PRESENTED BY サノフィ

革新的なサイエンスで「アンメット・ニーズ」を満たす。仏グローバルヘルスケア企業が日本の女子学生を支援する理由

DE&I戦略とDE&I推進の取り組みについて、仏グローバルヘルスケア企業のサノフィ株式会社執行役員 人事本部長 榎本忠行さんを取材した。

昨今、企業におけるDE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)推進の機運が高まっている。

「部門や国籍、性別、考え方の違いなど、さまざまな垣根を乗り越え、多様な個が集まり一つになることがイノベーションの糧になる」

そう語るのは、フランス、パリに本社を置くグローバルヘルスケア企業のサノフィ株式会社執行役員 人事本部長 榎本忠行さんだ。

同社のDE&I戦略とDE&I推進の取り組みについて話を聞いた。

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サノフィ株式会社執行役員 人事本部長 榎本忠行(えのもと・ただゆき)さん
tomohiro takeshita

革新的なサイエンスで「アンメット・ニーズ」を満たす

―サノフィのミッションについて教えてください。

私たちは「人々の暮らしをより良くするために、科学のもたらす奇跡を追求する」というミッションを掲げています。

「より良い暮らし」というと、病気を完全に治すことをイメージするかもしれません。もちろん、病気の完治は重要です。一方で、慢性疾患などにより薬と長期的に付き合っていくケースもある。そうした患者さんの生活の質を向上させることも意味しています。

そして、この「より良い暮らし」を実現するために欠かせないのが「科学のもたらす奇跡」。

私たちは、「アンメット・メディカル・ニーズ(まだ満たされていない医療ニーズ)」への対応、つまり、今まで世の中になかった薬を出すことを主眼に置きビジネスをおこなっています。

しかし、創薬の成功確率は23,000分の1(※)と言われており、「科学のもたらす奇跡」でも起こさなければ、アンメット・ニーズを満たす薬は届けられません。

※出典「製薬協ガイド2024」

そうした考えから、「ミラクル・オブ・サイエンス(科学のもたらす奇跡)」を追求しているのです。

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tomohiro takeshita

―ミッションを通じて、どのような企業を目指しているのでしょう?

サノフィの目指す姿として、大きく3つあります。

1つ目は、「サイエンス・ドリブンの組織にする」こと。

私たちは「不治の病」と呼ばれるような、希少疾患の治療や予防も目指しています。こうした領域において、薬の革新性が重視されます。

したがって、サノフィのような新薬メーカーとしては、今まで以上にサイエンス主導の組織になることが求められているのです。

2つ目は、「イミュノロジー(免疫)領域で世界のリーディングカンパニーになる」ことです。

私たちは、狭義の免疫疾患の治療薬だけでなく、人間の免疫に作用する薬で、さまざまな病気を治していくことを目標にしています。

サノフィはアトピー性皮膚炎、気管支喘息、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎などの免疫疾患の治療薬を開発、販売しており、イミュノロジー(免疫)領域の先端にいます。したがって、他社と圧倒的に差別化できると考えています。

そして、3つ目は「モダンな組織にする」こと。

具体的には、ビジネスの最前線でAI活用を進めていきたい。

たとえば、リアルタイムの通訳・翻訳機能や自動議事録作成機能を使うことで、無駄のない海外との会議を実現する。また、営業活動のデジタルアシスタントやAIが組み込まれたダッシュボードを活用して、データドリブンな意思決定をおこなう。こうしたAIの利活用によって、業務を高度化・効率化し、「ワーク・スマート」でありたいと考えています。

 

ステークホルダーのDE&Iを拡充する、サノフィの戦略

―DE&I戦略について教えてください。

サノフィでは、3つの柱でDE&Iを推進しています。

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サノフィのグローバルDE&I戦略
サノフィ提供

1つ目が「リフレクト(反映する)」

DE&Iの「D(ダイバーシティ)」や「E(エクイティ)」に対応するところで、「多国籍な人口構成にする」「男女同等にする」ことなどを通して、多様な人たちが働いている状況をつくることを目指しています。

2つ目が「アンリーシュ(解き放つ)」

DE&Iの「I(インクルージョン)」に対応します。たとえば、オフィスをバリアフリーにして、障がいがある方も働きやすい環境をつくったり、心理的安全性について学ぶワークショップを開いたり。誰もが自分のベストを発揮できる環境づくりをおこなっています。

3つ目が「トランスフォーム(変化する)」

この柱は、より対外的な戦略です。

サノフィは135の国と地域で事業展開をしており、140以上の国籍・約9万人の社員がいます。事業内容としては、生活習慣病から希少疾患まで、幅広い薬剤と予防医薬に貢献するワクチンを開発、提供しています。

多様性に富んだ企業であるからこそ、ステークホルダーのDE&Iを拡充することで、社会を変える助力ができると感じています。

たとえば、多様な患者さんのニーズに応えるため、治験などの臨床実験においてもダイバーシティ比率を考慮しています。こうした取り組みによって、社内外のDE&Iを推進しています。

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tomohiro takeshita

画一的な組織でイノベーションは生まれない。理系女子学生をいかに増やすか

―DE&Iの取り組みについて教えてください。

私たちは、全従業員が参加するという意味の「all in」をスローガンに、DE&Iに取り組んでいます。 とくに、DE&Iに富んだ職場環境を築くことを目的に、従業員主導で活動する、ERG(※)に力を入れています。

※「Employee Resource Group」の略称。「従業員リソースグループ」とも呼ばれ、企業の中で共通の課題意識をもつ従業員により構成される組織のことをいう

サノフィには、障がいのある方を支援する「Ability+」、男女平等を推進する「Gender+」、世代による格差を解消する「Generation+」、国籍の違う社員のコラボレーションを促進する「Culture & Origin+」、LGBTQ+にフォーカスした「PRIDE+」という5つのERGがあり、社内イベント等を活発に企画、実施。イニシアチブを発揮しています。

人事部門としては、ジェネレーションという側面で、若手社員比率を上げるため、昨年新卒採用を復活させました。海外で勉強している日本人学生を中心に採用活動をおこない、9月までに7名の方に入社いただきました。

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tomohiro takeshita

また、ジェンダーという側面では、社員の男女比率を50:50を目指し、中途採用では女性の入社が7割となりました。

さらに「A Million Conversations」というマイノリティの人々と医療関係者との信頼関係の構築を目標に掲げたプログラムの一環として、日本の女子学生を対象に奨学金の支給、メンタリング、インターンシップの機会を提供するなどのキャリア形成支援もおこなっています。

日本は理工系へ進学する女子学生の割合が諸外国と比較して低いこと、また、男女の大学院進学率に大きな格差(女性5.6%に対して、男子14.2%)があることが指摘されています。

サノフィが、いくら「テクノロジーやライフサイエンス、医療の領域でイノベーションを生みたい」と考えても、そもそも女性の理系人材が少ない。多様性を欠いた組織では、イノベーションは生まれづらい。こうした課題があります。

この課題を解決するために、「A Million Conversations」を通じて、とくに医療・テクノロジー・ビジネスの領域を真剣に学んでいる女子学生を支援しているのです。昨年は、医療や医療経済を勉強している4名の女子学生にプログラムを活用していただきました。

また、DE&Iを推進し社会に貢献していくため、サノフィではCSR活動も推進しています。たとえば、「We Volunteer」というサイトを立ち上げ、多くの社員の皆さんが主体的に活動しています。また、ボランティア活動をプラットフォーム化し、社員が積極的にボランティア活動に参加できるようにしています。

さらに、脱炭素と患者さんのQOL向上を目的として、自宅療養をサポートする活動もおこなっています。

在宅自己注射を普及させることで、患者さんが病院に行く頻度を減らすことができます。つまり、移動頻度が減り、CO2削減につながる。それと同時に、病院に通う患者さんの負荷を軽減することもできます。

そのほか、病院の先生との面会をオンラインで実施、出張移動手段の見直しや社用車を段階的にEV化するなど、脱炭素だけでもさまざまな活動をおこなっています。

こうした活動の結果、米国のタイム誌の「World’s Most Sustainable Companies 2024」では、製薬業界で1位、世界で7位にランクインしました。

―今後の展望を聞かせてください。

サノフィでは、チームが一丸となり、人々の暮らしをより良くするために、科学のもたらす奇跡を追求する「One Sanofi」というカルチャーを非常に大事にしています。

それは、部門や国籍、性別、考え方の違いなど、さまざまな垣根を乗り越え、多様な個が集まり一つになることがイノベーションの糧になると信じているからです。

したがって、DE&Iを「nice-to-have(あった方がいいもの)」と捉えるのではなく、経営戦略の中核に据えています。今後もDE&Iの推進を加速させていきたいと強く思っています。

また、人事部門としては、サノフィを「唯一無二の人材輩出会社」にしたい。とくにグローバル人材の育成には注力しています。

この1年を振り返っただけでも、社内GIG(※)やローテーションなど、さまざまな形で5か国のメンバーが日本の人事部門で働きました。

※社内GIG:従業員のスキルや興味に合った短期間のプロジェクトや実地体験

昨今、多くの企業では、日本の人材を海外に送り、グローバルで成功させることにチャレンジしていると思います。

そこを私たちが上手く軌道に乗せることで、「唯一無二の人事がグローバルで活躍する人材を育成し、ビジネスを助けている」――そんなサノフィの評判を広げていきたいですね。

 

写真:tomohiro takeshita

取材・文:大橋翠