10人に1人が不登校の中学校も! 文京区で増える不登校児童・生徒への支援体制は!?

登校というゴールを目指すのではなく、子ども一人ひとりが主体的に先々をどのように歩んでいくかを考えられる支援が重要。

先日、国は、不登校が平成29年度、これまでの調査で一番多くなったことを報告しました。

出典:文科省 平成29年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について

http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/30/10/1410392.htm

文京区でも不登校は増え続けています。特に中学校の不登校の出現率は、都の約3.8%、国の約3.3%に比べ、5.38%と大幅に高くなっています。

さらには、文京区で不登校の出現率が一番多い中学校は9.73%と約一割にせまり、おおよそ10人に1人が不登校という状況です。一番少ない学校で2.54%です。

出典:文京区 平成29年度における児童・生徒の問題行動・不登校等の実態について http://www.city.bunkyo.lg.jp/var/rev0/0164/9508/siryou_3.pdf

不登校はどの生徒にも起こりえることであり、児童生徒の最善の利益を最優先に支援を行うことが重要です。

そこで、11月22日の文京区議会本会議で、区長・教育長にむけた質問の中のひとつとして、不登校についてとりあげました。私の質問と区長・教育長の答弁の内容を一問一答形式に編集し、以下に記載します。

また、限りある質問時間の中で触れられなかったことについても、最後に「海津の視点」として書きましたので、合わせてご一読ください。

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11月22日~文京区議会本会議11月定例議会 一般質問(海津敦子)より

海津:

「学校に行かない」子どもは問題だとの偏見が社会にはまだまだありますが、それは間違いです。不登校は誰にも起こり得ることです。増え続ける不登校について、昨年施行された「教育機会確保法」は、学校に行くことが100%正解ではないと認め、「学校を休んでもよい」「学校以外の場での学びの場も重要」であることを示した法律です。

Q 海津:中学校で高い不登校出現率について

文京区立中学校の不登校の出現率は、国や都の出現率に比較して、なぜ高いと分析されていますか。

また、生徒の約1割が不登校になっている学校と、少ない学校ではその差に7%以上開きがあります。その差の要因をどう分析していますか。

A 佐藤正子教育長:

本区においては、小学校段階から、学習に対する不安をもっている生徒が多いという特徴があります。

また、本区の生徒は、学年が上がるほど、自己肯定感が下がっていく傾向が見られます。学習やスポーツ、習い事、趣味などで、自分が頑張っていると捉えられない生徒の割合が、全国の平均値よりも高くなっております。こうしたことが、中学校の不登校の出現率に関係しているものと考えております。

しかしながら、不登校に至るまでには、生徒を取り巻く環境や人間関係、個々の心情などが複雑に絡み、様々な事情があることから、ひと言で要因を示すことは難しいと認識しております。

なお、各学校では、学校生活において生徒一人ひとりの自己肯定感が高まる取組みを行うことで、新たな不登校生徒を生まない工夫をしております。また、不登校が長期化している生徒に対しては、家庭や関係機関と連携し組織的に支援しております。

Q 海津:不登校児童生徒への学習機会確保

教育機会確保法は、自治体に対して、不登校の子どもたちが「教育をうける機会を確保するための施策」のために必要な財政上の措置を講じることを求めています。来年度の重点施策では、不登校にならないように予防的予算は積み上げられていますが、増え続けている不登校になった子どもたちへの教育機会確保のための予算はなぜ入らなかったのでしょうか。伺います。また、ふれあい学級に通っていない不登校の子どもが安心して学べるために講じている予算額も教えてください。

A 佐藤正子 教育長:

教育委員会では、国の「教育機会の確保等に関する基本方針」に基づき、魅力ある学校づくりに取り組むとともに、いずれの関係機関にも関わっていない不登校児童・生徒の減少に取り組み、教育機会の確保に努めております。

そのために、教員、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーが連携して支援し、家庭と子どもの支援員、ふれあい教室、総合相談室、医療機関等の活用へつなげていくほか、ご家庭の考えや、本人の意思を確認しながら、民間団体や民間フリースクールなど様々な関係機関等を紹介しています。

これらの施策は、教育、福祉分野の多岐に渡っていることから、予算額を算出することは困難ですが、来年度の重点施策においても、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーを増員するなど、教育機会の確保に資する施策の充実を図ってまいります。

Q 海津:

適応指導教室「ふれあい学級」には、10月1日現在で小学生10人、中学生24人が通っています。残る子ども達は、自宅か、フリースクール等に通っていると思います。その内訳を教えてください。

A 佐藤正子教育長:

ふれあい教室に通っていない児童・生徒の約5割がスクールソーシャルワーカーや家庭と子どもの支援員による自宅訪問を受けており、約1割がフリースクールに通っております。

Q 海津:

文科省は、教育機会確保法に基づき、公民連携による施設の設置・運営等の推進を求めています。ふれあい学級に通わない子どもたちからは、学校みたいで行きづらいとの声も聴きます。不登校の子どもたちが自分を否定することなく自信を育める「居場所つくり」に実績のある民間団体等に「ふれあい学級」を委託し、より過ごしやすい場を構築して支援を充実させるべきと思いますが、いかがでしょうか。

A 佐藤正子教育長:

現在、ふれあい教室では、都の「教育支援センター機能強化モデル事業」を活用し、民間団体と連携して、子どもへの個別指導、グループワークへの協力、指導員・実習生への指導等を実施しています。また、来年度については、他の民間団体との連携も検討しています。

このため、ふれあい教室を民間委託することは考えておりませんが、民間の持つ様々なノウハウを取り入れながら、ふれあい教室が、一人ひとりの子ども達にとって情緒の安定や集団生活への適応に資するものとなり、より居心地の良い「居場所」となるよう努めてまいります。

Q 海津:

不登校の子ども達への支援は、登校というゴールを目指すのではなく、子ども一人ひとりが主体的に先々をどのように歩んでいくかを考えられる支援が重要です。そのためには、学校に通わなくても学校と同様の学びや体験が選択できる機会の確保が必須です。ふれあい学級で、音楽や美術等の授業を毎週設けることや、職場体験、宿泊学習といった機会を提供すべきと考えます。

A 佐藤正子教育長:

現在、ふれあい教室では、できるだけ様々な経験ができるように活動を計画しており、音楽の時間、制作活動の時間を学期に1回程度設けております。

また、ALTによる授業やパソコン教室、科学実験、調理実習等の時間も設定しているほか、アスレチックへ行く「一日校外活動」も行っています。

活動への参加は本人の意思を尊重しており、毎週などの定期的な実施や事前に参加を確定する必要があるものとなると、疲れや負担感から、通級へのハードルとなることもあることから、活動の内容、回数等は、子どもに資するものとなるよう引き続き検討してまいります。

Q 海津:

ふれあい学級への通所を希望せず、家庭で多くの時間を過ごす不登校児童生徒に対して、ICT等を通じた支援、家庭訪問等での学習支援を実施し、すべての子どもが教育の機会を確保できていますか

また、フリースクールに通ったり、塾に行ったりすれば経済的な負担もあります。不登校の状態によって学習機会を損なうことがないように、経済的に困窮した家庭の子どもが、ふれあい学級以外で学習等を行うケースには経済的支援を検討されてはいかがでしょうか。

A 佐藤正子教育長:

ICT等を通じた支援については、既に、区立中学校で導入されているE-ラーニングをふれあい教室でも導入しているほか、不登校の子どもを意識した設計の学習支援システムの導入も検討しております。今後もICTを活用した学習環境の整備に努めてまいります。

なお、家庭訪問の際に、スクールソーシャルワーカーがE-ラーニングを活用することもありますが、学習を行える状態に回復するまでに時間を要することがあり、多くはゲームなど、子どもが好きな活動を一緒に行うことで、自己肯定感をあげていく支援を中心に実施しております。

次に、経済的に困窮した家庭の子どもへの支援についてのお尋ねですが、

ふれあい教室の通室の有無に係わらず、個々の学習支援の必要性に応じて「生活困窮者学習支援事業」につなげております。

さらに、今年度より、中学生学校外学習費用の助成を開始し、支援を拡充したところでございます。

Q 海津:学びの格差の解消にむけて~貧困対策としての学習支援

難易度が上がり、勉強についていけなくなる児童・生徒が急増する顕著な時期が9歳~10歳で「小4の壁」と言われています。小3までにわからないことが積みあがってしまったり、考える力が身についてなかったりするケースをいかに少なくするかが、この「小4の壁」をクリアする対策だとも聞きます。区が設置する学習支援の拠点に通える子どもは、原則小学4年生からとのことです。小3以下の低学年は、自宅近くに必ずしもないことから送迎の課題があるからとの理由をお聞きします。そこでぜひ、低学年にも教育委員会が手掛ける放課後の補習事業と連携して、自宅学習のやり方なども習得できるように支援していただければと思います。伺います。

A 成澤廣修区長:

これまでも、適宜、教育委員会と連携を図ってまいりましたが、今後も、様々な場において、児童生徒が家庭の経済事情に左右されずに学習習慣を身に付けられるよう支援してまいります。

Q 海津:児童生徒のための学校づくり

文科省は、全ての児童生徒が安心して通うことができ、安心して教育を受けられる学校づくりを求めています。児童生徒によっては、学業不振が不登校のきっかけになる場合もあります。確実に学習内容を身に着けることができるよう、これまで以上に授業内での個別指導、グループ指導、児童生徒の興味関心等に応じた課題学習など、指導体制を工夫改善し、個に応じた指導の拡充が求められています。

これまでの指導・配慮を見直し、魅力ある学校づくりに向けて改善していく点は何があるでしょうか。

A 佐藤正子教育長:

学力調査の結果を分析し、授業改善推進プランに位置付けて、教員が授業を改善することで、児童・生徒が「わかる」「できた」という授業になるよう努めております。

また、個々の児童・生徒や学級の状況に適したより良い指導の一助となるよう、学級集団アセスメントを活用してまいります。

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不登校になる原因のひとつとして、先生の不適切な言動、指導によることもあります。

以下についても聴きました。

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Q 海津:教員に対する指導履歴の引き継ぎ

区立学校の先生が、子どもの心情を理解することなく、否定的できつい物言いや怒鳴るなどを繰りかえすことから、子どもたちが学校へ行くことを渋ったり、自信をなくしたりという事例があります。その先生は区内の前任校でも同様の不適切な指導を行っていたと聴きました。そうした指導の履歴は引き継がれていないのでしょうか。そこで伺います。

先生が異動した際に、次の学校で同様の不適切な指導を繰り返さないようにするために、どのような仕組みを構築されるか教えてください。

A 佐藤正子教育長:

異動に際しては、校長が、転入時に面談を行うとともに、前任校の校長と情報交換を行い、教員の状況を理解し、特性を把握した上で、校務分掌等を行っております。今後も、適切な把握に努めてまいります。

Q 海津:指導に課題がある教員

また、教育委員会は、指導に課題がある教員がその課題を克服できるよう支援するためには、校長等の管理職からの聞き取りだけではフィルターがかかることも考慮し、その学校の全教職員からヒアリングを実施し、そうした教員の課題だけでなく、学校が抱える課題を把握し、多様な面から分析し、支援を実施することが重要です。

A 佐藤正子教育長:

管理職のヒアリングだけでなく、指導主事等の学校訪問や研修会等、様々な機会を通して、教員の状況や学校が抱える課題を共有するよう努めております。

指導体制や人的支援などについては、学校と連携しながら、実施してまいります。

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◆ 海津の視点

✓ ふれあい学級に通っていない不登校の子どもたちの約4割とはつながりが持てていない

ご覧の通り、答弁からは、ふれあい学級に通っていない不登校の子どもたちのうち約4割の子どもたちは、教育委員会等とのつながりがないことがわかりました。これがどれくらいの人数かを推計してみます。平成30年5月1日現在での児童・生徒数は、小学生8,791名、中学生1,992名。不登校の出現率が平成29年度と横ばいと仮定して不登校数を推計すると、小学校45.7名、中学校107.2名となります。10月1日現在でふれあい学級に通っている人数は小学生10人、中学生24人ですから、ふれあい学級に通っていない不登校の子どもたちのうちの約4割というのは、おおよそ48名程度の人数と推計されます。つまり、これくらいの人数の子どもたちとは、区の施策として、つながりを持てていないのが現実なのです。

にもかかわらず、約6割はフォローできている、と、現状をよしとしている答弁に終始しているように感じます。

✓ 「ふれあい学級」を「ふれあい教室」と言い間違う!?

また、教育センターに設置されている、不登校状態にある児童・生徒を支援する適応指導教室「ふれあい学級」について質問しているのに対して、答弁ではずっと「ふれあい教室」と表現しています。 しかし、平成30年版文京区教育概要でも、

適応指導教室(ふれあい学級)

おもに不登校状態にある区立小・中学校又は区内に在住する小学校4年生~中学生を対象に、学校復帰を支援するとともに、社会的自立を促すことを目的に、相談、適応指導、学習支援を行っている

(平成30年版文京区教育概要)

と明記されています。 「ふれあい教室」という名称はないのが実情です。

不登校の子どもたちを支援する拠点となるべき場所の名前すら違っているとしたら、課題認識の甘さと共に、施策や制度づくりに本気で取り組んでいないことの表れに感じられてなりません。

✓ 設置している教育センターのサイトに「ふれあい学級」の情報が一切ない!?

ちなみに、「ふれあい学級」が設置されている教育センターのホームページ http://www.bunkyo-tky.ed.jp/ed-center/ には、 「ふれあい学級」についての情報は一切書かれていません

本来であれば、ふれあい学級に希望して通ってくる児童生徒以外の不登校児童生徒に対しても、支援の中心的な役割を担うべきです。 が、ふれあい学級の情報すら提供されていないことは大きな課題です。 改善を求めていきます。

✓ 不適切な指導を繰り返す先生が「実際にいる」のは、現状の仕組みが機能していない表れ

不登校になる要因のひとつとしての教員の不適切な指導についても、「現状もちゃんとやっており、今後も適切な把握に努めていく」という、「現状をよし」とする答弁です。

前任校と同様の不適切な指導を繰り返す先生が「実際にいる」ということは、現状の仕組みが機能していないことの表れです。それを認めることをせず、改善策に言及すらしないのは「怠慢」と言うしかありません。

✓ 約2割しか通っていない「ふれあい学級」~他の学習支援が極めて希薄、具体的手立てもなし

不登校児童・生徒の中で、ふれあい学級への通所を希望しない子どもたちへの学習支援が希薄であることも浮き彫りになりました。

昨年施行された「教育機会確保法」は、学校に行くことが正しいことではないと認め、「学校を休んでもよい」「学校以外の場での学びの場も重要」であることを示した法律であり、国は自治体に対して、不登校の子どもたちが「教育をうける機会を確保するための施策」のために必要な財政上の措置を講じることを求めています。

答弁では、「教員、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーが連携して支援し、家庭と子どもの支援員、ふれあい教室、総合相談室、医療機関等の活用へつなげていくほか、ご家庭の考えや、本人の意思を確認しながら、民間団体や民間フリースクールなど様々な関係機関等を紹介しています」としていますが、前述したとおり約4割の子どもたちへはフォローするつながりさえないのが現実であることに目を背けています。さらには、紹介先の関係機関にしても、区が積極的に学校以外の学習機会の場を拡充しようという姿勢は残念ながら見えてきません

✓ 出会える大人の多様性が重要。「退職校長ばかりで学校みたいだからイヤ」の声も

不登校の子どもたちもそれぞれに背景や特性が異なります。自発的に選べる選択肢が多いほど、それぞれに合った居場所をみつけることが可能になります。様々な体験機会や出会いを通して、子どもたちの興味関心をモチベーションにして学ぶ意欲にこたえていくなど、実績のある民間団体との連携を促進して、学校やふれあい学級だけでなく、多様な学習支援の場を設置していくことが重要です。

その際、子どもたちが出会う大人も重要になります。ふれあい学級での退職した校長先生たちの採用ばかりではなく、子どもたちが親近感を持てるような若い世代など多様な人材を確保するNPO等の積極的な連携が必須です。

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文京区で増えている不登校。支援の手立ては、まったくもってこれからという見過ごせない状況です。29日の文教委員会でも引き続き、支援の拡充を求めていきます。

ご意見を寄せていただければ幸いです。

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文京区で増える不登校児童生徒への支援体制は!?
Atsuko Kaizu