や天然ガスの産出をストップさせるわけではない。これらの化石燃料エネルギーは、次世代へ引き継げるように適切な管理の元、生産を続けるとしている。

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SNPは再生可能エネルギーの推進には、イギリス国内やEU諸国などの海外向けに輸出できるインフラが必要としている。その整備には、二酸化炭素削減に邁進する必要があるイギリス政府とパートナーシップを結び、整備に取り組んでいくとしている。

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キャメロン政権では、二酸化炭素の排出削減や火力発電所の老朽化に伴い、5カ所に12基の原発を2030年までに新設するとしている。また、スコットランドからの電力輸入に頼る必要はないとしている。

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労働党は、気候変動やエネルギー市場からのスコットランド孤立を懸念。スコットランドが独立しても、イギリス政府がスコットランドの電力価格を適切だと判断するかどうかの保証はない点や、再生可能エネルギーの割合が増えて消費者の負担が増える点を警告している。

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■安全保障政策

日本の安倍政権は、日米関係を強化が安全保障につながるという考えだが、独立後のスコットランドはイギリス、そして周辺諸国との軍事パートナーシップが安全保障のカギになる。

イギリスは国連の安全保障理事国の一角を担い、核も保有。スコットランドには核ミサイルを搭載する原子力潜水艦を配備している。

しかし、現在のスコットランド地方政府を率いるSNPは「核兵器は必要ない」と考え、スコットランドが独立したら、断固として非核化を進めるとしている。これをイギリス側が認めるのかという点は大きな焦点だ。

また、軍事関係施設も多く、スコットランドの航空宇宙、防衛および海洋産業などの防衛産業では1万2600人以上が働いており、年間約18億ポンド(約3258億4000万円)を超える売上高を誇る

イギリスから独立するとこれらの軍事産業がどうなるのかというのも、スコットランドの経済活動に関係してくる。

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非核化を目指すSNPは、北大西洋条約機(NATO)への加盟によってある程度の安全が確保できるとしている。

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スコットランドがNATOへ加入するためには、加盟国の全会一致の議決が必要となる。スコットランドが独立すると、イギリスは国内の原子力潜水艦の配置場所を失うため、スコットランドが配備を認めないのならば、同国のNATOへの加入は難しいのではないかと、イギリス政府は述べている。

また、これまでイギリス政府が築いてきたアメリカやオーストラリアとの同盟関係を、スコットランドは独立によって失うと警告。スコットランドの防衛設備の維持には年間約1億4000万ポンド(約246億5000万円)がかかっているとしており、さらに今後も、1億8500万ポンド(約325億8000万円)ほどの投資が行われるとしている。

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労働党は、スコットランド独立によって防衛産業に従事する数千人の熟練工や雇用の場を失うと警告している。

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