サウジアラビアで反汚職キャンペーンの一環として王族少なくとも11人を含む多数の富豪が逮捕されたことが昨夜(11/05)報道された。この中には投資家として世界的に著名なアルワリード・ビン・タラル王子(Prince Alwaleed bin Talal)も含まれており、ビジネス界に大きな衝撃を与えたことは間違いない。
アルワリード王子は大型投資会社、キングダム・ホールディング・カンパニー(Kingdom Holding Company)のオーナーであり、世界でもトップクラスの大富豪として知られている。同王子はNews Corp.(ただし大部分の大部分の株式を売却)、Citigroup(1991年から株式所有)、衛星テレビ網に加えて多数のテクノロジー企業の大口株主でもある。
アルワリード王子とキングダム(王子が95%を所有)は2011年に初めてTwitterに投資した。これはTwitterが2015年に上場する2年前で、出資額は3億ドルだった。アルワリード王子はその後Twitterにさらに5000万ドルを投資し、持ち分を拡大している。昨年はTwitterの最大の株主の1人となっていた。
2013年にキングダムは中国のネット通販業、JD.Com(京東商城)の株式の2.5%を買収した。翌年JD.ComはNasdaqに上場し、株価はほぼ2倍になった。
アルワリード王子は昨年末、ライドシェアリンングのLyftにも投資している。これはLyftへの初期の投資家、Andreessen Horowitzとピーター・ティールのFounders Fundが所有していた株式の一部を購入したものだ。
また2015年3月、アルワリードらキングダムのトップはSnapのCEO、Evan Spiegel、同社の最高戦略責任者、 Imran Khanと投資の可能性をめぐって会談したことを発表した。ただし数か月後、キングダムに近い筋は「アルワリード王子はSnapに投資する予定はない」と語っている。
New York Timesの記事によれば、今回の逮捕は現サルマン国王の息子で最高顧問でもあるビン・サルマン皇太子への権力集中を図るためとみられる。サルマン国王は逮捕の発令に数時間先立って皇太子をトップとする反汚職委員会の設立を命じたとされる。
英国のTimesによればリヤドのリッツ・カールトン・ホテルは一時的に閉鎖された。これは逮捕された王族を収容するためのようだ。また王族らの国外逃亡を防ぐため自家用機専用空港も閉鎖されている。
昨年、アルワリード王子はビル・ゲイツが主唱し、ウォーレン・バフェットが賛同した「個人資産の大部分をチャリティーに寄付する」というGiving Pledgeに参加した。これに参加した富豪にはSalesforceのCEO、マーク・べニオフ、Airbnbの3人の共同ファウンダー(Brian Chesky、Joe Gebbia、Nathan Blecharczyk)、Intuitのファウンダー、Scott Cookらが含まれる。Timesによれば、サウジアラビアの反汚職委員会がアルワリード王子の個人資産(320億ドル)を差し押さえるかどうかは現在不明だ。
サウジ内外でMBSという呼び名で知られるモハメッド・ビン・サルマン(Mohammed bin Salman)皇太子は2015年にサルマン国王が即位し、サルマン王子を新たに皇太子に任命して以後、長兄らと激しい権力闘争を繰り広げきた。Washington Postによればリヤドはゲーム・オブ・スローンズのような空気に包まれているという。32歳になるサルマン皇太子は「サウジを近代化して救うかもしれないが、崖から突き落とすかもしれない」とささやかれているという。
先月リヤドで開催され、ピータ・ー・ティールらが参加した投資フォーラムで、MBSは「サウジアラビアを穏健なイスラム国家に戻し、〔1979年のイラン革命以前の〕有力な地位を取り戻ねばならない」と語った。
またサルマン皇太子は「サウジアラビア国民の7割は30歳以下だ。彼らは今後30年も過激主義者の下で暮らしたくないと考えている」と述べた。
4月にはサルマン皇太子はVision 2030と呼ばれる経済改革のロードマップでサウジを代表する国営企業、アラムコ(Aramco)を上場させて株式の5%を売り出す計画を発表した。アラムコ株の販売は当初サウジ国内市場向けとなるが、少なくとも1箇所の外国の証券取引所に上場される。昨日、トランプ大統はアラムコの上場についてニューヨーク証券取引所(NYSE)を選んでもらいたい」とツイートした。トランプ大統領は「これはアメリカにとって重要だ!」としている。【略】
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(翻訳:滑川海彦@FacebookGoogle+)
(2017年11月6日TechCrunch日本版「サウジのアルワリード王子ら汚職容疑で逮捕――テクノロジー・ビジネスに衝撃」より転載)
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