産経ニュース「サクラ報道」は当事者に取材せず 記事削除し謝罪

産経ニュースが報じた記事が当事者への取材をしておらず誤報だったとして、産経新聞社は記事を削除し、関係者に謝罪した。

産経ニュースが報じた記事が当事者への取材をしておらず誤報だったとして、産経新聞社は記事を削除し、関係者に謝罪した。

問題の記事は、16日午後6時55分に配信された「TBS番組『街の声』の20代女性がピースボートスタッフに酷似していた?! 『さくらじゃないか』との声続出」という記事。

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産経ニュースの記事。現在は削除されている。

舛添要一知事が辞職願を出した15日の午後に、東京都内でTBSテレビのニュース番組の取材に応じた女性が、同じ番組で熊本地震の後に「熊本・益城町の避難所前にマイクを持って立ち、レポートしたピースボート災害ボランティアセンターのスタッフの女性と酷似していた」として、「ネット上では『同一人物か』『やらせと一目で分かる』『ピースボートの職員をやらせに使うTBSはどういう思考回路か』などの書き込みが続出した」と報じている。

これに対し、ピースボート災害ボランティアセンターは17日、「記事内の写真の女性が当団体スタッフではない」「当団体に一切の確認もない」と、産経新聞に抗議文を送り、回答を求めた。

4月21日に熊本で「Nスタ」のインタビューを受けた当該女性スタッフは、現地災害救援活動のため 6 月 15 日の報道当日を含め5月、6月中は熊本に駐在しており、そもそも東京での街頭インタビューに応じられるわけがありません。

また、当該スタッフと街頭インタビューの女性が同一人物かどうかは、当団体に確認を取れば明らかになることにもかかわらず、当団体には事前に一切の連絡もなく、単なる憶測で書かれたものと思われます。大手マスメディアとしての自覚がないばかりか、悪意さえ感じる内容です。

6月16日付 産経ニュースの記事についてより 2016/06/17)

抗議を受け、産経新聞社は記事を削除し、ピースボートからの抗議文を掲載した。その後、午後3時ごろにピースボート側に回答書を送り、産経ニュースにもアップした。

ご指摘通り、記事化する際、TBSおよびテレビ朝日に取材するだけでなく、貴団体にも取材すべきだったにもかかわらず、これを怠っておりました。

貴団体およびスタッフに多大なご迷惑をおかけしましたことをお詫びいたします。

ピースボート災害ボランティアセンターへの回答書 - 産経ニュースより 2016.6.17 15:49)

ピースボート災害ボランティアセンターの合田茂広理事はハフポスト日本版の取材に「指摘されたスタッフに対してはネット上で誹謗中傷が広がってしまっている。再発防止のために全力でやってほしい。1回連絡すれば済むのに、それを怠った姿勢は改めてほしい」と述べた。

また、山本隆・代表理事名でも「安易な取材姿勢により、すでにインターネット上で拡散されてしまったいわれのない誹謗中傷が当該女性スタッフをひどく傷つけた事実を十分に反省し、二度と同じようなことが繰り返されないよう再発予防を徹底していただきたい」「そもそもまったくの事実と反する個人のSNSによるコメントが、さらに事実を確認せず拡散された経緯があります。事実と異なるSNS情報が噂話として広がることで、個人の人権と安全を著しく損なう危険性があることを、全国のネットユーザーの皆様にも理解が広がることを期待しています」とのブログを掲載した。

ハフポスト日本版は、産経新聞社に記事化の経緯や再発防止策などの質問事項をFAXで送った。同社は「個別の記事についてはお答えできません」と回答した。