地球を救うことは簡単ではないし、個人だけの責任でもない。私たち全員が努力する必要があるが、どこから始めれば良いのだろう?
環境のためにやるべき事はあまりに多すぎて、考えるだけで疲れてしまいそうだ。
地球上の二酸化炭素排出量の3分の2は、100社にも満たない企業によって排出されていると言われており、そのうちのいくつかは大規模な国際石油会社だ。
2021年の国際気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)では、プライベートジェットで開催地スコットランドのグラスゴーに降り立った、世界有数の富豪たちが排出する二酸化炭素量に改めて注目が集まった。
そういった光景を目にすると、一般人の自分が地球を救うためにできることなんて殆どないのではないかと思ってしまう。
しかしそんな中、新しい気候変動活動「The Jump」が「less stuff, more joy(より少ないもので、もっと楽しく)」というキャッチフレーズで、地球に良い変化を与えるために私たちが出来ることを軸としたキャンペーンをイギリスで開始した。
その内容は、たった6つのシンプルなアクションに集約されている。
The Jumpの共同創設者でありエネルギーと気候の専門家であるトム・ベイリー氏によると、このプロジェクトは、Arup(エンジニアリング・コンサルティング会社)、 C40 Cities(気候変動に闘うため協力する市長ネットワーク)、そしてリーズ大学が2年間協力・研究して生まれたものだという。
「この分析では、幅広い専門家チームが膨大な量の査読済みデータをまとめ、コンピューターモデルを構築し、地球温暖化を1.5度に抑えるために世界経済全体で必要な変化を検討しました。そしてその実現のためには、誰が(市民・産業界・政府や都市など)「主要な影響力」を持っているかを特定しました」とベイリー氏は語る。
「結論は、気候破壊を回避するために必要な影響の73%は、再生可能エネルギーの飛躍的拡大、低酸素交通インフラの提供、サプライチェーンの脱炭素化などの、政府や産業界が主な責任を負う行動からもたらされるという事でした」
その一方、研究者は私たち市民が変化を起こすことができる6つのアクションを特定した。上にあげたような大きなシステム変化を起こすよう、政府や大企業に圧力をかけることも含む、6つの行動を以下に紹介しよう。
1. 良いものを長く使おう
【科学的に基づくアドバイス】電気製品は少なくとも7年は使用しよう
「ガジェットへの依存や、モノを買うこと全般は、炭素排出の原因の一つだ」と報告書は説明する。
電気製品のためのレアアースを抽出し、大量の製品を製造することは、相当な炭素を排出する。多くの場合、製品使用に関わるエネルギーによる排出よりも多いという。
できるだけ新しい電気製品は買わず、修理したり、借りたり、中古品を買ったり...もし新品を買う必要があるなら、最低限にとどめよう。
2. 自家用車の使用は避けよう
【科学的に基づくアドバイス】どうしても必要ではない限り、個人で自家用車は持たないで
研究によると、世界全体で輸送は温室効果ガス排出全体の約4分の1を占め、その3分の2以上は道路を走る車のエンジンから排出されているという。同研究では、自家用車の使用が、渋滞、騒音公害、大気汚染という三重苦を引き起こしており、人類が直面している世界的な健康リスクの一つになっているという。
「私たちの多くは車を所有することに慣れ、時には複数の車を所有することもある。車の保有台数は世界的に増加しており、2040年までに再び倍増すると予想され、大きな気候問題に繋がっている」と報告書は述べている。
もしあなたが車の購入を考えているならば、新車を買うのは控え、他の移動手段を見つけることを勧めている。例えば、カーシェアなんかどうだろう?
3. 環境に配慮した食生活をしよう
【科学的に基づくアドバイス】プラントベースを主とした食生活に移行しよう。買ったものは全て食べ、適度で健康的な量を摂取しよう。
食に関する行動を変えることは、全ての変化の中で最も影響があるという。研究によると、世界全体の温室効果ガス排出量の25%は、食品システムからきているからだ。
もし私たちが地球を助けたければ、より環境にやさしい食生活をする必要がある。食生活を変えるための3つの方法を紹介しよう。
・プラントベースの食事に移行しよう
肉や乳製品を、全体の温室効果ガス排出量が比較的低い植物性代替品に変え、主にプラントベースの食事にするようにしよう。全てはなくても、一部だけでもシフトしてみよう。
・買ったものは全て食べよう
食品を生産し、食卓に並ぶまでにかかる資源と排出量を無駄にしないよう、食品は捨てないようにしよう。
・健康的な量を食べよう
食べ過ぎないようにしよう。「健康的な量」は体型や運動量にもよるため、それぞれの人で違う。自分にちょうど良いと思える量を見つけよう。
4. レトロ・ファッションを楽しもう
【科学的に基づくアドバイス】1年に購入する洋服は3着まで
衣料品と繊維産業は、今や国際航空業界と海運を合わせたよりも多くの温室効果ガスを排出しているという。「ファストファッションにより、私たちは過去最速のスピードで服を買い替えているのです」と報告書は述べている。
私たちが購入する服は、それぞれ二酸化炭素の排出に加担している。それを減らすために、新しく買う服を減らし、代わりに古着を買ったりリサイクルをしよう。
5. 休暇は近場で
【科学的に基づくアドバイス】飛行機での旅行は、短距離フライトを3年に1回にとどめて
報告書には、「航空業界は現在、世界の二酸化炭素排出量の約2%を占めており、他のどの交通手段よりも増加している。また、飛行機は非常に不平等であり、イギリスでは全フライトの70%が人口のわずか15%によって利用されている」と述べられている。
持続可能なフライト量は、3年に1回の短距離往復フライト(1500キロ未満)だという。長距離往復フライトでは、距離にもよるが、8年に1回ほどだという。
6. システムを変えよう
【科学的に基づくアドバイス】世界のインフラ、経済、金融システムの大幅な改善が必要である。これは政府と企業の仕事だが、私たち市民が後押しする必要がある。
Jumpの調査は、世界がゼロカーボンを達成するためには大きな変化が必要だと指摘する。化石燃料を再生可能エネルギーに移行し、建物や産業のエネルギー効率を高め、グリーンテクノロジーに投資し、暖房や輸送を電気に変え、サプライチェーンを脱炭素化することだ。
「企業、政府、個人は、それぞれ単独で気候変動を解決することはできない」「それぞれが必要な変化を起こし、協力し合わなければならない。個人の行動だけに依存するのではなく、みんなで行っていくことが重要だ」と述べている。
この6つの誓約を口にするのは簡単だが、実際に実行するのは大変なことだ。しかし、イギリスでは多くのコミュニティがすでにイベントや子ども向けワークショップを開き、行動を始めているとベイリー氏は述べた。
「『挑戦するだけでも価値がある』と考え、やってみましょう。100%はできなくても、これらの行動に挑戦し、ベストを尽くすだけでも影響はあるのです」
ハフポストUK版の記事を翻訳・編集しました。