「一人一人の事情が違うから、必ず聞いてほしい」
同性婚を認めないのは憲法に違反しているとして、全国の同性カップルらが国を訴えている裁判。
2020年2月3日に開かれた東京訴訟の口頭弁論では、原告の一人である小野春さんが田中寛明裁判長に対して、原告それぞれの事情を直接聞いてほしいと訴えかける一幕があった。
小野さんはパートナーの西川麻実さんと、15年間子育てをしてきた。子どもたちは過去に男性と結婚していた際に生まれたが、その時と今の暮らしは「何ら変わらない」ものだという。
しかし、二人は同性カップルであるため共同親権がなく、小野さんが産んだ子どもと西川さんの関係を法的に証明することができない。過去に小野さんに乳がんが見つかり、精神・肉体的に苦しかった時も西川さんの扶養に入れないなど、同性婚が認められないことによる困難と直面してきた。
昨年4月の第1回口頭弁論で、小野さんは意見陳述し、「共に泣いて、笑って、悩んで、喧嘩もして、共に子どもを育ててきました。それなのに、なぜ法律で家族であると認めてもらえないのでしょうか」と語った。
法廷では小野さんに続いて西川さんも立ち上がり「私たちの生活実態は想像がつかないかもしれないけれど、お願いします」と発言した。
ハフポスト日本版の取材に対して、小野さんは、裁判官に直接訴えかけた理由をこう話した。
「法律的な問題によって、私たちが実際の暮らしで困っているということを裁判官の方々が分かっていれば、このような裁判にはならなかったのではという気持ちがありました」
◾️同性婚を認めない法律の存在自体が、差別を生み出している
この日の裁判で原告側は、異性間のみの婚姻を認めている今の法律は、憲法24条2項が保障する「個人の尊厳」に反していると主張した。
憲法24条2項は、配偶者の選択や相続、婚姻などに関する事項について、個人の尊厳と両性の本質的平等に基づいて法律を制定しなければならない、とされている。
原告側の仲村渠桃弁護士は異性婚のみ認める法律が憲法24条2項に反している理由をあげ、性的指向、つまり自分が誰を好きになるのかというのは人格やアイデンティティに根付いているもので、それを理由に結婚という制度の利用を認めないのは個人の尊厳を侵害している、と話した。
「性的指向は自分で変えられないもの。これを変えることができないということは、制度が変わらなければ婚姻をする自由そのものが永久に奪われている」
「法律上の相続や親権、在留資格など、日本で社会生活を送っていくのに非常に重要な権利が婚姻に紐付いている。同性愛者に婚姻が認められないということは、社会生活を送る上で非常に重要な権利や利益を奪っている」
仲村渠弁護士は、同性愛者の婚姻を認めない法律の存在自体が、同性カップルに対する偏見や差別を生み出しているとも言う。
「『異性カップルと違って、同性カップルは法律で認められていない存在』『異性カップルより劣った存在』という偏見や差別をこの法律自体が生み、社会に蔓延させている。それがずっと同性愛者たちの人権、権利、尊厳を害してきた」と話した。
◾️️全国一斉提訴に対して国側は?
原告側はこれまでに、国が同性婚を認めないのは憲法24条1項の「婚姻の自由」と憲法14条1項の「平等権」を侵害しているとも主張。
それらに対し国側は「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し」と規定されている憲法24条1項の「両性」という文言は、男女を表していると反論。
現行の憲法が制定された当時、同性同士の婚姻を想定していなかったため同性婚を認めないのは憲法違反ではないとし、昨年10月の第3回口頭弁論では「婚姻は子を作って育てるためのもの」と主張した。
昨年2月14日に全国の同性カップルらが国を相手に一斉提訴をしてから約一年。同性婚の実現を求める裁判は現在、札幌・東京・名古屋・大阪・福岡の全国5地裁で続いている。東京訴訟の次回期日は5月13日に開かれる。