安倍首相が19日、佐賀県鳥栖市にある「サガハイマット」を視察し、「日本の先端技術を結集した素晴らしい施設」と絶賛した。聞きなれない「サガハイマット」の正体とは?
産経新聞によると、
「日本の物理学、医学などの力を結集した素晴らしい施設だ。世界中から鳥栖に治療に来ると思う。日本にしかできないことだ。国も大いに力を入れたい」。首相は、加速器室と治療室を視察し、施設の担当者にこう強調した。
(産経新聞 2013.5.20 02:10)
「サガハイマット(SAGA HIMAT)」は「SAGA Heavy Ion Medical Accelerator in Tosu」の頭文字を取ったもので、正式名称は「九州国際重粒子線がん治療センター」。5月1日に九州新幹線「新鳥栖駅」前にオープンした。国内では4番目、九州では初めての重粒子線がん治療施設になる。民間施設としては全国初。
重粒子線治療装置のほか、次世代型装置の「3次元ビームスキャニング照射装置」などを導入して世界最高水準の放射線治療を行なっていく方針だ。
■「重粒子線がん治療」とは?
センターのホームページによると、「重粒子線がん治療」とは放射線治療法の一つで、がん病巣にピンポイントで効果的に照射することができるのが特徴。従来のエックス線やガンマ線治療では届かないような体の深い部分にあるがん病巣に効果を与えることができ、正常細胞へのダメージも最小限に抑えることが可能。また、陽子線に比べてがん細胞の破壊力が2〜3倍と大きいため、照射回数を少なくして治療期間を短くすることができるという。患者への負担が比較的軽いので高齢者や忙しい会社員なども通院治療を受けられるようになると期待されている。
治療は、がん患者かかりつけの主治医や医療機関などがサガハイマットの医師と相談・初診予約をした上で始まる。治療は1日1回、照射時間は1〜2分程度。準備時間を含めても全体の治療は30分ほどで終わる。ただ、先進医療の費用は患者の全額自己負担となるため、治療費は300万円と高額。通常治療と共通する診療・検査・薬代などの費用については公的医療保険が適用される。
工藤センター長は以下のように語る。
かつての放射線治療は、進行がんの患者さんの最後の治療法として選択されることが多かったため「放射線治療ではがんは治らない」というイメージがありました。しかし、早期に発見し、きちんと治療すれば、エックス線など従来の放射線治療で多くのがんは治ります。画像診断などの技術も向上し、放射線治療の精度と効果は高まっています。重粒子線はエックス線に比べると副作用が少なく、さらに高い効果が期待できます。また、治療期間も短くなります。
■どんながんが治療の対象になる?
「ひとつの部位にとどまっている固形のがん」が治療対象。たとえば、脳腫瘍、肺がん、肝臓がん、直腸がん、前立腺がんなど。ほかにも、食道がん、子宮がん、すい臓がんなどが臨床試験中だ。白血病などの血液のがん、広範な転移があるがん、過去に放射線治療を受けているがん、胃がんや大腸がんなど不規則に動く臓器のがんなどは治療の対象とならない。
なるほど、近未来的な名前にふさわしい世界最先端の医療技術が提供されるようだ。安倍首相の期待にこたえ、「サガハイマット」が世界でも知られる固有名詞になるか。
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