【UPDATE】(2017/12/05 16:48)
第30期竜王戦七番勝負の第5局2日目が12月5日、鹿児島県指宿市「指宿白水館」で指され、挑戦者の羽生善治棋聖が渡辺明竜王を87手で破り、通算4勝1敗でタイトルを奪取。史上初の「永世七冠」資格者となった。
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将棋の第30期「竜王戦」七番勝負(読売新聞社主催)の第5局2日目が12月5日、鹿児島県指宿市「指宿白水館」で始まった。
これまでの4対局では、挑戦者の羽生善治棋聖が渡辺明竜王に対し、3勝1敗でリードしている。
通算6期の「竜王」を経験している羽生棋聖。この対局に勝利すれば「永世竜王」の資格を獲得し、前人未到の「永世七冠」が実現する。
午前9時、羽生棋聖の封じ手が開封され、対局がはじまった。羽生棋聖の封じ手は、本命視されていた「▲4六飛」だった。
戦型は「角換わり腰掛銀」。羽生棋聖の「2五桂」が相手陣に睨みを効かせ、攻めの姿勢を強めている。
羽生棋聖は57手目で「▲6八銀」と、渡辺竜王の「5七竜」を狙う手を放った。これに対し、渡辺竜王は長考。47分を費やし「△4八竜」と応じた。
さらに羽生棋聖は59手目に「▲5七角」を放ち、自陣の「玉」を固めつつ攻めている。2日目昼時点で、形勢は「羽生有利」のようだ。
午後12時30分、両者は昼食休憩に入った。
1日目は「黒豚カツカレー」だった羽生棋聖。この日は「オクラうどん」を注文した。
この日、Abema TVの対局中継で解説を務める北浜健介八段は、「聞いたことが無いメニューですね」と番組内で驚きを隠さなかった。
対局が開かれている指宿市は全国1位の「オクラ」生産量を誇る。地の物を食べて、午後の対局に備えるようだ。
対する渡辺竜王は「天ぷら定食」を注文。王道のメニューで羽生棋聖を迎え撃つ姿勢のようだ。
対局は午後1時30分に再開され、この日の夜までに決着する見込みだ。羽生棋聖の「永世竜王」をかけた7年ぶりの挑戦は、いよいよ終盤へと突入する。
永世称号は、タイトルごとに定められた獲得条件を満たせば資格を得られる。原則として、永世称号は現役引退後に使用される。
羽生棋聖は、将棋界に8つあるタイトルのうち、「竜王」、新設された「叡王」以外の6タイトルで永世称号の資格を保持している。
2017年は、デビュー以来「公式戦29連勝」を記録した藤井聡太四段に注目が集まったが、その快進撃もさることながら、対局の際に注文した食事も話題になった。
読者の中には、「なぜ棋士の食事に注目が集まるのか」と疑問に思う方もいるかもしれない。
だが、「たかが食事」と侮るなかれ。意外かもしれないが、将棋ファンの間では、棋士の食事が観戦ポイントの一つとして定着している。
食事には、棋士の個性が表れることが多い。6月に現役を引退した加藤一二三九段は大食漢で知られ、「昼も夜も、うな重」の伝説で有名だ。棋士の食事を題材にした松本渚さんの漫画『将棋めし』も人気だ。
松本渚さんは、ハフポスト日本版のインタビューに「食事も一緒で、棋士の食事を知ると、その棋士が急に人間味を感じられる」と語っている。
時には、食事の選択が勝負の趨勢を分けることもあるようだ。『将棋めし』の監修を務める広瀬章人八段は、「自分より格上のうな重を注文され、やられたと思った。劣等感から対局も負けてしまった」と、自らの体験を産経WESTの取材に披露している。
たかが食事、されど食事なのである。