何をしているのか見えづらい地方議員の活動ですが、
夏の終わり~秋にかけては各種団体から膨大な
「予算要望」をヒアリングする季節です。
難病支援団体や障害者連絡協議会、母子家庭の支援団体から
中小企業の連合会まで、様々な立場の団体が
「来年度の東京都の予算では、こういった分野を手厚くしてください!」
という分厚い要望書を持って都庁を訪れます。
先日も「障害者と家族の生活と権利を守る都民連絡会」、
通称障都連の皆さまが会派の控室に大勢でお越しくださいまして、
早速来月の議会閉会後には視察させていただくお約束もいたしました。
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障害者・障害児関連の団体の皆さまから受ける要望で特に多いのが、
特別支援学校に通学するための「スクールバス」の充実です。
例えばこの中に、
「医療的ケアが必要な生徒も、保護者同伴でスクールバスを利用可能にしてほしい」
というものがあります。
現在、東京都では医療的ケア(たんの吸引など)が必要な特別支援学校の生徒さんは、
スクールバスが利用できないことになっています。バスの中では緊急時の対応は難しく、
スクールバスの運行に支障を来たすことにもなりかねないからです。
参考:医療的ケアとは?
医療的ケアが必要な生徒を学校に通わせたい場合、
保護者の方々が個別送迎をすることになり、言うまでもなく多大な負担となって、
中には通学を諦めてしまう家庭もあります。
「同じ生徒なのに、教育を受ける権利が奪われるのはおかしい」
「保護者もスクールバスに乗せてくれれば、問題は解決されるはず!」
確かに、スクールバスに看護師を同乗させるとか、
医療的ケアが必要な生徒専用のミニバスを増やすなどは財源が必要になりますが、
保護者を乗せるくらいであれば、対応することができそうに思えます。
もし仮に、これがすべての生徒・保護者の共通の想いであれば、
実現される可能性は高いかもしれません。
しかしながら...
ここには残念ながら、当事者同士の利害対立があります。
実際に校長先生や現場でヒアリングすると、
PTA(保護者)の間でも温度差があると言います。
「保護者が乗れるようになるなら、うちだって同乗して通学したい」
「医療的ケアが必要な自体に、バスがいちいち停車したら困る」
「バス内の環境が変わることで、他の子がパニックになってしまう」
物理的なリスクに加えて、こうした利害対立が
一見すると実現可能な施策の実施を遠ざけてしまいます。
うーん、こうした問題の解決は、本当に難しい。。
東京都の特別支援学校では、医療的ケアが必要な生徒の
スクールバス利用は完全不可となっていますが、他の道府県では
学校長の裁量で利用が可能としているところもあります。
が、その結論に至るまでは長く深い議論があり、
今に至るまで試行錯誤が続いていることがわかります。
参考:医療的ケア児童生徒通学支援研究会議の中間まとめ
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予算が無限にあれば、スクールバスの増便や福祉タクシーの利用で
解決ができるかもしれませんが、もちろん財源には限りがあります。
そしてその限りある財源は、どうしても人数が少なく、政治力の弱い
障害者などの社会的弱者には回りづらい仕組みになっているのが現状です。
こうした事態を目の当たりにするたびにつくづく、
健康な方が利用している赤字のコミュニティバスや
シルバーパスより先にやるべきことがある、と個人的には感じます。
これから年末にかけて行われる決算と、来年度に向けた予算要望書の提出。
今年新たに得た知見を使いながら一つ一つ吟味し、本当に必要な人に過不足のない
福祉が行きわたるよう、政策提言をしていきたいと思います。
それでは、また明日。
(2014年9月26日「おときた駿ブログ」より転載)