新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、イベント中止などが余儀なくされているライブハウスや劇場などの文化施設に助成金を交付するよう求める署名運動、「#SaveOurSpace」。3月31日、発起人らがオンラインで記者会見を開き、30万筆以上の署名が集まったことを発表した。
国会や議員会館に嘆願書を提出へ
記者会見は、感染を避けるため、渋谷PARCOのスタジオ「DOMMUNE」からライブ配信で行われた。登壇者は一定の距離を開け、マスクを着用していた。
登壇したのは、署名の発起人となったスガナミユウさん(下北沢のライブハウス「LIVE HAUS」のオーナー)、篠田ミルさん(yahyelのメンバー)、 DJのMars89さん、賛同者のLicaxxxさん。
31日までに30万筆の署名が集まり、今後は国会や議員会館を訪問し、署名と嘆願書を提出する予定であることを発表した。
「文化芸術を補償対象のカテゴリーに入れてほしい」
国政府はイベントの延期や中止などを要請しているが、それによって生じた損失の補償制度は提言していない。
安倍首相は28日の会見で、「文化芸術スポーツは大変重要である。この火が一度消えてしまっては、復活するのは大変だということは重々承知している」と述べたが、「損失を補填する形で税金で補償するのはなかなか難しい」と、税金を使った補償制度は実施しない方針であることを示していた。
署名では、自粛要請によって多くの文化施設が困窮しているとして、
・施設の維持費
・従業員の給与
・イベントの製作経費(出演料、音響、照明)
・中止した公演の実損額
などを助成するよう求めている。
なお、厚労省は、業績が悪化した企業が雇用を維持するための「雇用調整助成金」を拡充する措置をとると発表している。発起人らは、今後の国会議員へのヒアリングをふまえて実効的な案に落とし込んでいきたいとしている。
発起人のスガナミユウさんは、「国が補正予算案の編成に入る上で、とにかくたくさんの声を届けようという思いで始めたのがこの活動です。税金をどこにあてるか考えてもらうためには、署名運動で、まず何に困っているか届けることが大事だと考えています」と説明。
「予算を検討する段階において、文化芸術を補償対象の一つのカテゴリーに入れてもらいたい」と語った。
海外に目を向けると、ドイツやイギリスなどでは、文化芸術への充実した公的支援が講じられている。篠田ミルさんは、「海外ではどんな事例があって、日本ではどこまで実現が可能かという具体的な話をしていきたい」とも訴えた。
「他の業種の方も、それぞれに声をあげています」
新型コロナウイルスが経済に与える影響はあまりにも大きい。
小池百合子都知事は30日の会見で、「若者はカラオケやライブハウス、中高年はバーやナイトクラブ、接客を伴う飲食店の出入りを当面自粛していただきたい」と呼びかけた。
スガナミさんによると、署名運動を続けるにあたり、「飲食など他の業界でも苦しい状況は同じだ」との声もあったという。
「それは本当にその通りだと思います」と前置きした上で、あらゆる業界で協力し合い、声を上げることが大事だと強調した。
「すべての人に問題が降りかかっている中で、音楽や劇場、アートに携わる人間として、この業界にはこういう問題があり、それを聞いてほしい、助成をお願いしたいという思いで声をあげています。他の業種の方々も、それぞれに声をあげています。業界ごとに必要な措置というのは異なると思います。それぞれの業界から上がってきた声を、国の方々には聞いていただきたいです」