亡命ロシア人の相次ぐ不審な事件 イギリスとロシアの外交問題に発展か

1人は不審死、もう1人は旧ソ連で開発された神経剤で意識不明
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スクリパル氏が意識不明の状態で見つかったショッピングセンターの現場を調べる捜査員。スクリパル氏が娘と座っていたベンチは白と黄色のテントで覆われていた=3月8日、ソールズベリー
Peter Nicholls / Reuters

イギリスに亡命した2人のロシア人をめぐる事件が続いている。1人は不審な死を遂げ、もう1人は軍事用の神経剤によって意識不明の重体になっている。イギリス政府はロシア当局が関与した疑いがあるとの見方を強めており、両国の外交問題に発展しかねない様相を呈してきた。

ロンドンで3月12日夜、男性1人が自宅で死亡しているのが見つかった。警察は身元を明かさなかったが、BBCによると、男性はロシアから亡命してきたニコライ・グルシュコフ氏(68)と判明した。

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捜査を受けるグルシュコ氏の自宅=3月13日、ロンドン
AFP/Getty Images

グルシュコフ氏は1990年代、ロシア最大の自動車メーカー「アフトワズ」や航空会社「アエロフロート」の幹部を歴任。アエロフロートの副社長時代、会社の資金をめぐる巨額横領事件で有罪判決を受けた。2010年、グルシュコフ氏はイギリスに政治亡命した。

グルシュコフ氏はプーチン大統領と敵対関係にあったロシアの富豪ボリス・ベレゾフスキー氏の側近だった。アエロフロートの経営陣にグルシュコフ氏を送り込んだのもベレゾフスキー氏だ。

ベレゾフスキー氏はソ連崩壊前後に企業買収などで巨額の富を手に入れた。ロシアのエリツィン大統領時代には政界にも大きな影響力を持つようになったが、富豪らによる政治への関与を排除しようとしたプーチン大統領と対立するようになり、イギリスに亡命。2013年3月、自宅で自殺した。

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ベレゾフスキー氏
Stefan Wermuth / Reuters

イギリス紙「ガーディアン」によると、グルシュコフ氏の死因は「不明」で、警察のテロ対策部門が捜査を指揮する「異例」の展開となっている。

一方、3月4日にはイギリス南部のソールズベリーで、ロシアの元スパイ、セルゲイ・スクリパル氏(66)と娘がショッピングセンターのベンチで意識不明で倒れているのが見つかった。BBCによると、警察は2人の体から神経剤が見つかったと発表。その後の調べで、神経剤はソ連時代に軍事用に開発された有毒の「ノビチョク」だったことが判明した。

スクリパル氏はヨーロッパで活動するロシア人スパイの情報をイギリスに漏洩したとして2006年、ロシアで有罪判決を受けて服役していたが、2010年にロシアとアメリカによるスパイ交換で釈放。イギリスに亡命していた。スクリパリ氏は現在でもイギリスの情報機関に協力していたという。

ユーロニュースによると、イギリスのメイ首相はスクリパル氏の事件について、「かなりの可能性でロシアに責任がある」と発言。また、警察は2つの事件について関連の有無を調べている。ロシアのラブロフ外相は「ナンセンスだ」と反発した。

イギリスとロシアをめぐっては2006年、プーチン氏に反発するロシア人の元スパイ、アレクサンドル・リトビネンコ氏が何者かによって放射性物質ポロニウムで殺害される事件が起きた。

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ポロニウムによる中毒症状で入院するリトビネンコ氏。その後亡くなった=2006年11月、ロンドン
Getty Images

イギリスの警察は旧ソ連の情報機関の元職員を容疑者としてロシアに身柄の引き渡しを求めたが、ロシア側は拒否。イギリス政府はその後、調査委員会を設置して報告書をまとめ、プーチン大統領が事件に関与した可能性を指摘した。