スコットランド独立を問う住民投票、市場は平静保つ 警鐘を鳴らす専門家も

スコットランド独立の是非を問う住民投票が18日に迫る中、現時点でもなお世論調査では賛成と反対がほぼ互角で推移している。スコットランドが英国を離脱すれば大混乱が起きる可能性もあるのに、市場が比較的平静さを保っているというのは驚嘆すべき事態といえる。
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Reuters

[ロンドン 17日 ロイター] - スコットランド独立の是非を問う住民投票が18日に迫る中、現時点でもなお世論調査では賛成と反対がほぼ互角で推移している。スコットランドが英国を離脱すれば大混乱が起きる可能性もあるのに、市場が比較的平静さを保っているというのは驚嘆すべき事態といえる。

住民投票をめぐって市場を怯えさせるようなニュースが流れているにもかかわらず、ポンドの貿易加重平均レートは足元で夏場の高値からやや軟化したといっても年初来でまだ2%上昇している。

英国株の指標であるFT100種株価指数も、年初来ではプラス圏を維持。パフォーマンスはドイツのクセトラDAX指数と大差なく、過去6週間ではイタリア株をアウトパフォームしている。スコットランドに本社を置く企業の株価は過去1年間でアンダーパフォームしているものの、指数との差は直近では開くよりむしろ縮まってきた。

英国債の利回りは実際に低下している。英政府が投票結果にかかわらず流通しているすべての国債に保証を与えていることで、この問題の影響を免れている格好だ。イングランド銀行(英中央銀行、BOE)の利上げが迫っているとの観測がくすぶっていても、10年債利回りは今年に入ってから0.5%ポイント下がった。

住民投票に対する不安や急いでヘッジしようという動きが見られるのは、おおむね通貨オプション市場に限られている。ポンド/ドルの1週間物インプライドボラティリティ(IV)は、世論調査でスコットランド独立賛成派が増加するとともに年率17%と4年ぶりの高水準に達した。

それでもトレーダーによると、これはポンド/ドルが現水準の1.62ドルから向こう1週間で約0.04ドル上下することを示唆しているにすぎない。

さらに3カ月物IVが示す値動きも、年初来の最大値幅である0.12ドルの半分程度にとどまっている。

<静かな市場と破滅予言する専門家>

こうした市場の静けさは、いくつかの世界的な投資銀行がスコットランド独立の場合の衝撃やスコットランドと残りの英国にのしかかるコストについて厳しく警告している点からすれば、非常に奇妙な光景に見える。

英政府がスコットランド独立派のポンド使用計画に反対している点から、多くの専門家はポンドの先行きに警戒感を示す。そのほかにもスコットランドの銀行からの預金流出や、スコットランドと残りの英国の国際収支に関する足かせ、新スコットランドが独立後すぐに借り入れコスト上昇に見舞われたり緊縮財政を迫られる事態なども懸念されている。

スコットランドが独立した場合、石油からの税収の配分や債務返済の分担などをめぐる交渉の行方はだれにも正確にはわからないので、投資銀行の見通しは一様ではない。例えばスコットランドが北海油田の税収の大半を獲得するようならば、ポンドは急落し、残りの英国は経常赤字が大幅に増加しかねない。

ドイツ銀行のチーフエコノミスト、デービッド・フォルカーツ・ランダウ氏は12日、顧客に対してスコットランドの英国離脱は、世界大恐慌のきっかけに匹敵するほどの政策上の失敗になるとの見方を伝えた。

ゴールドマン・サックスのエコノミスト、ケビン・デーリー氏も、住民投票が賛成多数という驚くべき結果となれば、新スコットランドと残りの英国の双方に「重大なマイナスの」影響をもたらす恐れがあると認めている。

またずっと弱気を貫いてきたソシエテ・ジェネラルのストラテジスト、アルバート・エドワーズ氏は、深刻なポンド危機を招き、1991年のソ連崩壊と同じような事態が英国と欧州連合(EU)にも発生してしまう可能性があると予想する。

エドワーズ氏が挙げる残りの英国に関する懸念材料は、対外収支赤字の拡大からEU離脱の可能性増大まで多岐にわたる。その上で同氏は「投資家はスコットランド独立賛成派勝利を見越してポンドを売っているかもしれないが、残りの英国が置かれる経済の現実からすればポンドは底なしに下落するというのが正しい」と指摘した。

こうした見方が正しいなら、なぜ金融資産はもっと活発かつ急速に売られてこなかったのだろうか。

一部の投資家は、ノイズの多い世論調査と同じぐらいブックメーカーの動きを重視していると語った。そして世論調査ではスコットランド独立賛成派が最近になって急増したものの、ブックメーカーは住民投票後もスコットランドは英国にとどまる確率を70─80%に維持している。

ブックメーカーのベットフェアは英国の枠組みは変わらないと確信しており、既に独立反対に賭けた顧客への払い戻しを行っている。

資産運用会社はスコットランド問題について、世界の主要中央銀行からの潤沢な資金供給が他のほぼすべての影響を排除しているという現実においては、今年事実上無視されてきた多くの政治リスクの1つにすぎないと強調する。またこれらの政治リスクはどれ1つ取っても、ヘッジを実行するにはコストが大き過ぎるという。

別の論点として、スコットランド独立の場合に新スコットランドと残りの英国にのしかかるコストや不確実性などが出てきたとしても、大々的ないし全面的な混乱なしで乗り切れる、と投資家がみなしているという可能性もある。

この考えでは独立後の交渉がすべてであり、現時点では実際に見られているような小規模なポジション調整が恐らくは妥当なのだろう。

INGインベストメント・マネジメントのマルチ資産投資責任者、Valentijn van Nieuwenhuijzen氏は「市場には多少自己満足的な部分があるかもしれないが、国際投資家はスコットランド問題をユーロ崩壊や米国の債務不履行(デフォルト)といった近年浮上したより大規模でシステミックなリスクと比較している。スコットランド問題はこれらの域には達していない」と説明した。

(Mike Dolan記者)

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