「高過ぎ...」の声受け、全国の公立中学450校の制服の値段を比べて見えたこと

公取委が異例の「7つの提言」

値上げが続き、保護者などから「高すぎる」などの声が出ている学校制服。こうしたことを背景に、公正取引委員会が、公立中学の制服の取引実態に関する報告書をまとめた。全国約450の公立中の制服の価格や販売状況を分析し、制服が安くなる方法を提言している。報告書は各地の教育委員会などに送り、改善への相談にも応じるという。

学校制服の市場規模は1100億円程度とされ、大手メーカー4社でシェアの7割を占めている。

学校制服の販売価格はこの10年で値上がりしている。総務省統計局の「小売物価統計調査年報」によると、2007年度に2万7000円~2万8000円ほどだった販売価格は、2016年度には3万2000円~3万3000円に。特に2015年度から2016年度にかけては生地材料の羊毛価格が上昇したことで、さらに値上がりした。

こうしたことなどを受け、公取委は制服が「入学に当たって準備する品目の中でも比較的高額なものとなっている」と位置づけ、2016年末、制服の契約や販売の実態を明らかにする調査に乗り出した。

2017年夏までに、全国の公立中学約1万校の中から600校を抽出、うち447校から回答を得て分析した。

報告書では、制服種類を「詰め襟服」「ブレザー」「セーラー服」「イートン服」に分け、ジャケット、スカート・ズボンの上下1着ずつを購入した場合の合計価格を計算、比較の際は平均価格で傾向をみた。

***横並びでない方が安い***

まず販売店での店頭価格が横並びかどうかを比べた。制服の種類や店の指定状況によるが、全体の4割前後の中学で、販売店の価格が横並びだった。こうした「横並び」の制服の価格とそうでないところの価格を比べると、同一価格でない方が約150~4200円安かった。

図1)横並びとそうでないところの価格の違い(指定販売店の場合 単位:円)

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MASAKO KINKOZAN/HUFFPOST JAPAN

***学校が交渉した方が安い***

次に制服の価格について、学校がメーカーや販売店と交渉するなど、何らかの形で価格決定に関与している学校の制服価格と、交渉をしていない学校の平均制服価格を比べた。 すると、「関与」している学校の制服は、関与していない学校より約300~3000円安かった。

図2)学校の関与の有無による価格の違い(指定販売店の場合 単位:円)

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***販売店が多い方が安い***

参入している販売店の数がどの程度価格に影響しているのかも調べた。販売店が1店しかない中学の制服と4店以上ある中学の制服価格を比べると、4店以上の方が約920~1800円安かった。2、3店程度では有意な差が出なかった。

図3)参入店数の違いによる価格の違い(単位:円)

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***自治体で統一した方が安い***

数は少ないが、一つの自治体内の中学制服のデザインが統一されているところがある。そうした「統一」の中学の制服は、そうでない学校より、価格が2200~8800円安かった。

図4)統一の有無による価格の違い(単位:円)

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***業者に競争させた方が安い***

数年おきに入札や見積もり合わせをして最安値の業者を選ぶといった、公共事業の入札と同様の方法を採っている自治体もある。統計的に有意な差とは認められなかったものの、定期的に入札・見積もり合わせをしている自治体の中学の制服価格は、そうでない自治体よりも安い傾向が見られた。特にブレザーで比べると、男女とも5000円前後の差がつく。

図5)入札・見積もり合わせの有無による価格の違い(単位:円)

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こうした結果から、公取委は、学校が業者を選んだり価格決定に関与する際、以下の7つの取り組みが「競争が有効に働く」と学校に提言した。メーカーや店の競争を促すことは「安価で良質な制服が提供される可能性を高めることとなる」としている。

1 コンペ、入札、見積もり合わせといった方法でメーカーや販売店を選ぶ

2 学校独自のデザインだからという理由で、メーカーを指定している場合は、その指定が必要かどうかを確認する

3 新たに製造や販売に参入したいと業者が申し入れてきた場合は、合理的な理由のない限り回答を保留しない

4 新たに参入したい業者から制服の仕様を開示するよう求められた場合は、特段の事情がない限り仕様の開示に応じる

5 コンペや見積もり合わせで、メーカーが(学校側に)提示する価格は販売店への卸売価格とするよう求める

6 コンペの参加条件の中に、いまの制服または他校の制服の価格と同程度以下の想定価格を提示できることを盛り込む

7 コンペの際、新制服の価格を、いまの制服の価格より下げるよう要望する

このなかで、制服の価格を抑えるよう販売店に依頼する場合は、販売店が共同して価格の決定を行うという独占禁止法違反の行為を誘発しない方法で取り組むよう求めた。

また、報告書は「学校の関与がきっかけで行われた行為であっても、その行為が独占禁止法違反の要件に該当する場合には、直接法的責任を問われる」と、メーカーや販売店に注意喚起し、適正な取引を求めた。「引き続き、学校での制服取引の動向に注視し、独占禁止法に違反する行為には厳正に対処していく」としている。