ロシア政府によって報道を続けられなくなったテレビ局が、最後の瞬間に反戦を訴えた。さらに、ロシアの歴史で大きな意味を持つ映像を流して、抵抗と悲しみを伝えた。
ロシアの独立系放送局「ドーシチ」(ロシア語で雨の意味)は3月3日、ロシア政府からの圧力により無期限で配信を停止すると発表した
ロシアの通信規制機関はすでにドーシチのサイトへのアクセスを遮断しており、ニューヨークタイムズによると、同局の従業員の中には、安全を懸念して国外避難した人たちもいる。
■ドーシチとは?
ドーシチは2010年に設立された新興テレビ局だった。
2014年ごろからケーブル局や衛生放送局から契約を停止されることが相次ぎ、近年は自社のサイトやYouTubeでの配信が中心になっていた。
■ロシアで「白鳥の湖」の映像が流れることが意味するものは?
ドーシチは3日、YouTubeで最後の番組を放送。同メディア創設者の1人であるナタリア・シンディーバ氏は、放送後にスタッフたちとスタジオを去る時に「戦争に反対」と訴えた。
その後、画面にはチャイコフスキーの「白鳥の湖」のバレエ映像が表示された。
Drexさんのツイート:ロシアの独立テレビ局「ドーシチが、ライブ配信後に去った。最後の言葉は「戦争に反対」。その後、1991年8月のソビエト国営放送と同じように、チャイコフスキーの白鳥の湖の映像を流した
ロシア政治の歴史の中で「白鳥の湖」は大きな意味を持つ。ソビエト連邦時代の1982年にレオニード・ブレジネフ氏が死去した後、国営テレビは「白鳥の湖」のバレエ映像を流した。
他にも、コンスタンティン・チェルネンコ氏やユーリ・アンドロポフ氏などの政治指導者が亡くなった後も、「白鳥の湖」の映像が使われている。
そして1991年に、当時の大統領ミハイル・ゴルバチョフ氏の転覆を狙ったクーデター未遂が起きた時、国営放送はこの白鳥の湖のバレエの映像を流した。この映像を見た市民は、何か良くないことが起きたと察知。さらにこのクーデター未遂は、ソ連崩壊につながった。
Kevin Rothrockさんのツイート:これで最後。ドーシチは去りました。この著名なTV局が最後に選んだ映像は?もちろん選択肢は一つしかない。
ロシア政府はメディアの取り締まりを強化しており、意に沿わない報道をした場合、懲役刑やそれより悪い結果を招く可能性がある。
白鳥の湖の映像に切り替わる前に、画面に「番組は海外のエージェントによる報道だ」というメッセージが表示されたが、これは、2021年8月に、ロシアの法務省がドーシチを海外のエージェントと定めたためだ。
この時、ドーシチの編集長はこの決定を批判し、ドーシチは「ロシアのメディアだ」と反論した。
ハフポストUS版の記事を翻訳しました。