橋下徹大阪市長が日本維新の会の結党を宣言してから9月12日で1年が過ぎた。橋下氏の人気を背景に2012年12月の衆院選では第3党に躍り出たが、橋下氏の従軍慰安婦発言をめぐる問題もあり支持率は低下、参院選では苦戦し、結党当初の勢いは見られない。橋下氏が進める「大阪都構想」が争点となる堺市長選(9月15日告示、29日投開票)は、維新の会にとって正念場。「今回が本当の大戦」と言う橋下氏の今後の国政での影響力にも関わる選挙となる。
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日本維新の会は大阪維新の会を母体に、国会議員7人が合流して結党。衆院選直前の2012年11月に石原慎太郎氏率いる太陽の党が合流し、「第3極」として注目を集め、12月の参院選では54議席を獲得し第3党に躍進した。しかし、太陽の党との合流は政策の違いも目立ち、合流直後から意見対立が表面化した。2013年5月には橋下氏の従軍慰安婦発言が国内外から批判を受け、石原氏が橋下氏の言動を批判するなど党内の混乱も拡大した。7月の参院選では8議席にとどまった。
結党当初の勢いにも陰りが出ている。産経新聞とFNNの合同世論調査によると、維新の会結党直前の2012年9月の調査で、維新の会は次期衆院選の比例代表の投票先としての支持率は23.8%でトップ。しかし、参院選期間中だった2013年7月の調査では自民党の41.9%に対し、維新の会は6.5%、その後も支持は伸び悩み、8月の調査でも8.9%にとどまっている。MSN産経ニュースによると、維新の会が自前の政治家養成機関としての役割を担った「維新政治塾」の卒塾生も「二極化」。「地方分権の根本ともいえる都構想が進まないと、地方は終わってしまう。維新スピリットを広めると同時に、維新への恩返しをしたい」と意気込む卒塾生がいる一方、「維新が大好きという人と、僕のように日本の状況を憂いて入った人がいて、時間がたつほど理念のずれを感じた」との声も漏れる。
■「大阪都構想」の成否占う選挙、オリンピック招致の話題ですら火花
橋下氏が推進する「大阪都構想」の成否を占う堺市長選は、維新の会や橋下氏にとっても正念場となりそうだ。
堺市長選には現職の竹山修身市長と、橋下氏が率いる地域政党「大阪維新の会」の西林克敏・元市議が立候補を表明している。時事通信によると、竹山市長は4年前の市長選で当時大阪府知事だった橋下氏の支援を受けて初当選したが、その後、橋下氏が打ち出した堺市の再編を伴う都構想に反対の立場を鮮明にした。橋下氏は全面対決の構えだ。
9月12日、大阪市内で開かれた大阪維新の会のパーティーで橋下氏は竹山市長を名指しし「絶対に倒したい。今まで5、6回言ってきたが、今回が本当の大戦だ」と強調。パーティーに先立ち橋下氏は大阪市役所で記者団に、西林氏敗北の場合、都構想実現に「ものすごく影響がある」と認めたとMSN産経ニュースが伝えている。
オリンピック招致についての話題でも、火花を散らした。橋下氏は9月10日、東京オリンピック招致成功にからめて「大阪府、堺市、大阪市が一本化しないことにはオリンピックは呼べない」と述べ、大阪都構想の必要性を強調。これに対し、竹山市長は「オリンピックと都構想は関係あるんですかね」「その頃には関西州できてるんちゃいますの」と皮肉ったという(朝日新聞デジタル「橋下氏「五輪招致には大阪都」 堺市長「関係ある?」」2013/9/11)。
維新の会は国家意義員や秘書などを投入し選挙態勢を強化し、総力戦で臨んでいると伝えられるが、石原氏が都構想に苦言を呈するなど、一枚岩になれるか不透明だ。
■選挙結果が国政に影響?
朝日新聞デジタルによると、堺市長選では、自民党が現職の竹山市長の支持を、公明党が自主投票を決定している。自民党大阪府連は推薦を求めていたが、自民党は支援のレベルがより弱い「支持」にとどめた。憲法改正などで橋下氏との協力を模索する安倍政権が維新の会に配慮したとの見方がある。
在阪維新幹部の間では、橋下氏をめぐる次のようなシナリオが浮上しているとMSN産経ニュースが報じている。
維新、民主、みんな3党の中堅・若手議員による勉強会などを通じ、価値観を共有できるメンバーを選び新党を結成。その間に橋下氏は都構想を実現させ、衆院選に新党から出馬する。当面、大阪に軸足を置くことで、「維新発祥の地」で足元も固め直す-。
「橋下氏、試練のとき 国政進出の カギ握る堺市長選」(2013/8/31)
朝日新聞デジタルは、衆参両院で与党が過半数を占める中、大阪の維新内では、衆院議員の任期満了と次の参院選がある3年後までの間に、維新の統治機構改革の象徴である都構想が実現すれば、「次期衆院選で再び橋下待望論が出る」(幹部)との見方も根強い、と伝えている(朝日新聞デジタル「維新、都構想へ正念場 成否占う堺市長選、来月実施 国政での影響力左右」より。 2013/08/14)。
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