ロシアのプーチン大統領は6日、ウクライナ危機をめぐって同国に制裁を科した国々への対抗措置として、米国と欧州連合(EU)からの農産品の禁輸や輸入制限を発動する大統領令に署名、この中で少なくとも1年間、輸入を禁止する物品の一覧表の作成を命じた。
ロシアの動植物検疫局(VPSS)はすでに米国からの鶏肉の輸入停止を決定。国営ロシア通信(RIA)は、VPSSが米国からのすべての食料、EUの果物と野菜の輸入を禁止することを決定した、と伝えた。
同局のアレクセエンコ報道官はロイターに対し、「対ロシア制裁を発動させた米国に対する(食料の禁輸措置の)決定はかなり大規模なものになる」とし、欧州連合(EU)に対しても同様の対応を取ると述べた。
プーチン氏が大統領令に署名したことを受け、VPSSは、エクアドルやブラジル、チリ、アルゼンチンからの食料輸入を増やす計画について7日に各国大使と協議すると明らかにした。
ロシアの2013年の食料輸入は430億ドル。同国は欧州産果物・野菜の主要な輸入国で、2011年のデータによると、EUの輸出のうち、野菜の21.5%、果物の28%をロシアが占めている。一方、米国産食料については23位の輸入国で、米農産物輸出にロシアが占める割合は1%に満たない。
米国農業連合会のボブ・ストールマン会長は「これは明らかに政治的な動きだ。今後も長期にわたって食料への支出が増えるロシアの消費者が最大の敗者となることは残念だ」と述べた。
また、米国の全国鶏肉協議会と家禽鶏卵輸出協議会は、ロシアの輸入制限措置が業界に大きな影響を与えるとは考えていないとの見方を示した。
欧州委員会の報道官からは今のところコメントを得られていない。
今回の決定についてINGのロシア・独立国家共同体(CIS)担当首席エコノミストのドミートリー・ポレボイ氏は、政治的な観点からは適切な措置のように見えるとしながらも、「ロシアに対し発動された制裁の影響を拡大させるものでしかない」と指摘。
さらに、同氏は「食料価格の上昇という形で欧米の制裁措置のコストが増大し、ロシアの家計に広範な影響が及ぶ」とし、 プーチン大統領の決定は結局は自国民に対する制裁になりかねないとの考えを示した。
ロシア中央銀行は、安価な製品の輸入を禁止すれば、インフレの管理が難しくなる可能性があると警告した。ロシアの7月のインフレ率は7.5%に低下しているが、2013年の6.5%を依然として大きく上回っている。