雪に覆われたロシア人弁護士セルゲイ・マグニツキー氏の墓。2012年12月7日、モスクワの墓地にて。
今は亡きロシア人内部告発者の遺族の代理人を務めていたモスクワの弁護士が、ビルの上から転落し、重傷を負った。3月21日、出廷予定のわずか1日前のことだ。
ニコライ・ゴロコフ弁護士は、内部告発者セルゲイ・マグニツキー氏の家族の代理人を務める。マグニツキー氏もロシアの弁護士で、2009年モスクワの勾留施設で不審な死を遂げた。法執行機関と税務当局を舞台にした2億3000万ドル(当時のレートで約256億円)もの巨額横領事件を告発した後の出来事だった。マグニツキー氏の死は国際社会の怒りを招き、2012年、アメリカがロシア当局者数人に対して制裁を加える法案「マグニツキー法」可決へとつながった。
ゴロコフ弁護士の容体に関する詳しい情報は明らかになっていない。
投資家ビル・ブラーダー氏は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を批判してきた。マグニツキー氏が逮捕された時の雇用主でもあった。ブラーダー氏によると、ゴロコフ弁護士は「アパートの最上階から投げ落とされ、現在モスクワのボトキン病院の集中治療室にいる。頭部に重傷を負ったが命に別条はない」という。
しかし、ロシアのメディアは、ゴロコフ弁護士がアパートの部屋にバスタブをロープで吊り上げようとしているときにロープが切れ、負傷したと報じている。タブロイドニュースサイト「Lifeニュース」はロシア当局に忠誠を誓い、壊れたバスタブの写真を数枚掲載した。
プーチン大統領に批判的なロシアの新聞「ノーヴァヤ・ガゼータ」も、ブラーダー氏が運営する投資会社エルミタージュ・キャピタルの代理人の話として、ゴロコフ弁護士がバスタブを吊り上げている途中に負傷したと報じた。だたしその代理人は、それが話のすべてではないことを示唆し、犯罪を匂わせている。
ゴロコフ弁護士は22日、モスクワの控訴裁判所に出廷する予定だった。マグニツキー氏の母親は、息子が暴露した横領に関する訴状を提出した。下級裁判所がその件に関する審問を拒絶したため、ゴロコフ弁護士は異議申し立てをする予定だった。
ゴロコフ弁護士は、横領疑惑と関連するマンハッタン連邦地裁の訴訟でも証人となるはずだった。この訴訟はマンハッタン連邦検事局のプリート・ブハララ検事が担当していたが、3月初め、ドナルド・トランプ大統領が解雇した。
この数年、ロシア当局を批判してきた著名なジャーナリストや政治家が相次いで不審な状況下で死亡、または負傷している。
2月には、ジャーナリストのウラジーミル・カラムルザ氏が内臓疾患のため入院した。2015年に毒を盛られた時と同じ症状に襲われた。
2015年には、野党の政治家ボリス・ネムツォフ氏がモスクワで射殺された。夫人は夫の死がロシア政府によるものだと非難した。その年の後半にはワシントンD.C.で、ミハイル・レジン元通信マスコミ大臣が、頭部を鈍器で殴られて死亡しているのが見つかった。レジン元大臣の死は、最終的にアルコール摂取による事故として処理された。
新興財閥の富豪で、反プーチンの急先鋒だったボリス・ベレゾフスキー氏は、2013年3月、イギリスの自宅で遺体となって見つかった。
ジャーナリスト保護委員会によると、1992年以来、事件記者アンナ・ポリトコフスカヤ氏を含む56人の報道関係者が、ロシアで殺されている。
アメリカ政府は2012年、マグニツキー氏の死を受けて事件関係者と思われるロシア当局者に制裁を科すための「マグニツキー法」を成立させた。ロシアはアメリカ政府の当局者数人に制裁を課し、アメリカ人によるロシアの子供との養子縁組を禁じることで報復した。2016年12月にアメリカ連邦議会は、ロシアに限らずすべての国の人権侵害者が対象となるよう、マグニツキー法の適用範囲を拡大する法改正案を可決している。
ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。
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